The Orthomolecular Times

【新着記事】2024.5.7 分子栄養学の基礎用語「血糖値」、「糖質」、「GI値」、「GL値」って何ですか?

分子栄養学とは

分子栄養学とは⑦-3「酵素×ビタミン・ミネラル」

酵素とビタミン・ミネラル

分子栄養学とは⑦では、3回シリーズ(※分子栄養学とは⑦-1 分子栄養学とは⑦-2)で酵素と代謝について考えています。

今回はその3回目です。酵素がしっかりと働くためには、温度やpHなど重要な条件があります。(※分子栄養学とは⑦-2)今回は酵素とビタミン・ミネラルの重要な関係についてです。

酵素がしっかりと働けるためのもうひとつ重要な条件が、補因子(cofactor)の存在です。

多くの酵素が働くのに、ビタミン・ミネラルといった補因子が必要です。補因子のうち、低分子有機化合物(※分子栄養学とは② 分子栄養学とは④)であるものを補酵素と呼びます。補酵素の多くはビタミン由来のものです。

このことからいえることは、補因子であるビタミン・ミネラルがなければ働けない酵素がたくさんあるということです。

分子栄養学ではこの事実に深く着目しています。ある代謝経路に関わる補因子としてのビタミン・ミネラルが足りないことで、酵素が十分に働けず、その代謝経路(※分子栄養学とは⑤)が滞り、結果として体調不良が起こっているのではないか、と考えていきます。

令和の江戸患い!?

この概念が最もわかりやすい例のひとつが、脚気です。脚気は、「江戸患い」など昔の病気であると考えられていましたが、手軽に美味しく食べやすい食品がたくさん手に入るようになり、現代でも起こり得る病気になっています。

ケーキ、パフェ、かき氷、和菓子など、毎日甘いものの話題が取り上げられ、世間には美味しいスイーツやインスタント食品があふれています。精製された白い小麦粉や砂糖で作られたパンやケーキ、白米だけで作られたおにぎりやおせんべい。砂糖や果糖ブドウ糖液糖がたっぷり入ったジュースやゼリーなど、こういった食品は、安くて美味しくて、手軽にすぐエネルギーを補給でき、お腹が満たされるため重宝されます。しかし、これらの食品ばかりを食べていると、エネルギー源である糖質(※5大栄養素(概論)) はたくさん摂れますが、肝心のエネルギー代謝のためのビタミン・ミネラルが足りません。脚気を考える場合、ビタミンB1が足りておらず、糖質をエネルギーに変換できません。その結果、症状として全身のだるさ、手足のしびれ、心不全によるむくみなどが起こり、ひどいときにはお亡くなりになってしまいます。

脚気の場合、ビタミンB1がどこで働いているかというと、糖質のいちばん小さな単位(ブドウ糖)をエネルギーに換えていく代謝経路(解糖系)の補酵素として働いています。エネルギー源である糖質を食べても、ビタミン13種類のうちのほんの1種類、ビタミンB1が足りないだけで、こんなに恐ろしい病気にもなり得ます。

分子栄養学と一般の栄養学の違い

一般の栄養学(※分子栄養学とは①)では、ビタミンB1は脚気にならない量が摂れていれば正常、というように考えます。しかし、分子栄養学では、脚気という欠乏症にならないビタミンB1の摂取量だけでなく、ビタミンB群全体としての働き、細胞が能力を十二分に発揮できる栄養素の最適な量(至適量)を考えます。さらに、それらが関わる全身の詳しい代謝経路までを考慮していきます。

もし、最近、ちょっと疲れやすいな・・・という時には、まずご自分の食生活を思い返し、自分の代謝を十分に行うくらいの栄養素が足りているかどうか、思い返してみてください。ビタミンB1はエネルギー代謝の解糖系やクエン酸回路などの補酵素として重要ですが、その他にも、マグネシウム、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、鉄などの栄養素が「解糖系」「クエン酸回路」「電子伝達系」といった一連のエネルギー代謝経路で必須の役割をしています。また、ビタミンB群はオーケストラのようにそれぞれが相互に関わって働いていくため、分子栄養学では、ビタミンB1単独の摂取ではなく、ビタミンB群をすべて一緒に複合体として摂ることをお勧めしています。そしてそれを、当てずっぽうで栄養素の量を補給していくのではなく、個体差(※分子栄養学とは⑥)を考慮し、血液検査(※血液検査の意義① 血液検査の意義②)などを通しながら、医師と一緒にその方に合った至適量を探していきます。

酵素は、代謝を助けてくれるタンパク質です。タンパク質が極度に足りないと、その酵素自体を作れない、ということも起こり得ます。分子栄養学で推奨する血液検査(※血液検査の意義①)では、タンパク質が足りているか、代謝に必要な酵素は働けているか、ということも推測していきます。

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