The Orthomolecular Times

【新着記事】2024.5.7 分子栄養学の基礎用語「血糖値」、「糖質」、「GI値」、「GL値」って何ですか?

分子栄養学とは

分子栄養学の歴史①「分子栄養学生誕55年:新しい医療のパラダイム、分子栄養学」

「分子整合栄養学」が生まれて55年

「身体の中で本来、問題なく働いているはずの分子(栄養素)がバランスを崩すことによって起きる状態が病気であり、栄養素をしっかり補給することによって分子が正常バランスに戻れば、あるいは分子のバランスが保たれていれば、病態はおのずと回復するのではないか。」「そのとき、その人に最適と言えるレベルまで分子濃度を上げていけば、最大限の生体機能がおのずと発揮され、身体が自発的に機能を高めた結果として自然治癒力が発揮されるのではないか」それが、分子栄養学生みの親ライナス・ポーリング博士の考えです。

分子栄養学(※分子栄養学とは①)は、20世紀後半に北米で活躍した2名の科学者、ライナス・ポーリング博士(1901-1994 年)とエイブラム・ホッファー博士(1917- 2009 年)により確立されました。

ポーリング博士、ホッファー博士は、どのようにしてこの新しい概念、新しい医療のパラダイムにたどり着いたのでしょうか。ポーリング博士が、どのようにしてそれまでにない革新的な考え方に基づいて人間の健康や医療を捉え直そうと「orthomolecular(分子整合)」という言葉を提案したのでしょう。

※パラダイムとは、科学の領域でよく使われる言葉で、ものごとの規範となる考え方、方法論、あるいは枠組というような意味です。

2023年、「分子整合栄養学」という言葉が生まれて55年目の春。KYBグループでは、ポーリング博士に直に師事して学び、分子栄養学を日本に導入した創立者により、ポーリング博士の提唱した分子栄養学理論を正確に理解し、その理論に則った真の病態改善を目指しています。このウェブマガジンでは、分子栄養学とは何かについて簡単にまとめた※分子栄養学とは① 「一般の栄養学と分子栄養学の違い」とともに、55年目という節目、そして4月という新しい一年のスタートに際し、分子栄養学の概念を改めてしっかりと捉え直します。また今後、順を追って分子栄養学の歴史について5回シリーズで少し紐解いてみようと思います。ぜひ、ご一読ください。(※分子栄養学の歴史②分子栄養学の歴史③分子栄養学の歴史④分子栄養学の歴史⑤)

分子栄養学「概論」

分子整合栄養学(Orthomolecular Nutrition. このウェブマガジンの中では、分子栄養学という言葉を用いています)とは、分子生物学に基づく新しい栄養学で、身体を構成する分子レベルで(※分子栄養学とは②※分子栄養学とは③)私たちの健康を考える学問です。

分子栄養学では、栄養素の欠乏症の予防・改善という一般の栄養学の枠を超え、目的に応じて栄養素の摂取量を増やすことで、より多くの作用を期待します。「病気にならない量」ではなく、私たちの身体の中に正常にあるべき分子(molecule)を至適濃度に保つ(ortho)十分量の栄養素(nutrition)を摂取し、一つひとつの細胞が必要とする栄養素(分子)の最適な量、最適なバランスを整えることによって、その細胞が正常に機能できるようになることを考えた理論です。そしてその結果、細胞の集合体である個体(一人の人)の生体機能が向上し、病態改善が得られることを目指す新しい概念、新しい医学のパラダイムです。

分子栄養学では、疾病の成り立ちとして、細胞を構成する分子の異常によって病気が発症するのではないかと考え、細胞レベル、分子レベルの栄養素の関わる代謝経路を大切に1つひとつの細胞の機能を上げることで、一人ひとりの人生を全うする健康を目指しています。病気の原因究明・予防から病態改善まで、すべて「分子」(※分子栄養学とは②※分子栄養学とは③)を基本として考えます。

私たちの身体は細胞でできている

私たちを小さくしていくと、“生きていると認められるいちばん小さな単位” が細胞になります。そしてその細胞1つひとつが食事から得られる栄養素(分子)でできています。それら一つひとつの細胞の成分は、その細胞の種類にもよりますが、常に壊されて新しく作り替えられる、ということを繰り返しています。

私たちの身体は約200種類、数十兆個の細胞によって構成される、いわば細胞の集合体です。これらの細胞が集まって組織(上皮組織、筋組織など)を形成し、組織が集まって胃や腸や脳といった臓器(器官)となり、そしてそれらが統合されたものとして「個体」である私たちは生命活動を行っています。したがって、私たちが健康的に生きるためには、身体を構成するすべての器官、器官を構成する組織が正常に機能する必要があり、組織が正常に機能するためには組織を形成する細胞の1つひとつが正常に機能する必要があります。

細胞は栄養素でできている

細胞が正常に機能するために必要なのが栄養素(分子)です。細胞自体もタンパク質や脂質などの分子でできており、細胞を構成する分子が適切な量、適切なバランスで体内に存在してはじめて細胞は正常に機能することができます。細胞を構成する成分は、一見ほぼ変化がないように見えますが、実は多くの分子が合成と分解を繰り返して絶えず入れ替わるということをしています。そのスピードは組織や器官によって異なりますが、これを代謝回転(metabolic turnover)といいます。栄養素とは、栄養(生命活動の営み)のために身体の外からとり入れる物質のことです。私たちが生き続けるためには、必ず必要な栄養素(分子)を外から充分量摂る必要があります。そして生命を維持するために外の世界からとり込んだ栄養素を、そのまま使えるものはそのままの形で、そのままで使えない栄養素はまず分解して、新しい分子を合成したり、生体内で利用できる形に変換します。また、要らない分子を分解して身体の外に排出するということも行っています。この生体内で起きている化学反応をまとめて代謝といいます。代謝は、大きな違いのある2つの反応、「異化」と「同化」に分けられます。生きるということそれ自体が、その生物を構成する分子が壊され(異化)、新しく作り変えられている(同化)という現象でできています(※分子栄養学とは⑤※分子栄養学とは⑦-1)。したがって、私たちは食事を通じて細胞に必要な栄養素(分子)を得て、細胞や組織の機能を維持し、生命活動を行っていると言えます。分子栄養学では、そのいのちの基礎単位である細胞を構成する最適な量(至適量)の栄養素(分子)の濃度とバランスを保つことで、その細胞自体の機能が自然と求められる最高の状態で行われていくのではないかと考えています。

栄養素の不足は細胞を構成する分子の異常につながるのではないか

細胞は栄養素(分子)で構成されています。分子栄養学では、細胞の機能低下の原因のひとつとして、細胞の構成要素、また代謝を進めるための栄養素の不足や栄養素同士のバランスの乱れなどによって、細胞を構成する分子に異常が起こることが挙げられるのではないかと考えています。そして、それらの原因により細胞機能が低下した状態が長く続くことで、将来的に疾患の発症に発展していく可能性をひとつの医療の理論として提唱しています。

分子栄養学では、現代医療と手を結ぶことによってさまざまな疾患や不定愁訴が改善するという考えを原点とし、できるだけ早期に生体内の分子の異常を発見し、栄養素(分子)によるアプローチが得意な分野において(※分子栄養学とは⑧)、適切な栄養補給によって分子の異常を正すことが大切であると考えています。また、分子の異常は病気にかかった瞬間に突然起こるのではなく、病気になるずっと前の未病(病気とはいえないがどことなく身体の調子が優れない状態)の段階から始まっているのではないかと考えています。分子栄養学では、老化の原因のひとつとして、異化>同化、異化が同化を上回ってしまうことを考えます。そこで、異化=同化を保つことがアンチエイジングや身体の萎縮・機能低下を防ぐひとつの基盤となるのでは、と考えます。

至適量(optimum dose)の栄養素と自然治癒力

ヒトの身体にはもともと自然に治ろうとする力、自然治癒力が備わっています。このことは、人のもつ能力のひとつとして捉えられています(※分子栄養学とは⑧)。「至適(optimum)」というのは、最適条件というような意味です。“個々人に最もふさわしいレベル”と考えていただければわかりやすいでしょう。一人ひとり、栄養摂取の至適量は異なります。また、一生不変のものではなく、年齢、環境、ストレス状況などに応じて至適量はどんどん変わっていきます(※分子栄養学とは⑥)。そこで、「そのとき、その人に最適と言えるレベルまで分子濃度を上げていけば、最大限の生体機能がおのずと発揮され、身体が自発的に機能を高めた結果として自然治癒力が発揮されるのではないか」というのがポーリング博士の考えでした。また、現在では、単に摂取する量だけではなく、吸収できた量によって至適量が維持されると考えられることから、栄養素の消化・吸収をつかさどる胃腸の状態を最も重要視しています。創始者のひとりであるホッファー博士は、この「orthomolecular(分子整合)」という言葉はまさに的確であると述べています。自然治癒という形で病態改善が得られるとしたら、まさに革命的な方法論ということになりませんか?

至適量の栄養素で人生100年時代のQOLの向上を目指す

ポーリング博士の提唱した分子栄養学は、細胞が正常に働くための至適量の栄養素を通して、私たちの身体がもつ本来の力を最大限に引き出し、オプティマムヘルス、つまり単に病気でないだけでなく、心身ともに最高・最善の健康状態の実現を目指します。より多くの方が、これからの人生100年時代をより健康に、より豊かに送り、一人ひとりのQOL(生活の質、クオリティオブライフ)の向上につなげることで、社会の持続的な発展へ貢献していくことを目指します。

オプティマムヘルスを目指して

人は一人ひとりライフスタイルも含めた個性、そして個体差があります(※分子栄養学とは⑥)。自分の歴史を重ねた「今」の健康状態は人それぞれです。しかし、人にはいつでも、そのときに達成可能な健康レベルがあります。栄養素のもつ作用を分子レベルで理解し、自分が主体となり、医師と一緒に睡眠や運動、ストレスケアを含んだ規則正しい生活、食事やサプリメントを管理する。オプティマムヘルスの確立のために、ぜひ自分が口にする食べものを賢く選択し、そして達成可能なオプティマムヘルスのレベルの目標を設定し、そこに向かって前進していきましょう。分子栄養学では、「健康」こそが、人生にとって最高の価値であると考えています。健康こそが、その人を輝かせる最高の手段であり財産であるからです。分子栄養学は、皆さん一人ひとりの健康自主管理を応援する学問です。(※自分自身の身体を知ろう:Know Your Bodyがなぜ大切か

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