自分自身の身体を知ろう:Know Your Bodyがなぜ大切か
新年あけましておめでとうございます。
本年が皆さまにとって、よりかけがえのない、健康で豊かな一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
本年も分子栄養学ウェブマガジンをどうぞよろしくお願いいたします。
さっそくですが、みなさんは、健康ですか?
健康とは何か?
新年にあたり、この基本に立ち返って考えてみたいと思います。
WHOの健康の定義
WHO(世界保健機関:World Health Organization)は、健康の定義をその憲章において下記のようにうたっています。
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
「健康とは、単に病気ではない、虚弱ではないというだけではなく、肉体的、精神的、社会的に完全に良好な状態(well-being)である」
例えば風邪を引いて熱が出ると、それだけで自分がやりたかったことや、その日の予定をこなせなくなります。そうするとその日は「不健康」であるかもしれません。そして症状がなくなって「健康」に戻っていく。
病気になる前に予防し健康を増進する一次予防の大切さ
普段、普通に生活しているとその価値に気付きにくく、病気になってはじめてそのありがたみを感じるというのが “健康”かもしれません。しかし、病気になって気付くのではなく、病気になる前に予防し、健康を増進する一次予防の大切さが重要視され、国全体の保健医療の分野でその方針が進められています。
厚生労働省の施策「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」の中ではこう述べられています。
「死ぬ前の数年間を寝たきりや認知症*で過ごす者の割合も決して少なくないのが現状である。このような状況の中で、人生の各段階でそれぞれ、いかに質の高い生活を楽しみ、満足した生涯を送ることができるかが個人の大きな課題となっている。」※1
現実をみるとどうでしょう。厚生労働省から発表された令和2年度の国民医療費は42兆円を超えています。40兆円を超えるのは8年連続とのことです。そこで、厚生労働省は皆さん一人ひとりに健康に生きていただくこと、いかに健康寿命を延ばし、生活の質を向上するか、を目指しています。また、こうも記述されています。
「がんや循環器病などの「生活習慣病」が増加し、「寝たきり」や「認知症*」のように、高齢化に伴う障害も増加している。これらの疾患は生命を奪うだけでなく、身体の機能や生活の質を低下させるものも多く、予防や治療においては、日常生活の質の維持も重要な課題の1つとなっている。こうした生活習慣病の予防、治療に当たっては、個人が継続的に生活習慣を改善し、病気を予防していくなど、積極的に健康を増進していくことが重要な課題となってきている。」※1
つまり、まさに今、私たち一人ひとりの健康でいようとする意識、そしてそれを実行し、自分で自分自身の健康を管理する能力が求められています。分子栄養学(※分子栄養学とは①)は、健康自主管理を行うための理論です。自分自身で自分の健康を守ることを医師とともに各種検査を通して科学的に行っていきます(※血液検査の意義① 血液検査の意義② 血液検査の意義③ 血液検査の意義④)。
健康自主管理 Know Your Body運動
分子栄養学の基本は、医師とともに生命の仕組みの理論を学ぶところから始まります。“自分自身の身体を知ろうKYB(Know Your Body)運動”とは、ライナス・ポーリング博士※2が始めた、自らの身体、生体の仕組みを分子レベルで知り、その仕組みに足る栄養素(分子)を摂ることで、自らの健康を守っていこう、という活動のことです。
分子栄養学では、「健康」こそが、人生にとって最高の価値であると考えています。なぜなら、健康こそが、その人を輝かせる最高の手段であり財産であると考えているからです。
分子栄養学では、自分で自分の健康を守るには、なぜ病気になっていくのか、その仕組みを分子レベルで知る必要があると考えています。
栄養素が繰り広げる動きを、分子レベルで解き明かす
現在、その昔神秘であった生命は、分子たちが繰り広げる複雑かつ秩序だった化学反応(※分子栄養学とは⑤、分子栄養学とは⑦-1)で成り立っていることが次々と読み解かされています。健康でいること、その生命活動において栄養素が繰り広げる動きを、分子レベルで解き明かすのが分子栄養学の本質です。
赤ちゃんでもご高齢の方でも、地球上に存在する生物はすべて、いつも自分の中の環境を生きるのに最適な状態に保とうします。そして私たちの身体、脳を含めた器官や細胞の中身は、生きているうちは常に新しいものに作り替え、同じかたちを保とうとします。その新しいものに作り替えるという時に、良い栄養素を材料として十分に供給していけば、作り替えられる新しい細胞の中身もどんどん良いものになっていくでしょう、というのが分子栄養学の考え方です。
また、分子栄養学では、老化の原因のひとつとして、異化>同化、異化が同化を上回ってしまうことを考えます(※分子栄養学とは⑤)。そこで、十分な分子(栄養素)の濃度を保つことによって異化=同化を保つこと、これがアンチエイジングや身体の萎縮・機能低下を防ぐひとつの基盤となるのでは、と考えます。
健やかな人生のために身体の仕組みを分子レベルで知る
健やかな人生のためには、まず「今の自分」と身体の仕組みを分子レベルで知ることが大切であると分子栄養学では考えます。自分でその仕組みを知ることで、なぜその生活習慣が勧められるのか、なぜその栄養素が必要か、なぜそれが足りないことで病気の原因となり得るのか、そういったことを自分で考える力となります。考えることができれば、それを日常生活という行動に反映するきっかけができます。そして医師の提案を一緒に考えていくことが可能になっていきます。そしてそれを血液・尿検査などの科学的手法をもって繰り返すことで、自分の平常値を見つけること(※血液検査の意義③ 血液検査の意義④)が自分自身で健康を維持増進するというかけがえのない財産となっていくと考えています。
分子栄養学と一緒に未来を描く
分子栄養学を学ぶきっかけは、人それぞれかもしれません。目指す健康もそのレベルも、人それぞれであると思います。ぜひ分子(栄養素)と身体の仕組みを一緒に勉強してみませんか。今を知り、自分の求める健康には何が必要かを知ることによって、未来を描く可能性が広がります。
※1 出典:厚生労働省ホームページ:健康日本21(総論)より一部抜粋 https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/s0.html *認知症:原文では「痴呆」となっていますが、現在では使われない言葉であるため、「認知症」に訂正しています。 ※2 ライナス・ポーリング博士 1954年にノーベル化学賞、1962年にノーベル平和賞を受賞し、「すべての時代を通じて最も偉大な科学者のうちの一人」と称されるアメリカの物理化学者・平和運動家。分子栄養学の創始者の一人です。彼は分子生物学(生物を構成する分子を研究する学問)の先駆者で、タンパク質の立体構造の研究、DNA構造の解明への寄与など、様々な功績を残しました。赤血球中のヘモグロビン分子に酸素が結合するという性質を最初に発見し、解明したのもポーリング博士です。彼は、鎌状赤血球症という病気の背景にヘモグロビン分子の異常が潜んでいることを発見し、「分子病」という病気の概念を新たに確立したことでも知られています。