The Orthomolecular Times

2024.11.05 分子栄養学の食事「亜鉛を多く含む食品」

分子栄養学とは

分子栄養学とは⑦-2「酵素の役割」

分子栄養学とは⑦では、3回シリーズで酵素と代謝について考えています。

今回はその2回目、代謝をスムーズに進めるのに欠かせない酵素のお話です。

生体内では、常に代謝という化学反応が起き、それが生命を支えてくれています(※分子栄養学とは⑤ 分子栄養学とは⑦-1

代謝はスピードが命

代謝、つまり生体内での化学反応は、その反応のスピードが大事です。身体が今すぐBというものが欲しいのに、AからBに変わるのに何時間もかかるとしたら・・?その間の代謝が滞ってしまいます。代謝は連続的に起こっており、最初の反応が何時間も止まってしまったら、それだけでそれに続く反応も止まってしまいます。

一般に、化学反応の速さは、温度や濃度、圧力、触媒の有無などによって左右されることがわかっています。温度が高くなるほど、濃度が高くなるほど反応のスピードは速くなります。そこから考えると、ヒトの生体内のような穏やかな条件(体温が約37℃など)での化学反応は起こりにくいと考えられますが、実際に生体内で起こる化学反応は、とてつもなく速いスピードで進んでいます。これは、なぜか。生体内で起こるそれぞれの化学反応において、酵素が働いてくれているからです。私たちが生きるのに必要な代謝を、酵素が迅速に進めてくれているからです。

酵素がスピードアップの鍵

例えばAという物質がBという物質に変わるための反応があるとします。その反応には日が暮れてしまいそうなくらいの長い時間とひと山登るほどのたくさんのエネルギーが必要です。しかし、それを待っていては、その間、Bを得ることができません。そこで、その道をショートカットし、かかる時間をうーんと早めて、少ないエネルギーで活動できるようにしてくれるのが酵素の役割です。

高い山をたくさんのエネルギーを使って登って、急な下り坂を高いところから気をつけながらゆっくり下りて、、、とではなく、その山に掘ったトンネルを少ないエネルギーでびゅーんと行く手伝いをしてくれる、それが酵素のイメージです。この反応の前後で酵素そのものは変化しません。関わる反応の速度を高め、活性化エネルギーを下げて、生成物(product)への反応をスムーズに進めてくれるという作用があります。化学反応を進めるためのエネルギーを活性化エネルギーといいます。

酵素と基質 と カギとカギ穴

このように、生体内で起こるほとんどの化学反応には酵素が関わり、より少ないエネルギーで、スムーズかつスピーディーな反応を手助けしてくれています。酵素が反応させていく相手、特定の相手のことを、基質(きしつ)といいます。酵素は、相手が誰でも片っぱしから反応させるのではなく、特定の相手だけに関わって作用し、特定の反応だけを起こすことができます。これを、酵素の基質特異性(substrate specificity)といいます。特異性とは、特定の物質にだけ特定の反応を起こす性質のことです。

この基質特異性のためには、酵素が特定の形をしている、ということがとても重要になります。よく例えられるのが、カギとカギ穴の関係です。酵素はタンパク質でできており、このタンパク質が特定の形をしているということが、仕事をする上でとても大切な要素です。酵素が特定の形をしているために、その特定の形にぴったりと合う形をもった基質にしか働けないようになっています。このぴったりの合いやすさを酵素と基質の親和性といい、そこからビタミンの必要量の個体差まで唱えたのが、L.Pauling博士です(※分子栄養学とは⑥)。

一部、RNA(核酸の一種)も酵素として働くものもありますが、おおむね、酵素はタンパク質という分子(高分子化合物)であると考えてよいでしょう。(※分子栄養学とは② 分子栄養学とは③

酵素の素晴らしいところは、時間を節約し、少ないエネルギーでどんどん反応を進めてくれるところです。酵素がうまく進んでいくための条件には、温度、pH(酸性かアルカリ性かなど)、酵素や基質の濃度、温度などが関わります。普段、生体内で働いてくれている酵素は、約37℃という穏やかな体温で効率よく働くことができるようになっています。胃の中で働いている酵素は、食べ物を溶かしてしまうようなものすごく酸性の度合いが強い環境でいちばん働けるという特徴をもっています。

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