KYB × FUTURE
十種競技 日本記録保持者 右代啓祐氏 「現役最年長ですが、栄養アプローチで身体の状態はどんどん良くなってきている。」
今回は、十種競技 日本記録保持者※である陸上選手の右代啓祐さんをお迎えし、KYBグループ 代表取締役社長の金子雅希がお話を伺います。 ※ 2021年12月1日現在
分子整合栄養学との出会い
- 金子
- 本日は日本のキング・オブ・アスリートである右代さんから栄養についてお話を伺う貴重な機会をいただきとても光栄です。まずは右代さんが分子整合栄養学を知ったきっかけについてお聞かせください。
- 右代
- 職場の同僚からKYBグループの血液検査について伺ったことです。僕は母校である国士舘大学で講師としても働いているのですが、国士舘大学でスポーツと栄養の関係について研究している羽田克彦先生とお話ししたときに、全身の健康状態を可視化できる血液検査の存在を知り、「ぜひ検査を受けたい!」と思ったのが始まりです。それで2019年に初めて[K01]初診スクリーニングを受けました。
- 金子
- 右代さんは2019年だけでも4回血液検査を受けてくださっていますもんね。コンスタントに血液検査を受けて、健康管理に役立てていただけて嬉しいです。
- 右代
- KYBグループの血液検査は、数値に基づいて自分の健康状態を客観的に視ることができるのと、足りない栄養素をアドバイスしていただけるのが気に入っています。初めて血液検査を受けた頃に、分子整合栄養学に基づく栄養指導をしている管理栄養士さんからアドバイスを受けたのも、栄養アプローチに取り組む大きなきっかけになりました。その管理栄養士さんが僕のために週に1回くらいのペースで勉強会を開いて、栄養素の基本的な働きについて教えてくださったんです。その勉強会がきっかけで栄養に興味が湧いて、本格的に栄養アプローチを開始しました。
- 金子
- その管理栄養士さんからアドバイスを受ける前は、栄養素は摂っていらっしゃらなかったんですか。
- 右代
- プロテインやBCAAを摂ることはありましたが、「きついトレーニングをしたからとりあえずプロテインでも飲んでおこう」くらいの認識で、身体の変化を感じたことはありませんでした。身体の仕組みや栄養素に関する知識がなかったので、なぜその栄養素が必要なのか、どのタイミングで摂取すると良いのかが分からなかったんですよね。栄養アプローチを開始する前は、大会前に食事量を減らして無理な減量をしたりもしていました。食事指導を通じて美味しく正しく食べる方法を学び、食事の内容を改善することができました。元々料理が好きなので、今もできるだけ自炊したりして食事を大切にしています。
- 金子
- 血液検査と栄養アプローチを通じて、自分の身体に必要な栄養素を自分で考えて食事に取り入れることができるようになったのは素晴らしいですね。その成果がInBody※の測定結果に反映されているように思います。
※InBody:体成分分析装置。体水分量・タンパク質量・ミネラル量・体脂肪量の測定結果に基づいて、栄養状態に問題がないか、身体がむくんでいないか、身体がバランス良く発達しているか等を評価し、100点満点で表示する。
栄養アプローチを実践してみて体感した栄養のチカラとは
- 金子
- 分子整合栄養学に基づく栄養指導を受けて、身体に変化を感じることはありましたか。
- 右代
- 睡眠の質が上がりました。栄養アプローチを始める前は、なかなか寝付けなかったり、夜中に目が覚めたりすることが頻繁にありましたが、栄養アプローチを開始してすぐに熟睡できるようになったので、翌日に疲れが残りにくくなりました。
- 金子
- 十種競技の試合は2日に亘って行われるので、初日の疲れを2日目に持ち越さないことはパフォーマンスにおいて非常に重要ですよね。
- 右代
- そうですね。1日目を終えた後はもちろん疲れますし筋肉痛にもなりますが、倦怠感が抜けて全力が出せる身体で2日目を迎えられるようになりました。1週間に2つの大会に出場したこともありましたが、1週間という短期間でそれだけの種目数をこなすことができたのは栄養のおかげだと思っています。身体の調子が良いと、前向きな気持ちで練習や本番に臨めるのも良かったです。
- 金子
- 右代さんは血液検査で炎症マーカーが高かったので、抗酸化・抗炎症対策を強化したのがパフォーマンス面と精神面に良い影響を与えたのではないかと思います。他に体調面の変化はありましたか。
- 右代
- 全体的に身体が丈夫になったと感じています。練習量が多く免疫が下がるのか、インフルエンザに罹ったり、年に4 ~5回は高熱を出したりしていましたが、風邪を引くことがなくなりました。それと、怪我が少なくなりましたね。学生時代からずっと、関節痛や腰痛、アキレス腱の痛み、疲労骨折等に悩まされてきて、怪我をしそうな兆候を感じて練習を中止することがありましたが、今はそういった兆候を感じることがないので、練習への集中力が上がったように思います。
- 金子
- アスリートが現役を引退する直接的な原因が怪我ですから、怪我をしなくなったというのは選手生命を維持するうえでもとても大切ですね。
- 右代
- 本当にそうです。僕は今35歳で、日本の十種競技の現役選手の中で最年長と呼ばれていますが、栄養アプローチを始めてから「このコンディションならベストを出せるかも!」という瞬間がどんどん増えてきていて。記録としては2014 年の8,308点がピークですが、身体の状態としてはどんどん良くなってきていると感じています。3 年後のパリオリンピックのときには38歳になりますが、最年長での十種競技出場も諦めずにまだまだ頑張りたいと思っています。
- 金子
- 格好良いですね。僕も栄養面で右代さんを全力でサポートします!
これからの未来を担うジュニアアスリートを育てるために
- 金子
- 右代さんは大学講師としてジュニアアスリートの育成にも携わっていらっしゃいますが、ご自身のスポーツ人生を振り返ってみて、子どもの成長における栄養の重要性についてどのようにお考えですか
- 右代
- 僕は中学1年生から陸上競技を始めましたが、全国大会に初めて出場したのは実は高校生になってからなんです。中学生時代は、中学1年生から2年生にかけて身長が15 cm 伸びた影響で、成長痛に悩まされたのと、栄養が筋肉ではなく身長を伸ばす方に使われてしまったので、陸上ではあまり良い成績が残すことができませんでした。周りから「ただ身長が大きいだけの人じゃん」と言われるのが当時は本当にコンプレックスでした。
- 金子
- 1年で15 cmも身長が伸びると身体への負担が凄まじかったでしょうね。最終的に今の身長まで伸びたのはいつ頃だったんでしょうか。
- 右代
- 高校に入学した頃に196 cmまで伸びてようやく止まりました。身長が止まって筋肉が大きくなり、身体がしっかりと作られてきたタイミングで、陸上の成績が一気に上がったんです。中学生時代は全国大会に出たこともないひょろひょろガリガリの少年が、高校生になってインターハイ(全国高等学校総合体育大会)2位まで上り詰めたのは、家族が栄養バランスの良い食事を用意してくれたのと、学校が特例的に補食を許可してくれたおかげもあると思っています。
- 金子
- ここまで身長が伸びるケースが珍しいので、学校側も配慮してくれたんでしょうね。素晴らしい判断だと思います。
- 右代
- 僕の成長を想って特例的に補食を許可してくれた学校にはとても感謝しています。今の中高生の食事の内容を考えると、あれだけじゃとても足りないと思うんです。「子どもにスポーツを頑張らせたい」「成長期の大切な時期に栄養を」と言うのであれば、あのとき僕がしてもらったように、何事も「ルールだから」と一律で否定するのではなく、一人ひとりの身体の状態を考慮した対応ができたらいいなと思います。
- 金子
- 食育を始め、ジュニアアスリートのサポート体制が整うと良いですね。
- 右代
- そうですね。今の僕があるのは、目立った成績を残せなかった中学生時代から僕を支えてくれた方々がいたからです。ジュニアアスリートはいずれ世界を担うトップアスリートになる訳ですから、あのとき僕を支えてくれた周りの方々のように、「強いからサポートする」のではなく「強くなる前の教育の時点でサポートする」世の中になったら嬉しいです。僕もいつか自分の教え子たちとオリンピックに出られるように、身体を動かせる指導者として頑張りたいと思っています!
- 金子
- 素敵な夢ですね!右代さんと日本のジュニアアスリートたちのサポートができれば、KYBグループとしても嬉しいです。本日は貴重なお話をありがとうございました。
右代 啓祐
うしろ けいすけ/中学生時代から陸上部に所属。高校生時代に八種競技、国士舘大学進学後に十種競技に取り組み始め、4年生時に日本選手権初優勝。2011年には日本人初の8,000点超えとなる8,073点を記録。2012年ロンドン五輪では日本人として48年ぶりの十種競技出場を果たす。2014年に8,308点をマークし日本新記録を樹立。2016年リオ五輪に出場。2018年より国士舘大学講師としてジュニアアスリートの育成にも携わる。
金子 雅希
かねこ まさき/英国でスポーツ栄養科学を専攻し、主にアミノ酸の研究を行う。2007年より株式会社ケンビファミリーに入社。2015年に株式会社ケンビファミリー・株式会社KYBメディカルサービス 代表取締役社長に就任し、著名なプロアスリートから成長期のキッズアスリートまで、従来のスポーツ栄養科学に分子整合栄養学を組み合わせた栄養指導を多く手掛ける。2020年より国士舘大学体育学部附属体育研究所 特別研究員に就任し、専門性に磨きをかけている。