The Orthomolecular Times

2024.12.16 分子栄養学と免疫の栄養素「自然免疫:好中球の働きとビタミンC」

KYB × FUTURE

精神科医 塙美由貴先生「女性のパーソナリティ障害には圧倒的に“鉄”です。…栄養療法で劇的に良くなる様子に感動!」

栄養は、現代社会の影を照らす光になる。KYBグループは、国内外の多数のドクターと協力して分子整合栄養学のチカラを社会に届けてきました。今回は、精神科医である塙美由貴先生に、精神科医療における分子整合栄養学の重要性についてお話を伺います。

副作用のないがん治療を模索
その先に見つけたのが分子整合栄養学

金子
まずは、精神科医の道に進んだ経緯を教えていただけますか?
父親一族がドクターファミリーでしたので、医師になることはごく自然な流れでした。なかでも精神分析に興味を持ち、高校生の頃から「精神科医になって精神分析をやりたい」と思っていましたね。愛知医科大学卒業後は同大学精神科の教室に勤務していましたが、当時、精神分析学に理解のある先生が周囲にいらっしゃらなくて…。しばらくして大学病院を退職し、日本の精神分析学の第一人者である小此木啓吾先生に師事しました。小此木先生には実の娘のように親身にご指導いただきました。小此木先生との出会いがなければ、今の私はないと言っても過言ではないほど、かけがえのない恩師です。2001年に小此木先生の下咽頭に腫瘍が見つかって、大学病院でがん治療を受けられました。これが非常につらい治療で、亡くなられた後しばらく経っても、「あれだけの人がなぜあんなにつらい思いをしなければならなかったのか」という思いがずっと消えなくて…。ある日友人に「副作用のないがん治療はないのだろうか」と尋ねたところ、分子整合栄養学を紹介してくれたんです。
金子
このとき初めて分子整合栄養学と出合うわけですね。
はい。副作用の少ないがん治療を探していたその先に、分子整合栄養学を見つけました。よくよく調べてみると、なんとこの療法を始めたのは精神科医。ライナス・ポーリング博士が理論を提唱し、精神科医のエイブラム・ホッファー博士が分子整合精神医学として実践されたと知りました。青い鳥を求めて森を彷徨っていたら、自分の家の庭先にいたんです。
金子
実際の治療に取り入れたきっかけは何でしたか?
勉強を始めて数年が経ったある日、長期間通院していた患者さんが、「休職期間が終わって、2週間以内に復帰しなければ会社をクビになってしまう」という事態に…。藁にもすがる思いでサプリメントをアドバイスしたら、見事に会社復帰できたんです。分子整合栄養学の効果を確信した私は、それから積極的に治療に導入するようになりました。現状、日本の精神科医療は薬物治療に偏ってしまう傾向があります。患者さんが症状を訴える度に薬が増え、多剤併用療法になっていく。すると患者さんは昼頃までフラフラして、仕事も勉強もできない。生活の質が低下するわけです。こうした現状に以前からずっと疑問を抱いていました。分子整合栄養学を活用することで、薬を可能な限り減らすことができます。ホッファー博士が仰ったように、タックスペイヤー(納税者)として生きられるようになる。本当に大きな方法論だと思いました。
金子
薬物治療に偏ってしまう精神科医療の現状を、どのように捉えていらっしゃいますか?
例えば、イタリア人は赤色の洋服を着ている印象がありますが、赤色の洋服を着ているからといってイタリア人とは限らないですよね。精神科医療においても同様で、例えばうつ状態を訴える疾患は、実はうつ病以外にもたくさんあります。そこをきちんと評価しないで安易にうつ病だと診断して薬物を投与することは、非常に残念です。まだ私が駆け出しの頃に小此木先生からよく言われたことは、「“Disorder(ディスオーダー:障害)”と“Trait(トレイト:傾向)”を混同してはいけない」ということ。つまり、Disorderは病気でも、Traitは病気とは言い切れないのです。診断する際に患者さんをもっと多面的に診ていく必要があると思っています。

統合失調症、双極性感情障害、パーソナリティ障害…
すべての精神疾患に有効

金子
どのような症状の患者さんに分子整合栄養学が有効でしょうか?
これはもうすべての精神疾患に有効だと考えています。特に「統合失調症」の患者さんには有効的ですね。1日1錠の薬を寝る前に服用するだけで安定するので、眠気の副作用がほとんどなく、昼間に活動できます。具体的な栄養療法としては、ナイアシンを中心にビタミンB群、ミネラルや鉄、亜鉛等。コレステロールの低い方には、必須脂肪酸の一種、EPAをアドバイスする場合が多いです。また、「双極性感情障害」の患者さんも症状の軽いⅡ型の方なら、薬を使わずにサプリメントだけでコントロールできる場合があります。もう1つ重要なのが「パーソナリティ障害」です。症状が多彩であるため、どうしても多剤併用になってしまいますが、栄養療法によって症状を和らげることができます。例えば、衝動コントロールが悪くなると、非常に怒りっぽかったり、自分を傷つけたりすることがありますが、このようなケースでは、薬よりも栄養療法の方が効果があると感じています。
金子
「パーソナリティ障害」には、どのような栄養療法が有効だとお考えでしょうか?
女性の場合は圧倒的に「鉄」です。血清フェリチン値の低い人は、非常に怒りっぽくなります。パーソナリティ障害に鉄不足による怒りっぽさが加わりますので、症状がより激しくなります。鉄の補充だけで怒りっぽさが大幅に軽減されるケースをたくさん経験しています。ただし、パーソナリティ障害の方は、子どもの頃から養育環境や人間関係に問題を抱えて成長している方が多いので、栄養療法とカウンセリングの併用が必要になってきますね。少なくとも第一選択として、抗精神病薬の投与は間違っていると個人的には思っています。
金子
私も同感です。膠原病内科が専門ですので、パーソナリティ障害を併存している患者さんを多く診ていますが、こういった方々にデパスやSSRIのような薬を投与するのは、その場しのぎの治療にしかならないだろうということは、感覚として認識しています。
新しいタイプの抗うつ薬や抗不安薬は脱抑制を起こす場合がありますので、パーソナリティ障害の方が服用すると悪化することがありますね。
金子
「不眠」の栄養療法についても教えていただけますか?
不眠にはやはりビタミンB群です。服用する量は個人差があるので、症状を見ながら調整していきます。かなりの量のビタミンB群を使うことで、睡眠薬をほぼ使わないレベルにまで持っていける患者さんはたくさんいらっしゃいます。加齢による不眠についても、ビタミンB群が第一選択です。
金子
極力睡眠薬は使わない方がいいのでしょうか?
多少はやむを得ないと思います。例えば、栄養療法を始めてから睡眠の質が改善するのに数ヶ月はかかりますので、その間、頓服としてお使いになるのは良いと思います。栄養療法で病状が改善したら、徐々に薬を卒業していく。これは統合失調症やパーソナリティ障害等、すべての領域で同じことが言えます。必要に応じて薬も併用していくことが大事だと思います。

栄養療法で劇的に良くなる様子に感動!
子どもの未来を守るために、この事実を1人でも多くの方にお伝えしたい

金子
最後にこれから挑戦したいことや未来への想いについてお聞かせください。
「薬を減らしたい」「日常生活をもう少し良くしたい」そう願っている患者さんはたくさんいらっしゃると思います。しかしながら、私のクリニックだけでは診れる患者さんの数が限られてしまいます。金子俊之先生から今回のお話をいただいたとき、「KYB渋谷クリニックに伺うことができれば、今よりもっと多くの患者さんを診ることができ、お役に立てるのではないか」と思い、その場でお引き受けいたしました。今、私がもっとも危惧しているのは、精神科医療の流れとして、子どもに対しても薬の治療が中心になりつつあることです。発育途中の子どもの脳に影響する可能性がある薬を飲ませることに、危機感を強く感じています。私のクリニックには発達障害と診断された子どもたちがたくさん通ってきていますが、栄養療法で劇的に良くなるお子さんがたくさんいます。それはもう感動的です。例えば、初診のときは待合室や診察室を走り回り、叫び声を発していた子どもが、数ヶ月後にはきちんと椅子に座って、私の目を見て話せるようになっていきます。お菓子漬けになっている子どもには、サプリメントに加えて食事療法をしてもらうのですが、子どもは大人以上にしっかり守ってくれます。自分を良くしようと懸命に努力している子どもたちを見ていると、「この子たちを薬漬けにしてはいけない」という思いを新たにします。また、子どもを虐待する母親についても、栄養療法を行うことで衝動コントロールがしやすくなり、育児が改善されていくケースをたくさん経験しています。あとは学校ですね。学校給食や薬に頼ろうとする指導方法など、課題は多々あります。学校の現場にもアクセスできたらと思っています。
金子
私も子どもを持つ身ですので、子どもの将来を見据えてどのような食生活と栄養療法をすべきか、改めて考えさせられる良いきっかけになりました。家族や学校を含めたトータルケアがとても大事ですね。
分子整合栄養学は医療の世界ではまだまだマイナーです。こうした成功事例を1人でも多くの皆さんにお伝えできればと思っています。
金子
分子整合栄養学を取り入れた治療を行い、高い成果を上げている塙先生を当院にお迎えできるのは本当に喜ばしいことです。1人でも多くの患者さんをお救いいただければと思います。本日はありがとうございました。

塙 美由貴
はなわ みゆき/愛知医科大学医学部を卒業後、同大学の精神科に勤務。その後、精神分析学の第一人者である小此木啓吾博士に師事。1996年に小此木啓吾博士を院長に迎え、みゆきクリニックを開設。薬の使用を最小限に抑え、分子整合栄養学とカウンセリングを活用して精神疾患を本質的に改善することを目指し、高い成果を上げている。精神保健指定医。精神神経学会認定医・指導医。精神分析学会認定精神療法医。認定産業医。認定スポーツ医。

金子 俊之
かねこ としゆき/金沢医科大学医学部を卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院のリウマチ膠原病内科に在籍。その後、大学院に進み博士号を取得。内科領域の診療に加え、専門性を活かし関節リウマチ・膠原病の診療を行う。現在、KYB グループの代表取締役医師として、分子整合栄養医学を用いたヘルスケア、医療、研究、教育の4 つの領域を中心に事業展開を行っている。

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