The Orthomolecular Times

2024.12.16 分子栄養学と免疫の栄養素「自然免疫:好中球の働きとビタミンC」

KYB × FUTURE

日大豊山高校水泳部 元監督 井上敦雄先生「日本で一番最初にプロテインを導入。やるなら徹底的に!」

今回は、水泳名門校として知られる日本大学豊山高等学校水泳部の元監督・井上敦雄先生をお迎えし、KYBグループ代表取締役社長の金子雅希がお話を伺います。

水泳部再興の一助として取り入れた分子整合栄養学

金子
本日は、高校水泳界の名監督として著名な井上先生からお話を伺う貴重な機会をいただき、大変光栄です。井上先生が永年にわたり監督を務められた日大豊山高等学校は、1963 年にインターハイ(全国高等学校総合体育大会)で初優勝を収めてからずっと、国内の高校水泳大会でも常に上位入賞を果たしていることや、OBがオリンピックをはじめとする国際大会へ多数出場していることで有名な、まさに日本の高校水泳界のトップに君臨する水泳名門校ですよね。まずは、数多くのトップスイマーたちを世界に送り出した井上先生が、どのようにして分子整合栄養学と出会われたのかお聞かせください。
井上
あれは今から30 年くらい前に開かれた小学校の同窓会で、級友の髙橋黎子さん(分子整合栄養学ヘルスコーディネーター)と再会したのがきっかけです。当時の日大豊山高校水泳部はインターハイでの成績が伸び悩んでいて、なんとかしてこの状況を打破したいと考えていました。そんなときに髙橋さんから分子整合栄養学のお話を聞いて、「これは水泳部のパフォーマンス向上の助けになるかもしれない!」と思ったんです。
金子
今でこそアスリートに対する栄養アプローチの重要性は誰もが知るところですが、今から30 年くらい前というと、栄養アプローチの必要性がまだまだ認知されていなかった頃ではないでしょうか?
井上
そうですね。おそらくですが、日本で一番最初にプロテインを取り入れたのが、当時の日大豊山高校水泳部じゃないかと思います。KYBグループと出会う前、日本国内でアスリート向けのサプリメントの開発が始まった頃に、水泳部の生徒の親御さんの中にサプリメント会社にお勤めの方がいらして、生徒たちのためにプロテインを差し入れてくださったんです。ただ、当時のプロテインは、味があまり良くなかったり、水に溶けにくくてダマになってしまったりして、生徒たちも次第に飲まなくなっていきました。なので、実はKYBグループで栄養指導を受ける前から、栄養アプローチを取り入れようという動きはあったんです。
金子
スポーツとサプリメントがまだまだ結びついていなかった当時の状況を考えると、まさにスポーツ栄養の先駆けという感じですね。KYBグループがご支援させていただくようになってからは、プロテイン以外にも様々なサプリメントをお勧めしていましたが、選手たちや保護者の皆さん、他の先生方の反応はいかがでしたか?
井上
当時はまだまだサプリメントが一般的ではなかったので、最初はもちろん反発もありました。日大豊山高校水泳部は地方からも優秀な選手を積極的に迎え入れているので、地方出身者用の寮があるんですが、当時その寮の食事を用意してくれていた先生が「自分の食事に文句をつけるのか!」とカンカンに怒りましてね。そこで、金子雅俊先生にご相談をして、部員や保護者、教員たちを集めた勉強会を開いてもらい、「アスリートは必要な栄養素の量が多いから、食事だけで補うのは難しい」ということをようやく理解してもらえました。
金子
当時は、KYBグループとしてもアスリートに対する栄養指導は初めてのことでしたから、父も最新の論文を読み込んで勉強会に臨んだと聞いています。僕が今トップアスリートの方々の栄養アプローチに携わらせていただけているのも、井上先生や日大豊山高校水泳部の皆さんと一緒に歩んできた歴史があるからこそだと思っています。

スポーツ栄養における血液検査の重要性

金子
日大豊山高校水泳部といえば、熱心に血液検査を受けてくださっていたのが印象に残っています。
井上
僕は中途半端なことは嫌いなので、やるなら徹底的にやりたいと思って、1~ 2 ヶ月に1回くらいのペースで血液検査を受けるよう選手たちに勧めていました。当時のインターハイ級の選手のほとんどは、KYBグループの栄養指導を受けていたと思います。
金子
KYBグループの活動が選手たちの活躍の一助になれていたなら嬉しいです。井上先生が思われるに、選手たちの間で血液検査がそこまで浸透した秘訣はなんでしょうか。
井上
選手の立場からすると、血液検査というのはとても説得力があるからだと思います。栄養アプローチは、体感を得るまでに数ヶ月は掛かるじゃないですか。薬と違って即効性がないから、体感を得る前に栄養アプローチをやめてしまうこともあり得る。だから、検査データという客観的な数値でもって今のコンディションを可視化し、その結果に基づいて不足している栄養素を一人ひとり個別にアドバイスしてくれる仕組みがあるからこそ、選手たちも納得して栄養アプローチに取り組むことができるんだと思います。
金子
井上先生にそう仰っていただけると、KYBグループとしても励みになりますね。
井上
長いこと監督をやってきて、高校・大学を含むいろいろな水泳チームの話を耳にしましたが、栄養アプローチといえばどこもプロテインの補給を勧めるくらいのものです。あの頃の日大豊山高校水泳部のように、様々な栄養素を組み合わせた体系的な栄養アプローチを行っているチームは、今でも他にないんじゃないでしょうか。
金子
最近のオリンピック出場選手の9 割以上がなんらかのサプリメントを利用していると言われていますが、その人にとって本来は必要のない栄養素を摂取していたり、必要な栄養素を十分に摂取できていないケースが多く、僕も心を痛めています。KYBグループが行っているような詳しい検査を使った栄養アプローチが、スポーツ界でもっと広まると良いですよね。
井上
成長期の子どもたちがスポーツをする場合はなおさら、血液検査に基づく栄養指導が必要なんじゃないかと思います。僕が高校生を指導していた頃は、選手たちに1日平均15,000m(50mプール150 往復分)くらい泳がせていましたから、「成長過程の子どもたちの身体を壊さないことが何より大切です」と金子先生が仰っていたのを憶えています。
金子
身体が急激に大きくなる成長期は栄養素の消耗が特に激しいので、スポーツをしていないお子さんの場合でも大人以上に栄養ケアが必要ですもんね。成長期はホルモンバランスもまだ不安定ですから、キッズアスリートは身体にダメージが溜まりやすいので、一人ひとりの成長に合わせた栄養ケアを受けられる環境が必要だと僕も思います。
井上
そうですね。僕自身もKYBクラブの一員として、一人ひとりの健康状態を詳しく見てくれるKYBグループの血液検査と栄養相談は気に入っています。
金子
そう仰っていただけてとても嬉しいです!井上先生は今年80 歳を迎えられるとお聞きしましたが、そのご年齢の方ではとても考えられないくらい引き締まったお身体をされていて、一人の人間として尊敬します。
井上
僕はもともと日大豊山高校水泳部のOBで泳ぐのが好きなので、今でも2,000m(50mプール20 往復分)を週6回泳いでいるんですよ。
金子
とってもパワフルですね!井上先生の健康管理の一助にKYBグループがなれているなら幸いです。

スポーツ界の発展のために、指導者の立場から願うこと

金子
スポーツ栄養をもっと発展させていくために、井上先生が大切だと思われるものはなんですか。
井上
血液検査にしてもサプリメント導入にしても、指導者の理解を得ることが大切だと思います。先程もお話ししましたが、栄養アプローチは、薬と違って体感を得るまでに時間が掛かりますから、体感を得る前の段階で栄養アプローチを断念してしまう選手も出てきます。そういった選手を出さないために重要となってくるのが、指導者の理解と協力です。スポーツというのは選手と指導者の信頼関係があってこそ成り立つものですから、指導者の声掛けがあれば、選手たちも「今はまだあまり体感がないけれど、監督がそう言うならもう少し続けてみよう」と思うものです。
金子
僕も過去に、選手自身は栄養アプローチに興味があるけれど、指導者の理解が得られなかったがために100%の栄養サポートができなかった苦い経験があるので、井上先生のお考えに心から同意します。監督やコーチに栄養について正しく理解していただいたうえで、血液検査値という客観的な指標でコンディションを可視化すれば、選手たちも自分が納得したうえで、ポジティブな気持ちで栄養アプローチに取り組むことができますよね。
井上
今後の水泳界を担う若手選手と次世代の指導者たちのために、僕もできることがあれば力になりたいと思っています。
金子
KYBグループとしても、井上先生と一緒に未来のアスリートたちをサポートしていけたらとても嬉しいです。井上先生、今後もどうぞご指導よろしくお願いいたします!本日は貴重なお話をありがとうございました。
今回は、日本大学豊山高等学校水泳部の監督を永年務められた井上敦雄先生に、指導者の立場から見たスポーツ栄養の重要性についてお話を伺いました。今でこそアスリートがプロテイン等のサプリメントを利用するのは当たり前になっていますが、オリンピックに出場するような一流のアスリートであっても、一人ひとりの身体の状態を考慮した最適な栄養ケアを受けられている選手はほんの一握りではないかと思います。今回のお話を通じて、血液検査に基づく個別化栄養アプローチの重要性が日本のスポーツ界に広まっていくことを願っています。

井上 敦雄
いのうえ あつお/日本大学豊山高等学校に進学し、水泳部に所属。東京都高等学校選手権で優勝し、日大豊山高校の名を全国に轟かせた。大学卒業後は母校に教員として赴任し、水泳部の監督に就任。栄養アプローチを取り入れた熱心な指導で、当時成績が伸び悩んでいた水泳部を見事再興し、オリンピックをはじめ国際大会へ出場する選手を多数輩出するほどの水泳名門校へ導いた。

金子雅希
かねこ まさき/英国でスポーツ栄養科学を専攻し、主にアミノ酸の研究を行う。現在は、著名なプロアスリートから成長期のキッズアスリートまで、従来のスポーツ栄養科学に分子整合栄養学を組み合わせた栄養指導を多く手掛ける。2020 年より国士舘大学体育学部附属体育研究所 特別研究員に就任し、専門性に磨きをかけている。

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