The Orthomolecular Times

【新着記事】2024.5.7 分子栄養学の基礎用語「血糖値」、「糖質」、「GI値」、「GL値」って何ですか?

身体の仕組み

多くの日本人を悩ます花粉症と栄養素①

春といえば、桜、お花見、春一番など、厳しい冬を乗り越えて、春の日差しが暖かな季節です。お子さんや学校関係では卒園式・卒業式、入園式・入学式など、また会社では入社式なども多く行われ、春は旅立ちと新しい出逢いの季節でもあります。

しかしその喜ばしい春の一方で、日本では多くの人が花粉症に悩まされ、毎日のニュースの中で花粉情報が流れています。花粉症は、花粉が原因となって起こる季節性のアレルギー反応です。花粉症は、私たちの免疫(※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」)が関係しています。

1年中さまざまな種類の花粉が飛んでいますが、春はスギとヒノキが多く飛び、多くの人にとって辛い時期となっています。くしゃみを気にしないで友だちと外でいっぱい遊びたいし、仕事のパフォーマンスを落としたくない!今回は、花粉症と栄養素についてのお話です。

花粉症は免疫が過剰に反応するアレルギー疾患です

花粉症は、花粉に対して起こるアレルギー疾患のことです。アレルギーとは、本来なら有害なものから自分を守ってくれるはずの免疫(※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」)が、無害なもの(花粉、食べ物など)に対して過剰な免疫反応が起こり、それによって組織が障害される、つまり自分の身体まで傷つけてしまう反応のことをいいます。日本の国土の12%がスギ林であるため、日本では春のスギ花粉に悩む人が圧倒的に多く、その他にもヒノキ、ハンノキ、秋のブタクサなど、日本では50種類以上の花粉症が報告されています。アレルギーのもとになる抗原※1※免疫を司る白血球「白血球の仲間たちの基礎」)をアレルゲンと呼びます。花粉症に関わる免疫には免疫グロブリン E (IgE) 抗体(※免疫を司る白血球「白血球の仲間たちの基礎」)が関わり、花粉症はIgEを介した反応によって引き起こされる気道(鼻やのど)の粘膜の炎症性疾患(※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」)として知られています。

花粉症のメカニズム

花粉症のごくごく簡単なメカニズムは以下のように考えられています。花粉が鼻や目の粘膜の中に入ると、まず外から侵入する敵や異物を排除するために粘膜で働いている自然免疫、マクロファージや樹状細胞がその抗原を貪食します(※免疫を司る白血球「白血球の仲間たちの基礎」)。そして「こんな敵が来ましたよ~!」とT細胞に対して抗原提示をします。その際、本来、花粉は私たちの身体には害を与えませんが、T細胞が花粉を身体にとって有害な物質(抗原:アレルゲン)だと認識して、その後T細胞が活性化し、B細胞を活性化します。そしてB細胞は形質細胞に代わり、花粉にぴったりと合ったIgE抗体を作ります。そのIgE抗体が粘膜などに存在するマスト細胞(肥満細胞)という細胞にくっつき、マスト細胞にくっついたIgE抗体に同じアレルゲンがくっついた構造が出来上がると、マスト細胞は活性化して、ヒスタミンなどの炎症(※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」)を誘発する物質を放ちます。このヒスタミンなどが鼻や目の粘膜にある知覚神経や血管に作用して、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ、充血などの症状を引き起こします。鼻や目の粘膜から有害物質が侵入しようとしたところに、鼻水、くしゃみ、涙を出して、有害物質を外に出そうとします。

花粉症の症状

花粉症では、鼻の場合は水のような鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの症状(季節性アレルギー性鼻炎)が現れます。そしてそれとともに目の症状として涙目、充血、かゆみなどの症状(季節性アレルギー性結膜炎)が現れることが多くあります。その他にも、咳、痛み、肌荒れ、熱っぽい、頭重、だるいなど全身症状が出ることもあります。

分子栄養学における免疫と炎症に対する栄養素によるアプローチの目的

分子栄養学における免疫と炎症における栄養素によるアプローチの目的は、

  1. 免疫を助けバリア機能を維持させる
  2. 過剰な炎症を防ぐ
  3. 傷んだ組織を修復するための材料を供給する

の3つです。

花粉症とビタミンDと免疫バランスの調整

近年、アレルギー性鼻炎の症状について、ビタミン D が有益であるとの報告があがってきています。ビタミンDは、過剰に反応している免疫細胞(※免疫を司る白血球「白血球の仲間たちの基礎」)を落ち着かせ、免疫のバランスを調整する※2※3ことで花粉症の症状が緩和するのではないかと、そのメカニズム解明が進められています。免疫は、本来、無害なものと有害なものを見分け、私たちを守ってくれるシステムです。そこで、そのバランスを調整することができれば、過剰な反応にはならないのではないか、という考え方です。ビタミンDは、自然免疫と獲得免疫のどちらにも影響を与え、本質的に、免疫の状態をより寛容な方へと調整させていくと考えられています。

アレルギー疾患を考える際には、このような免疫のバランスのほか、皮膚や粘膜による生体防御の第一のバリア(※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」)が壊れてしまうこと(破綻)がアレルギー疾患に関わるのではないかとする説があります。これについて次回(※多くの日本人を悩ます花粉症と栄養素②)詳しく見ていきます。

※1
抗原とは、T細胞とB細胞をエフェクターT細胞、エフェクターB細胞に活性化させる因子のことです。(※免疫を司る白血球「白血球の仲間たちの基礎」)

※2
Hewison M. Vitamin D and the immune system: new perspectives on an old theme. Endocrinology and Metabolism Clinics of North America, 39(2):365-379.(2010) 

※3
Liu P.T. Toll-like receptor triggering of a vitamin D-mediated human antimicrobial response. Science,311(5768):1770-1773.(2006)

RELATED

PAGE TOP