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【新着記事】2024.4.22 「カロリーの摂り過ぎ」だけが太る原因ではない⁉ 肥満の理論「エネルギーバランスモデル」

栄養素のお話(基本編)

分子栄養学の栄養素:ビタミンAを知る④「β-カロテンはビタミンAと同じですか?」

カロテノイドとは

カロテノイドは、食品中の植物(野菜、果物など)、魚類(サケなど)、甲殻類(エビ・カニなど)、海藻、微生物などに含まれる、黄色・オレンジ色・赤色を示す脂溶性色素の総称です※1。自然界には1,100種類以上のカロテノイドが存在するといわれています※4。人の一般的な食事に含まれるカロテノイドは約40種類、そのうち、ヒトの体内から見つかっているカロテノイドは約20種類と報告されています※4、※5

ビタミンAに変換できるカロテノイド:α-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチン

カロテノイドのうち、ビタミンAに変換できる栄養素をプロビタミンAといいます。プロビタミンAとしてのカロテノイドは、一般的に知られているものとして、α-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチンなどです※6

α-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチンの中ではβ-カロテンがプロビタミンAとしての効力が最も高く※7、β-カロテンは研究機関によってビタミンAの1/6から1/12の効力とされています※6。日本人の食事摂取基準(2020年版.厚生労働省) においては、β-カロテンはビタミンAの1/12の効力として、α-カロテンとβ-クリプトキサンチンは1/24の効力として換算されています。

プロビタミンAとは、体内でビタミンAに変換されて効力を発揮できる栄養素のこと

「プロ(pro-)」とは「前」を意味する英語の接頭語で、プロビタミン(provitamin)はビタミンの前駆体と訳されます。前駆体とは、英語でPrecursor、化学反応において、ある物質に変わる前段階の物質のことです。

例えば、分子栄養学の大切な基礎である「代謝、異化、同化」は化学反応ですが(※分子栄養学とは⑤ 「代謝=異化×同化」)、その代謝によってAという物質が変化してBという物質が作られる場合、AはBの前駆体と呼ばれます。 プロビタミンAであるカロテノイドは、ビタミンAの前駆体です。

カロテノイドには、ビタミンAとして働けるものと、働けないものがある

カロテノイドの中には、ビタミンAに変換されないものと、変換されるものがあります※2、※3、※8。ビタミンAに変換されないものの代表がリコピン、ルテイン、ゼアキサンチンなどです。一方、ビタミンAに変換されて効力を発揮するカロテノイド、プロビタミンA(ビタミンAの前駆体)の代表が、α-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチンです※3、※4

カロテノイドのビタミンAへの変換は、身体の必要性に応じて行われる

カロテノイドのビタミンAへの変換は、身体の必要性に応じて行われます。食事(野菜、果物など)の食品から天然のカロテノイドとして摂取する場合には過剰症は心配ないことが報告されています※9。しかし、病気予防を目的としてどのくらい摂ったらよいか、そのレベルを確立する必要があるとする論文もあります※4

1種類のカロテノイドを大量に摂取すると、他のカロテノイドの消化管からの吸収、組織での利用を妨げる可能性があるとの報告があります※10。分子栄養学では、特定の栄養素のみを単一で摂取することによって生体内のバランスが崩れることを防ぐため、カロテノイドをダイエタリーサプリメント(以下、サプリメント)として摂取する際にも、天然のかたちの栄養素を複数組み合わせた安全性を考慮されたものを使用することをお勧めしています。分子栄養学実践に求められるサプリメントの品質については、※分子栄養学の歴史④※分子栄養学の歴史⑤ に解説があります。ぜひご一読ください。

カロテノイドは抗酸化作用をもっている

摂取したカロテノイドはすべてがビタミンAとして働くわけではなく、カロテノイドとしての独立した働きがあります。その大事な働きのひとつが抗酸化作用です。紫外線によって作られる活性酸素(一重項酸素)などを消去するという重要な役割をもっています※1、※2、※3。カロテノイドは抗がん作用なども研究されています※3

カロテノイドを摂ることは、ビタミンAそのものを摂る濃度には及ばない?

プロビタミンAの効力をもつカロテノイドは、体内で変換されることでビタミンAとしての効力をもちますが、その効果は直接ビタミンAを摂ることで達する濃度には達しづらいとの報告もあります※11。また、β-カロテンは一度抗酸化で使われてしまうと分解されてしまうため※7、分子栄養学では、カロテノイドはカロテノイドとして活性酸素消去などを期待し、ビタミンAはビタミンAとして摂取することをお勧めしています

プロビタミンAとしてのカロテノイドを多く含む食品

ビタミンAを多く含む食品は以下になります。あぶらと一緒に食べることで吸収率が上がります(※ビタミンAを知る①)。かぼちゃや果物には糖質も多く含まれますので、食べる量は適量に。バランスの取れた分子栄養学の食事の一環として参考にしてください。効率的に栄養素を摂り、健康自主管理に生かしていきましょう。(※食事の基本

● α-カロテン:にんじん、かぼちゃ※4
● β-カロテン: 緑黄色野菜(にんじん、ほうれん草、モロヘイヤ、豆苗、かぼちゃなど)
● β-クリプトキサンチン:みかん、パパイヤ、柿、オレンジなど※6

※1 El-Agamey, A.,et al. Carotenoid radical chemistry and antioxidant/pro-oxidant properties. Archives of Biochemistry and Biophysics, 430(1):37-48.(2004)

※2 Stahl, W.,et al. Bioactivity and protective effects of natural carotenoids. Biochimica et Biophysica Acta, 1740(2):101-107.(2005)

※3 Milani, A.,et al. Carotenoids: biochemistry, pharmacology and treatment. British Journal of Pharmacology, 174(11):1290-324.(2017)

※4 Terao, J. Revisiting carotenoids as dietary antioxidants for human health and disease prevention. Food and Function, 14(17):7799-7824.(2023) 

※5  Rao, AV.,et al. Carotenoids and human health. Pharmacological Research, 55(3):207-216.(2007)

※6 Burri,BJ. Beta-cryptoxanthin as a source of vitamin A. Journal of the Science of Food and Agriculture, 95(9):1786-1794.(2015)。

※7 Grune, T.,et al. β-Carotene Is an Important Vitamin A Source for Humans. Journal of Nutrition, 140(12): 2268S-2285S.(2010)

※8 Olson, JA.,et al.Introduction: the colorful fascinating world of the carotenoids: important physiologic modulators.FASEB Journal, 9:1547-1550.(1995)

※9 Tanumihardjo, SA.,et al. Biomarkers of Nutrition for Development (BOND)-Vitamin A Review. Journal of Nutrition,146(9):1816S-1848S.(2016)

※10 Sies, H.,et al. Preferential increase in chylomicron levels of the xanthophylls lutein and zeaxanthin compared to β-carotene in the human(Article). International Journal for Vitamin and Nutrition Research, 66(2): 119-125.(1996)

※11 Fritz, H.,et al. Vitamin A and Retinoid Derivatives for Lung Cancer: A Systematic Review and Meta Analysis. PLoS One, 6(6): e21107.(2011)

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