The Orthomolecular Times

2024.12.16 分子栄養学と免疫の栄養素「自然免疫:好中球の働きとビタミンC」

栄養素のお話(応用編)

日本人の98%がビタミンDが不足している⁉ 春の花粉症に備えた分子栄養学ビタミンD対策

日本人の98%の人がビタミンD不足⁉ 不足の理由は日焼け止めや生活習慣の変化?

東京慈恵医科大学の研究グループによって報告された研究では、2019~2020年に東京都内において健康診断を受けた5,518人を対象に行われた研究において、一見健康に見える人たちの中でも、98%の人がビタミンD不足(血中25(OH)D 濃度、<30 ng/mL)であることがわかりました※1

その理由として、屋内で過ごす時間の増加、伝統的な日本食(干ししいたけ)を食べる機会の減少、若い女性の日焼け止めクリームなどの使用※8などが挙げられています※1

来るスギ花粉症に備え、万全の免疫対策のひとつに至適量のビタミンDのススメ

日本人のおおよそ4割弱が苦しんでいるとの報告がある春のスギ花粉症※9。花粉症は、花粉に対して起こるアレルギー疾患のことです。アレルギーとは、本来なら有害なものから自分を守ってくれるはずの免疫(※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」)が、無害なもの(花粉、食べ物など)に対して過剰な免疫反応が起こり、自分の身体まで傷つけてしまう反応のことをいいます。

ビタミンDは、過剰に反応している免疫細胞(※免疫を司る白血球「白血球の仲間たちの基礎」)を落ち着かせ、免疫のバランスを調整する※10、※11ことで花粉症の症状が緩和するのではないかと、そのメカニズム解明が進められています。ビタミンDは、自然免疫と適応免疫のどちらにも影響を与え、本質的に、免疫の状態をより寛容な方へと調整させていくと考えられています※2、※12

花粉症のアレルギー反応メカニズムの立役者に、IgE抗体との反応を介してヒスタミンなどの炎症性物質を放出するマスト細胞(肥満細胞)という細胞があります(※多くの日本人を悩ます花粉症と栄養素①)。ヒトのマスト細胞とマウスを使った研究において、反応するのに十分な量のビタミンDの存在が、ビタミンD受容体が機能しているマスト細胞に作用することで、マスト細胞の活性化を抑え、アレルギー反応のもととなる炎症性物質の生成を弱める可能性を示した論文もあります※3

分子栄養学における花粉症対策の栄養素(ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、タンパク質、グルタミン、鉄、亜鉛、腸内環境など免疫対策)について、詳しくは※多くの日本人を悩ます花粉症と栄養素①多くの日本人を悩ます花粉症と栄養素② をご覧ください。来る春を清々しく過ごす準備を1月の今からスタートさせていきましょう。

ビタミンDはさまざまな病気に保護的に働くことが世界中で期待されている

ビタミンDは、子供のくる病、成人の骨軟化症、骨粗鬆症、筋肉の維持※5、感染症※13、糖尿病※5、※14、がん※5、※6、心血管疾患 (CVD) ※5、※6、自己免疫疾患※5(多発性硬化症※15、関節リウマチなど)、呼吸器疾患※6、認知症※5 、※16、うつ病※4 、※17などのさまざまな疾患、免疫※12、あらゆる死亡リスク低下※6に対して保護的に働くことが示唆され、世界中で研究されている大切な脂溶性ビタミンです。(※ビタミン(総論)

適切な量のビタミンDの補給は、さまざまな病気に保護的に働くことが示唆されています。しかし、日焼け止めの使用などによる適切な日光浴(紫外線UV-Bに直接当たること)の欠如などが心配され、それが今後も続くと考えられるため、適切なビタミンDの補給は世界全体での人々の健康(公衆衛生)のために極めて重要な課題であるといわれています※6

日本の保健所の前向き研究では、食事中のビタミンD摂取量が多いほど死亡リスクが低下

日本の保健所発表の、日本全国(11か所の保健所エリア)、40~69歳の住民14万人余を対象とした前向き研究によれば、食事からのビタミンD摂取量が多いほど脳卒中や肺炎による死亡リスクの低下、また普段からの日光への曝露量が少ない人や高血圧の人では食事からのビタミンD摂取量が多いほど死亡リスクが低下することが示されています※18

食事で補えるビタミンDの量は限られるため、良質なビタミンD3サプリメントでの補給が勧められている

しかし、ビタミンDを豊富に含む食品は、鮭などの魚介類、天日干しの干ししいたけなどと、非常に限られています。健康を維持するための十分なビタミンDを食事から摂取するためには、頻繁に魚介類(鮭、さんま、サバなど)などを食べる必要があり、それが難しいため、栄養補助食品(ダイエタリーサプリメント。以下、サプリメント)の摂取で補う必要があるとする論文があります※7

ヒトがビタミンDを獲得する方法は3つ、食事(鮭などの魚、天日干しのしいたけなど)、太陽光の直射日光(紫外線UV-B)が皮ふに直接当たること、栄養補助食品(ビタミンD3のサプリメント)の活用です※7、※12。(※UV-Bの減る日本の冬、免疫のための分子栄養学的ビタミンD摂取のススメ

分子栄養学では、血液検査でモニタリングしながら、ビタミンD3サプリメントの摂取をおすすめ

分子栄養学では健康維持の至適量のためのビタミンD補給方法として、食事や季節によって適度な日光浴(紫外線UV-B)とともに、分子栄養学実践に求められる品質を備えたビタミンD3のサプリメント摂取をお勧めしています。そしてその際、血中濃度が150 ng/mL (374 nmol/L) を超える濃度で報告されているビタミンD過剰症※7、※12を防ぎ、個体差に沿った適切な摂取量と血中濃度を見極めるため、医師が血液検査で数値をモニタリングしながら行うことをお勧めしています。

食事についてのビタミンDを研究した日本の保健所の論文(2023年)でも、がん予防のためには、「食事からのビタミンDだけでは十分でなく、極めて大量のビタミンDが必要である可能性」が報告されています※18

ぜひ、その時、その季節に応じた「自分の個体差」に見合った至適量のビタミンD補給量を、医師とともに科学的に見極めていきましょう。(※分子栄養学は個体差栄養学:成功のカギは自分の “個体差” へのアプローチ

※1 Miyamoto, H.,et al. Determination of a Serum 25-Hydroxyvitamin D Reference Ranges in Japanese Adults Using Fully Automated Liquid Chromatography-Tandem Mass Spectrometry. The Journal of Nutrition, 153(4):1253-1264.(2023)

※2 Jerzyńska, J.,et al. Clinical and immunological effects of vitamin D supplementation during the pollen season in children with allergic rhinitis. Archives of Medical Science, 14(1): 122-131.(2018)

※3 Yip,KH.,et al. Vitamin D3 represses IgE-dependent mast cell activation via mast cell-CYP27B1 and -vitamin D receptor activity. Journal of Allergy and Clinical Immunology, 133(5): 1356-1364,1364.e1-14.(2014)

※4 Anglin, RES .,et al. Vitamin D deficiency and depression in adults: systematic review and meta-analysis. British Journal of Psychiatry, 202:100-107.(2013)

※5 Pludowski, P.,et al. Vitamin D effects on musculoskeletal health, immunity, autoimmunity, cardiovascular disease, cancer, fertility, pregnancy, dementia and mortality—A review of recent evidence. Autoimmunity Reviews, 12(10): 976-989(2013)

※6 Chowdhury, R.,et al. Vitamin D and risk of cause specific death: systematic review and meta-analysis of observational cohort and randomised intervention studies. British Medical Journal, 348: g1903.(2014)

※7 Holick, MF. Vitamin D deficiency. New England Journal of Medicine,357(3):266-281.(2007)

※8 津川直子,他.「2016~2017年および2020年の日本の若い女性のビタミンDステータス:季節変動と、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる変化を含むライフスタイルの影響」. 栄養科学とビタミン学のジャーナル.68(3) : 172-180. (2022)

※9 Osada, T.,et al. Japanese cedar and cypress pollinosis updated: New allergens, cross-reactivity, and treatment. Allergology International, 70(3):281-290.(2021) 

※10 Hewison, M. Vitamin D and the immune system: new perspectives on an old theme. Endocrinology and Metabolism Clinics of North America, 39(2):365-379.(2010)

※11 Liu, PT.,et al. Toll-like receptor triggering of a vitamin D-mediated human antimicrobial response. Science,311(5768):1770-1773.(2006)

※12 Martens, PJ.,et al. Vitamin D’s Effect on Immune Function. Nutrients, 12(5):1248.(2020)

※13 Xu, Y.,et al., The importance of vitamin d metabolism as a potential prophylactic, immunoregulatory and neuroprotective treatment for COVID-19. Journal of Translational Medicine,18(1):322.(2020)

※14 Pittas, AG.,et al. Vitamin D and Risk for Type 2 Diabetes in People With Prediabetes: A Systematic Review and Meta-analysis of Individual Participant Data From 3 Randomized Clinical Trials. Annals of Internal Medicine, 176(3):355-363.(2023)

※15 Sintzel, MB.,et al. Vitamin D and Multiple Sclerosis: A Comprehensive Review. Neurology and Therapy, 7(1): 59-85.(2018)

※16 Balion, C.,et al. Vitamin D, cognition, and dementia : A systematic review and meta-analysis. Neurology, 79(13):1397-405.(2012)

※17 Milaneschi, Y.,et al. The association between low vitamin D and depressive disorders. Molecular Psychiatry, 19:444-451.(2014)

※18 Nanri, A.,et al. Vitamin D intake and all-cause and cause-specific mortality in Japanese men and women: the Japan Public Health Center-based prospective study. European Journal of Epidemiology, 38(3): 291-300.(2023)

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