The Orthomolecular Times

2024.12.16 分子栄養学と免疫の栄養素「自然免疫:好中球の働きとビタミンC」

栄養素のお話(基本編)

分子栄養学の栄養素:ビタミンB群を知る③「ビタミンB群の最適なレベル」はどこに?

分子栄養学では、自然治癒力を最大限に引き出すための「至適量のビタミンB群摂取」を重要視

ヒトの身体にはもともと自然に治ろうとする力、自然治癒力が備わっています。このことは、人のもつ能力のひとつとして捉えられています(※分子栄養学とは⑧)。分子栄養学では、この自然治癒力を引き出すキー栄養素として、至適量のビタミンB群摂取を重要視しています。ビタミンB群は、脳や身体全体にとっての代謝を進める基礎をつくる栄養素だからです。

分子栄養学の考えるビタミンB群の至適量とは?

分子栄養学が重要視する至適量のビタミンB群。至適量とは、どんな量を指すでしょう。

「至適(optimum)」というのは、最適条件というような意味です。“個々人に最もふさわしいレベル”と考えていただければわかりやすいでしょう。一人ひとり、栄養摂取の至適量は異なります。また、一生不変のものではなく、年齢、環境、ストレス状況などに応じて至適量はどんどん変わっていきます(※分子栄養学とは⑥)

そこで、「そのとき、その人に最適と言えるレベルまで分子濃度を上げていけば、最大限の生体機能がおのずと発揮され、身体が自発的に機能を高めた結果として自然治癒力が発揮されるのではないか」というのが分子栄養学の考えです。分子栄養学では、栄養素の至適量というものをとても大切にしています(※分子栄養学の歴史①)。

また、ただ単に栄養素を摂取する量だけではなく、吸収できた量によって至適量が維持されると考えられることから、栄養素の消化・吸収をつかさどる胃腸の状態を最も重要視しています。腸内細菌は、ビタミンB群を合成し、ヒトに供給してくれる存在です(※ビタミンB群を知る①)。

ビタミンB群の「最適なレベル(the optimal level)」はどこに?

これまでの歴史において、ビタミンB群をどのくらい摂ったらよいのか、その量については、今現在、通常の栄養学(※分子栄養学とは①)で言われるそれぞれの欠乏症を予防するための摂取量について明らかにされてきました(※ビタミンB群を知る①「ビタミンB群は8種類ある!」)。しかし、欠乏症を予防できる量を摂ったとしても、ビタミンB群の最適なレベルを下回ったときの悪影響について、また、「最適なレベル(the optimal level)」がどこにあるのかについては、全く明らかにされていないことが指摘されています※1

そんな中、「欠乏症まではいかないが、最適なレベルではない潜在性欠乏症(marginal deficiency)の栄養状態のリスクについて、アメリカ政府が公的に認めている」※1ことが報告されています。そこで言われる「最適ではない摂取量のレベル」とは、各ビタミンの欠乏症を予防する量以上の摂取量を指しています※1

ビタミンの欠乏は、農耕が始まる以前の食事と現代の食事の差によるもの?

農耕が始まる以前の人の食事は、野菜、果物、ナッツ類、魚、肉などが中心でした。しかし、現代では大量の砂糖や精製穀物、加工肉などをはじめとするビタミンやミネラルといった微量栄養素の含有量の少ない、いわゆる「西洋の食事パターン」を食べていることの違いが、ビタミンの欠乏症や、肥満、心血管疾患などの病気の基礎となっているのではないかと、数々の論文で指摘されています※1、※2、※3、※4

ある論文では、「先進国では、かなりの割合の人々が、ビタミンB群の欠乏・不足に悩んでいる」ことが報告されています※1

ビタミンB群は、国が勧める量を大幅に超える量の摂取が、脳の健康を維持する合理的なアプローチであるとの指摘

また、同じ報告の中ではビタミンB群の摂取量について、「国が勧める量を大幅に超える量で摂取することが、脳の健康を維持するための合理的なアプローチとなる可能性」が指摘されています※1

その中ではこうも述べられています。「一般的に、先進国に住む人々は日々適切な栄養を摂取しており、栄養素の欠乏はないと考えられがちです。しかし、国の定める「食事摂取基準」による「推奨量(ほとんどの者が充足している量)」は、欠乏症を予防することだけを指しています。そして、先進国に住む人々の中には、その推奨量の量でさえ摂っていないことがある」※1との指摘です。

「医薬品の摂取、肥満、激しい運動、年齢、また、遺伝子多型、民族性、甲状腺機能の不全、代謝経路の不全などが関係し、ビタミンの消化・吸収・排泄には個体差が認められることが明らかになり、それらに応じて栄養素の必要量は変化するはずであるにも関わらず、過去40年に渡って、国によって定められている必要量が変化していない」※1ことが問題として指摘されています。

分子栄養学は医師が行う血液検査モニタリングなどで、至適量のビタミンB群摂取を目指す

分子栄養学では、病態改善の基本として、エネルギー産生(ミトコンドリア機能)を効率的に進めるためのビタミンB群を、栄養素アプローチの基本として重要視しています。詳細な血液検査などを用い、個体差に沿ったビタミンB群をはじめとした栄養素の至適量補給で、医師とともに効率的な健康自主管理に生かしていきましょう。(※「ビタミンB群は8種類ある!」※「ビタミンB群は8種類一緒に摂ることが合理的!」

※1 Kennedy, DO. B Vitamins and the Brain: Mechanisms, Dose and Efficacy—A Review. Nutrients, 8(2): 68. (2016)

※2 Cordain, L.,et al. Origins and evolution of the western diet: Health implications for the 21st century. American Journal of Clinical Nutrition, 81(2):341-354. (2005)

※3 Benzie, IFF. Evolution of dietary antioxidants. Comparative Biochemistry and Physiology - Part A: Molecular & Integrative Physiology, 136(1):113-126. (2003)

※4 Milton, K. Back to basics: why foods of wild primates have relevance for modern human health. Nutrition, 16(7-8):480-483. (2000)

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