The Orthomolecular Times

2024.12.16 分子栄養学と免疫の栄養素「自然免疫:好中球の働きとビタミンC」

分子栄養学とは

分子栄養学は個体差栄養学:成功のカギは自分の “個体差” へのアプローチ

新年明けましておめでとうございます。

本年が皆さまにとって、よりかけがえのない、健康で豊かな一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。今年も分子栄養学タイムズをどうぞよろしくお願いいたします。

新型コロナ感染症をきっかけにますます注目されるようになった栄養素と疾患との関係性

パンデミック(感染症の世界的大流行)となった新型コロナ感染症。ひと昔前、感染症はいったん終焉を迎えたといわれた時代もありましたが、飛行機などの交通手段の発達につれ、世界のどこかで起こった新しい感染症は、瞬く間に世界中を駆け巡るような、そのような時代になってきています。

その新型コロナ感染症を追ったさまざまな研究にて、適切な栄養素が適切な免疫を維持するために必須であることが数々の論文で指摘されています※1。栄養素の欠乏が新型コロナウイルス感染とその重症化の原因となり、その後の回復具合にも関わる可能性が示されたことで、適切な栄養管理が感染症や後遺症を防ぐ手段となりうるのではないかという報告の数々です※2、※3

それらの中ではタンパク質欠乏、貧血(※貧血:赤血球・ヘモグロビン不足はATP・エネルギー不足を招く分子栄養学の重大問題)、ビタミンD欠乏などの栄養状態のほか、高齢、糖尿病、心血管障害などの疾病をおもちの方は、さらに注意が必要であることも指摘されています※1、※2、※4

分子栄養学が考える適切な栄養管理の基本は、個体差に沿った異化=同化を目指すこと

では、その適切な栄養管理はどのように行えばよいでしょう。

分子栄養学による健康自主管理は、その答えのひとつとなると考えています。なぜなら、分子栄養学は、より良い生活習慣とともに、個体差に沿った至適量の栄養素の補給(摂取・消化・吸収・代謝)により、異化=同化を促し、健康を目指す学問だからです。(※分子栄養学の歴史①※自分自身の身体を知ろう:Know Your Bodyがなぜ大切か

赤ちゃんもご高齢の方も、すべての人の身体の細胞は常に新しく作り替えられている

分子栄養学の考え方を優しく言い換えるとこうなります。ヒトを構成する何十兆個もの細胞内のあらゆるところで営まれる代謝。生きるということそれ自体が、その生物を構成する分子が壊され(異化)、新しく作り替えられる(同化)、代謝という化学反応でできています。(※分子栄養学とは⑤

赤ちゃんでもご高齢の方でも、地球上に存在する生物はすべて、いつも自分の中の環境を生きるのに最適な状態に保とうします。そして私たちの身体、脳を含めた器官や細胞の中身は、生きているうちは常に新しいものに作り替え、同じかたちを保とうとします。

良い材料(栄養素)の供給で、細胞の中身をどんどん良いものに作り替える

その新しいものに作り替えるという時に、良い栄養素を材料として十分に供給していけば、作り替えられる新しい細胞の中身もどんどん良いものになっていくでしょう、というのが分子栄養学の考え方です。分子栄養学の得意分野において、より良い材料の供給により身体の中の異化=同化を目指します。(※分子栄養学とは⑧

これは、身体を守る免疫に対しても同じです。生活習慣を整えた上で、自分に合った栄養素を補給することが、敵(病原体)から身を守る粘膜や免疫の維持につながると考えています。(※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」※分子栄養学における免疫と栄養素の基本対策①※分子栄養学における免疫と栄養素の基本対策②

なぜ血液検査や腸内環境検査が必要? 栄養素をしっかり摂るだけではだめですか?

そしてその際に重要となるのが、個体差です。例えば、亜鉛の足りない亜鉛欠乏性貧血の人に鉄を補給することでは貧血は治りません。亜鉛欠乏性貧血の方には、亜鉛が必要です。この、必要な栄養素が人や場合によって異なることを見極めるのが、個体差栄養学ともいえる分子栄養学の強みです。(※分子栄養学とは⑥

分子栄養学は、その細かな個体差を追う手段として、詳細な血液検査、腸内環境検査(※あなたの腸は大丈夫? リーキーガット症候群(理論編②))などの客観的なツールを用います。そうして得た血液検査などの結果は、まぎれもなくその人の「今」と「少し過去」の栄養状態を如実に反映します。他の誰のものでもない、「自分」の状態を、医師による詳細な問診とともに「目に見える数値」として読み解きます。(※血液検査の意義① ※血液検査の意義② ※血液検査の意義③ ※血液検査の意義④

分子栄養学は個体差の、より深い要因に対してアプローチする個体差栄養学

個体差は、ライフスタイル、ストレスに感じること、生体内の代謝(※分子栄養学とは⑤)、胃の状態、口腔内環境、腸内環境、遺伝子多型※5まで、みなさん一人ひとりが違うことを指しています。分子栄養学の創始者のひとり、ライナス・ポーリング博士は、代謝に必要な酵素と基質※6の親和性の個体差から、ビタミンの必要量にも大きな個体差があることを提唱しています。(※分子栄養学とは⑦-2「酵素の役割」

同じ「ひとり」の中でも、その時置かれた環境、病気の時と健やかな時、ストレスの状態、体調、口腔内環境、腸内細菌叢のバランスまで、全く違ってくる可能性があります。分子栄養学は、「ひとり」と「ひとり」の間の個体差だけではなく、その一歩先の、「自分の中の個体差」を医師とともに読み解くことにより、より深い要因に向かってアプローチしていきます。

2024年の新たな幕開け。ぜひ、皆さんの健康を支える1ページに、分子栄養学をともに学び、自分の目指す健康の成功のカギとなる “個体差” を、詳細な血液検査とともに読み解いていきませんか。自分の人生をかなえる「健康」のため、人生の1ページに分子栄養学的アプローチを仲間にして、まずは血液検査を受けることから始めてみませんか。

※1 Ali, AM.,et al. Approaches to Nutritional Screening in Patients with Coronavirus Disease 2019 (COVID-19).  International Journal of Environmental Research and Public Health, 18(5): 2772.(2021)

※2 Ali, AM.,et al. Skeletal Muscle Damage in COVID-19: A Call for Action. Medicina (kaunas) ,57(4):372.(2021)

※3 Filippo, LD.,et al. COVID-19 is associated with clinically significant weight loss and risk of malnutrition, independent of hospitalisation: A post-hoc analysis of a prospective cohort study. Clinical Nutrition, 40(4): 2420-2426.(2021)

※4 Welch,C.,et al. COVID-19 and Acute Sarcopenia. Aging and Disease, 11:1345-1351.(2020)

※5 遺伝子多型(polymorphism)とは
親から子へと生物の特徴が受け継がれていくことを遺伝といい、その遺伝情報を伝えるもののことを遺伝子といいます。遺伝子多型とは、一般的に“100人に1人以上”と比較的よくみられる遺伝子の個体差のことです。細かくみると、遺伝子の本体であるDNA(デオキシリボ核酸という物質)の中の  塩基 と呼ばれる物質の並びの違いを指します。この並びの違いが、体質や病気の罹りやすさなどに影響する可能性が考えられています。

※6 基質とは
酵素のはたらきかけで化学反応を起こす物質のことです。その酵素に対して反応を起こすものを、その酵素に対する「基質」といいます。

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