血液・尿検査の意義①「 基本検査K-01 Ⓐ血清タンパク質」

個体差に沿った分子レベルの健康を自分自身で守っていくための分子栄養学(※分子栄養学とは①)。
そのための基本ツールとして利用されるのが血液と尿の検査セットです。 いちばん最初の初診スクリーニング※1としての役割も担います。医師のモニタリングによって自分の健康状態を客観的に知ることにより、より最適な方法で健康を維持増進することを目的として行います。

KYBグループにおける分子栄養学では、全身の健康状態を把握することを目的に、
・69項目の詳細な血液・尿検査(※血液検査の意義①)
に加えて、身長、体重、BMI(体格指数)、体脂肪率、腹囲(希望者)、血圧、脈拍の計測を含む検査項目を推奨しています。
これらの検査について『血液・尿検査の意義①~⑥「基本検査K-01」』として6回の記事に分け、関連する項目ごとにまとめて検査項目を簡単に解説いたします。
「健康管理のために、なぜこの項目を検査することが必要なのか?」一緒に見ていきましょう。
今回は第1回、Ⓐ 血清タンパク質についてです。
血清タンパク質に関する検査項目として、
・TP(総タンパク質)
・タンパク質分画 { ALB(アルブミン)
・α1-G(グロブリン)、α2-G、β1-G、β2-G、γ-G}
・A/G(アルブミン/グロブリン)
・高感度CRP(C反応性タンパク質)
について順を追って解説いたします。

Ⓐ 血清タンパク質
血清タンパク質を測ることにより、栄養状態や、炎症がないかなどを調べます。
血液から有形成分(赤血球・白血球・血小板など)を除いた液体成分を血漿と呼び、血漿から血液凝固因子(血液を固める成分)を除いたものを血清といいます。血清にはたくさんの種類のタンパク質が含まれていて、これを血清タンパク質と呼んでいます。そして、その血清タンパク質のすべてを総称して総タンパク質(total protein:TP)と呼んでいます。

総タンパク質は、アルブミンとそれ以外のグロブリンと総称されるタンパク質に分けられています。
グロブリンは大きく分けてα1-グロブリン、α2-グロブリン、β1-グロブリン、β2-グロブリン、γ-グロブリンの5分画に分けられます。これらのタンパク質は、栄養状態、免疫機構などに関与し、合成と分解を繰り返しています。特定の疾患になると、これらのタンパク質の割合が崩れ、その合図を送ってくれます。
各種グロブリン分画は、それぞれに応じた各種疾患、急性炎症・慢性炎症の程度などの目安となります。また、アルブミンをはじめ血清タンパク質の多くは肝臓で合成されているため、肝臓の機能とも関係します。

アルブミンは、さまざまな栄養素・薬物・代謝物質をくっつけて目的地まで運ぶトラックのような役割をしています。また血管の中に水を引き付け、血液量を保つ働きをしているため、アルブミンが少なくなると血管の外(間質)に水が移動してむくみが生じます。アルブミンは2~3週間前の栄養状態を反映しており、炎症や低栄養で低くなります。

極端な話にはなりますが、発展途上国の子どもたちは、飢餓状態にあるのにお腹だけぽっこり出ていることがあります。あれは、タンパク質が欠乏しているために(=アルブミンが低値)、血管の外に水が移動して、腹水という形でお腹にむくみが生じている状態がひとつの原因であると考えられています。またがんばって食事制限をして体重が減ったのに身体がむくむ、という方はいらっしゃいませんか?そのような方は、もしかしたらアルブミンの値が低下している可能性があるかもしれません。

CRPは、C反応性タンパク質(C-reactive protein)の略です。感染症や炎症で素早く上昇します。どこで炎症が起こっているか特定はできませんが、炎症の程度に応じて数値が高くなることから、感染症や炎症性疾患、そしてその経過観察などの指標として用いられています。喫煙、ストレス、生活習慣病、妊娠では軽度に上昇します。
<血清タンパク質に関する検査項目>
TP(総タンパク質)、タンパク質分画 { ALB(アルブミン)、α1-G(グロブリン)、α2-G、β1-G、β2-G、γ-G}、A/G(アルブミン/グロブリン)、高感度CRP(C反応性タンパク質)
※1スクリーニングとは スクリーニングとは、ふるい分けのことです。