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小松川クリニック 櫻本 美輪子先生 「自分がダメな人間なのではなく、栄養状態という可変部分が問題なんだ」

今回は、 心療内科医の櫻本美輪子先生に、 心身症への分子栄養学的アプローチの重要性について伺います。

症状の裏に潜む根本的な原因にアプローチできることが分子整合栄養学の魅力

金子
櫻本先生は、どのようなきっかけで分子栄養学にご興味をおもちになられましたか?
櫻本
約15年ほど前、同じ心療内科医として親交のある姫野友美先生からお話を伺ったのがきっかけです。当時は、2007年の小松川クリニック開業からちょうど10年ほど経ち、「薬で治す」ということに疑問と限界を感じていた頃でした。薬物療法以外にもっと良い治療法がないものかと悩んでいたところ、姫野先生から分子栄養学を勧められて、金子雅俊先生のセミナーを受講したのが始まりです。
金子
櫻本先生が栄養療法の世界に踏み出すきっかけの一つに父がなれたようで嬉しいです。初めてセミナーを聞いてどう思われましたか?
櫻本
「なんなんだろう、この新しい世界は!」と感動したというか、ショックを受けましたね。それまでは栄養療法に対して民間療法という印象が強く、サプリメントを使うことに抵抗感があったのですが、金子先生のお話を聴いて科学的根拠に基づく正しい治療法だということが分かったので、「まずヘム鉄だけでも良いからクリニックに取り入れてみたい。というか私が飲んでみたい!」と思いました。
金子
小松川クリニックは、外科出身で現在は内科担当の薫院長とご夫婦で運営されていますよね。栄養療法を導入するにあたり、薫先生の反応はいかがでしたか?
櫻本
夫は最初、治療にサプリメントを使うことに対してあまり肯定的ではありませんでしたが、私があまりに熱弁するので、最終的には「赤字にならない程度にね」と許可してくれました。そうして私が診ている心療内科の患者さまの一部に栄養療法を導入してみたところ、本当に良くなっていくんですよね。夫にもセミナーの受講を勧めたところ、生化学に精通している夫が私以上に分子栄養学にハマって帰ってきたという…。
金子
櫻本先生が思う栄養療法のメリットは何ですか?
櫻本
薬による対症療法だけでなく、栄養による根本治療の選択肢が増えることですね。分子栄養学を知る前は、特に子供にはなるべく薬を飲ませたくないなと悩みつつ、薬で症状を軽減するくらいしかできなかったので、栄養療法で症状の裏に潜む根本的な原因にアプローチできるようになって良かったと感じています。
金子
自分がダメな人間なのではなく、栄養状態という可変部分が問題なんだとわかると心身症患者さまも安心されると思うので、櫻本先生に出会えて患者さまも幸せだと思います。

症状や年齢がさまざまな心身症患者さまに本人の自主性を大切とした栄養療法を展開

金子
櫻本先生が診ていらっしゃる心身症患者さまは、どのような症状でお悩みの方が多いですか?
櫻本
子供ではチック発達障害過敏性腸症候群、不登校等でしょうか。不登校の場合、いじめのようなはっきりとした原因はないけれど、なぜか朝起きられなかったり、お腹が痛くなったりする子もいて、多くの場合は起立性調節障害に当てはまります。大人では、うつパニック障害適応障害のご相談も多いですね。
金子
患者さまの年齢や症状が幅広いですね。具体的にはどのような栄養アプローチをされていますか?
櫻本
当院のポリシーとして、薬による対症療法よりも栄養による根本治療を勧めていることを説明して、血液検査で栄養状態を必ず調べます。全体を通じて、鉄欠乏性貧血やタンパク不足(BUN低値)、ビタミンB群不足(GOT/GPT低値)の方がとても多いので、必要な薬は残しつつ、まずは食生活を見直して栄養状態を整えていくことが大切だとお伝えしています。
金子
全体的に栄養が足りない印象ですが、患者さまに共通する食習慣等のパターンはありますか?
櫻本
食が細く、朝食抜きの方が多いですね。低血圧でそもそも朝起きられない方が大半なので、塩分を補いつつ朝食を摂る習慣をつける目的で具無しの味噌汁をお勧めしています。味噌汁が飲めるようになると、おかずも少しずつ食べられるようになってきて、食生活が徐々に改善されていくことが多いんですよ。
金子
味噌汁は発酵食品で身体に良いですし、味噌汁が嫌いな方ってほとんどいないので、栄養療法のスタートにすごく良いですね。欠食以外の傾向はいかがですか?
櫻本
甘いものが好きな方が多いですね。血糖値を調べると低血糖の方が多く、患者さま自身も「そういえば夕方になると手が震えてきて、甘いものを食べると止まります」と思い当たる節が多いんです。砂糖入りのお菓子やジュースは血糖値の乱高下の原因となるので、飲み物は水か無糖のお茶に、間食は蒸かし芋等の自然なものに変えるよう指導しています。
金子
大人になってから食事の嗜好を変えるのは大変なので、小さいうちに味覚を育てることが大切ですね。
櫻本
本当にそう思います。栄養療法は本人の自主性が大切なので、美味しく楽しく食べるのが基本です。作業のように無理して食べる食事は逆にストレスになってしまいますから、食事の改善が難しい場合は無理のない範囲で適宜サプリメントも利用していただいています。
金子
どの薬を残すかも含めて最適なアプローチは一人ひとり異なるので、私たち医師に遠慮なくご相談いただきたいですね。

医療関係者の間で、栄養の重要性がもっと広まってほしい

金子
最後に、今後の展望についてお聞かせください。
櫻本
「栄養状態が整うと、病態が部分的にでも改善していく」という認識が医療関係者の間でもっと広まると良いなと思います。患者さまから「こんなに食事のことを聞かれたのは初めてです」と度々言われますし、他院の患者さまから相談されることもあるので…。
金子
わかります。他院で処方された薬を勝手に止めることはできないですし、医師によって指導が違うと患者さまも戸惑ってしまいますよね。
櫻本
そうですね。標準治療だけをされている医師の間でも、栄養に関する正しい知識が広まってほしいです。
金子
櫻本先生のように、分子栄養学を正しく理解してくださる医師の輪をもっと広めていくために、KYBグループとしても引き続き努力していきたいと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました!

櫻本 美輪子

さくらもと みわこ/医療法人社団水青会小松川クリニック副院長。日本内科学会認定内科医。日本心身医学会心身医療「内科」専門医。千葉大学医学部卒業。東京都立駒込病院にて内科研修後、東京大学医学部附属病院分院心療内科に入局。平成9年から、医療法人社団水青会小松川クリニックにて、内科・心療内科を担当

金子 俊之

かねこ としゆき/金沢医科大学医学部を卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院のリウマチ膠原病内科に在籍。その後、大学院に進み博士号を取得。内科領域の診療に加え、専門性を活かし関節リウマチ・膠原病の診療を行う。現在、KYB グループの代表取締役医師として、分子整合栄養医学を用いたヘルスケア、医療、研究、教育の4 つの領域を中心に事業展開を行っている。

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