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各種検査について

血液・尿検査の意義⑥「基本検査K-01 Ⓖミネラル・ビタミンD」

血液検査、腸内環境検査などのツールを用いて詳細な個体差に寄り添い、健康寿命の伸展を図る分子栄養学(※分子栄養学とは①※分子栄養学の歴史①)。その基本ツールとして利用されるのが血液と尿の検査セット(K-01)です(※血液検査の意義①②③④)。69項目の詳細な血液・尿検査項目の内容を、関連する項目ごとに簡単に紹介しています。

今回は血液・尿検査の意義についての第6回、Ⓖミネラル・ビタミンD の関連項目についてです。血清鉄(Fe)トランスフェリンUIBCTIBCフェリチン血清亜鉛(Zn)血清銅(Cu)を測る意味がわかります。

血液・尿検査の意義についての第1回~第5回は(※「 基本検査K-01 Ⓐ血清タンパク質」 ※「Ⓑ酵素」※「Ⓒ糖・脂質代謝、Ⓓ腎機能・電解質」※「Ⓔ血球」※「Ⓕビリルビン」)をご覧ください。

4月は新学期のはじまり。分子栄養学と一緒に、詳細な血液検査で「今の自分を知る」ことから新しい自分づくりを始めませんか。

Ⓖ ミネラル・ビタミンD

微量ミネラル(鉄、亜鉛、銅)と、世界全体での人々の健康(公衆衛生)のために極めて重要な課題であるといわれているビタミンD※4の栄養状態を調べます。

微量ミネラルとは、鉄、亜鉛、銅などのこと

微量ミネラルとは、体内の存在量が微量なミネラルのことで、鉄、亜鉛、銅などがあります。(※ミネラル、微量ミネラルについて詳しくは ※ミネラルって何?をご覧ください。)

鉄に関する項目:血清鉄(Fe)、トランスフェリン、UIBC、TIBC

鉄は、赤血球(※血液・尿検査の意義④「基本検査K-01  Ⓔ 血球」)や筋肉の材料となったり、エネルギーを作る際などの酵素の補因子(※分子栄養学とは⑦-3)や構成因子として活躍する重要なミネラルです。(※貧血:赤血球・ヘモグロビン不足はATP・エネルギー不足を招く分子栄養学の重大問題

血液の中で、鉄はトランスフェリンというトラックの役割をするタンパク質にくっついて安全に運ばれます。血清鉄は鉄イオンの濃度を示し、血清鉄のほとんどはトランスフェリンと結合しています。トランスフェリンは、身体の中に貯蔵してある鉄(フェリチン鉄)を、赤血球のヘモグロビン(※血液・尿検査の意義④「基本検査K-01  Ⓔ 血球」)の材料などとして必要とする骨髄※5※血液・尿検査の意義④「基本検査K-01  Ⓔ 血球」)などに運んでいく重要な働きをします。

健常な人では全トランスフェリンの約1/3に鉄が結合しており、残りの約2/3はUIBC(unsaturated iron binding capacity)と呼ばれます。UIBCは、鉄をまだこのくらい運んでいけますよ、という能力の指標になります。UIBCと 血清鉄を足したものをTIBC(Total iron binding capacity)と呼びます。

トランスフェリンは最も活発に代謝(※分子栄養学とは⑤)しているタンパク質のひとつで、入れ替わるスピードが速く、血清鉄、UIBCはタンパク質栄養欠損、炎症(※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」)で低下します。鉄が欠乏すると、身体からもっと鉄を運ぶようにという指令が出て、鉄を運ぶためのトランスフェリンの合成量が増えますが、結合できる鉄の量自体は減っているため、血清鉄は低下、UIBCは上昇します。

鉄に関する項目:フェリチン

フェリチンは、ヒトの身体のすべての細胞に存在するタンパク質です。特に肝臓や脾臓、骨髄※1に多く存在し、1個のフェリチンの中に最大で約4500個の鉄を貯蔵することができます。血液検査項目におけるフェリチンは、体内に貯蔵されている鉄の量を反映しています。

分子栄養学では、健康自主管理(※自分自身の身体を知ろう:Know Your Bodyがなぜ大切か※分子栄養学の歴史②)の指標のひとつとして、赤血球数とヘモグロビンが減る前の、フェリチンの低下による潜在性鉄欠乏状態を重要視しています(※血液・尿検査の意義④)。フェリチンは、炎症・脂肪肝(※年末年始に向けた正しい身体づくり「脂肪肝対策①」)で上昇しやすく、鉄欠乏で低下します。

血清亜鉛(Zn)

亜鉛はストレス、服薬で尿中に失われやすいミネラルです。亜鉛の欠乏があると、鉄があっても丈夫な赤血球が作れない亜鉛欠乏性貧血、味覚異常、食欲低下、皮膚の症状、免疫能の低下(※分子栄養学における免疫と栄養素の基本対策②)など、さまざまな症状につながる可能性があります。

亜鉛は他にも血糖値コントロールに関するホルモンであるインスリンの構成要素であり、さらにインスリンの合成・分泌に必要であるなど、糖代謝(※血液・尿検査の意義③「 基本検査K-01 Ⓒ糖・脂質代謝、Ⓓ腎機能・電解質」)にとってもとても大切なミネラルです。血液検査では、血清※2亜鉛イオンの濃度を示します。

血清銅(Cu)

銅は赤血球を作る際にも重要なミネラルで、その約95%がセルロプラスミンというタンパク質に結合しています。タンパク質栄養欠損などで低下、炎症性疾患などで上昇しやすい項目です。亜鉛/銅 比は亜鉛不足やストレスなどで低下しやすい値です。

ビタミンD に関する項目:25-OHビタミンD (Total)

ビタミンD3は、腸管からのカルシウム吸収を促進し、尿からカルシウムが出ていってしまうのを防ぎます。また、正常な破骨細胞の増殖と分化を調節し、骨形成にも関わります。その他に、大腸がん、乳がん、前立腺がんの予防、免疫維持、生活習慣病の予防などの観点からも注目され、必ず血中濃度を計測しながら、積極的な補給が望まれるビタミンです。膀胱粘膜の抗菌ペプチドを誘導することも示されているビタミンです※3(※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策②(膀胱編))。

適切なビタミンDの補給は世界全体での人々の健康(公衆衛生)のために極めて重要な課題であるといわれています※4。ビタミンDは骨粗鬆症、筋肉の維持※5、感染症※6、糖尿病※5、※7、がん※4、※5、心血管疾患 (CVD)※4、※5、自己免疫疾患※5(多発性硬化症※8 、関節リウマチなど)、呼吸器疾患※4、認知症※5 、※9、うつ病※10、※11などのさまざまな疾患、免疫※12、あらゆる死亡リスク低下※4に対して保護的に働くことが示唆され、世界中で研究されている大切な脂溶性ビタミンです。ビタミンDは花粉症についても研究されています。その詳細は※花粉症と栄養素①※花粉症と栄養素②※春の花粉症に備えた分子栄養学ビタミンD対策 をご覧ください。

<ミネラル・ビタミンDに関する検査項目>

Fe(血清鉄)、UIBC(不飽和鉄結合能)、フェリチン、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Zn/Cu(亜鉛/銅)、25-OHビタミンD (Total)(25-ヒドロキシビタミンD (総量))

※1 骨髄とは
骨髄は、骨の内側、中心部にある柔らかい部分のことで、血液細胞(赤血球、白血球、血小板)を新しく作って血液中に送り出す、という働きをしています。これを造血機能といいます。

※2 血清とは
血液から有形成分(赤血球・白血球・血小板など)を除いた液体成分を血漿と呼び、血漿から血液凝固因子(血液を固める成分)を除いたものを血清といいます。(※血液・尿検査の意義①)

※3 Hertting O.,et al. Vitamin D induction of the human antimicrobial peptide cathelicidin in the urinary bladder. PLoS One, 5:e15580.(2010)

※4 Chowdhury, R.,et al. Vitamin D and risk of cause specific death: systematic review and meta-analysis of observational cohort and randomised intervention studies. British Medical Journal, 348: g1903.(2014)

※5 Pludowski, P.,et al. Vitamin D effects on musculoskeletal health, immunity, autoimmunity, cardiovascular disease, cancer, fertility, pregnancy, dementia and mortality—A review of recent evidence. Autoimmunity Reviews, 12(10): 976-989.(2013)

※6 Xu, Y.,et al., The importance of vitamin d metabolism as a potential prophylactic, immunoregulatory and neuroprotective treatment for COVID-19. Journal of Translational Medicine,18(1):322.(2020)

※7 Pittas, AG.,et al. Vitamin D and Risk for Type 2 Diabetes in People With Prediabetes: A Systematic Review and Meta-analysis of Individual Participant Data From 3 Randomized Clinical Trials. Annals of Internal Medicine, 176(3):355-363.(2023)

※8 Sintzel, MB.,et al. Vitamin D and Multiple Sclerosis: A Comprehensive Review. Neurology and Therapy, 7(1): 59-85.(2018)

※9 Balion, C.,et al. Vitamin D, cognition, and dementia : A systematic review and meta-analysis. Neurology, 79(13):1397-405.(2012)

※10 Anglin, RES .,et al. Vitamin D deficiency and depression in adults: systematic review and meta-analysis. British Journal of Psychiatry, 202:100-107.(2013)

※11 Milaneschi, Y.,et al. The association between low vitamin D and depressive disorders. Molecular Psychiatry, 19:444-451.(2014)

※12 Martens, PJ.,et al. Vitamin D’s Effect on Immune Function. Nutrients, 12(5):1248.(2020)

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