The Orthomolecular Times

2024.11.18 分子栄養学と運動「骨格筋が血糖値を下げる⁉ 運動効果と「GLUT4」の仕組みをわかりやすく解説」

栄養素のお話(基本編)

ミネラルって何?上手なミネラル摂取が分子栄養学的健康のもと

ミネラル欠乏は鉄欠乏による鉄欠乏性貧血など深刻な体調不良を招く

ミネラルは身体で作れないため、必ず外から摂る必要のある5大栄養素の1つです(※5大栄養素(総論))。鉄欠乏で鉄欠乏性貧血(※栄養素不足による貧血改善対策「貧血再検査セット」のススメ)、亜鉛欠乏では味覚障害や亜鉛欠乏性貧血(※貧血:赤血球・ヘモグロビン不足はATP・エネルギー産生不足を招く重大問題)、マグネシウム欠乏では筋肉のけいれん・食欲不振、カリウム不足で食欲不振、無気力、筋力減退など、ミネラルが不足するだけで深刻な欠乏症やさまざまな体調不良の原因となります。ゆえに、ミネラルは必ず適量を摂る必要があります。

至適量のミネラル摂取は医師のモニタリングとともにバランス良く

ミネラルの摂取については、例えば感染症に対する十分な免疫能を確保する際のサプリメントの必要性が指摘されています※1

しかし、ミネラルの摂り過ぎが過剰症による毒性を引き起こすこともあり、その摂取の仕方には十分な注意が必要です。分子栄養学では個体差や病態に沿った至適量を、詳細な血液検査とともに医師のモニタリングの上で摂ることをお勧めしています。 また使用するサプリメントの品質についても、分子栄養学の理論に則った分子栄養学実践のための品質を兼ね備えた、安全性やミネラルバランスなどに十分配慮されたサプリメントを摂取することが必須です(※分子栄養学の歴史④「分子栄養学実践に求められるサプリメントの品質その1」※分子栄養学の歴史⑤「分子栄養学実践に求められるサプリメントの品質その2」)。

ミネラルとは酸素(O)、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)以外の元素の総称

私たちをいちばん小さくすると、原子という小さなつぶつぶでできています。私たちヒト成人において身体の60%を占めるといわれる水も、水素(H) と 酸素(O) という原子でできています。私たちヒトの身体の大部分を占めるのは、多い順に酸素(O)、炭素(C)、水素(H)、窒素(N) の4種類です(※分子栄養学とは②)。

ミネラルとは、この4種類以外の元素※2のうち、身体にとって必須であると証明されている元素の総称です。

ミネラルは無機質ともよばれる

ミネラルは無機質とも呼ばれます。

ミネラルの分類

①主要ミネラル

栄養素(※分子栄養学とは①)として必須であるミネラルのうち、体内に10g以上存在し、1日当たりの摂取量が100㎎以上のものを主要ミネラルといいます。主要ミネラルは多量ミネラルとも呼ばれます。ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、イオウ、塩素があります。

②微量ミネラル

栄養素として必須であるミネラルのうち、1日当たりの摂取量が100㎎未満のものを微量ミネラルといいます。鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、コバルト、フッ素、ケイ素などが挙げられます。

現在、日本人の食事摂取基準2020(厚生労働省)では、主要ミネラル(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン)、微量ミネラル(鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン)の13種類について摂取基準を設定しています。

主要ミネラル・微量ミネラルの主な働き、欠乏状態、過剰症、多く含まれる食品

主要ミネラル、微量ミネラルのそれぞれについて、主な働き、欠乏するとどうなるか、過剰症※3、多く含まれる食品を下記の表にまとめました。身体の中にほんの少し含まれるミネラルですが、足りなくなったり摂りすぎたりするだけで辛い体調不良に陥ることがわかります。

①主要ミネラル(主な働き、欠乏状態、過剰症、多く含まれる食品)

②微量ミネラル(主な働き、欠乏状態、過剰症、多く含まれる食品)

ミネラルに期待される薬理学的作用

分子栄養学では、その栄養素の効果を考える場合、目的に合った至適量を目指すことを第一に考え、ドーズ・レスポンスという考え方を用います。どれくらいの量(ドーズ)を摂れば生体への反応(レスポンス)が現れてくるか、という意味です。ビタミンにおいては、栄養学(※分子栄養学とは①)における欠乏症の概念から離れた薬理学的な作用が期待され(※ビタミン(総論))、解明されているものもあります。ミネラルについても同じく薬理学的作用を期待する場合があります。亜鉛の味覚障害に対する作用、クロムの血糖改善作用などです※4

まとめ

必ず摂る必要のある栄養素、ミネラル。欠乏すると大変な体調不良が起こります。しかし、むやみに量を摂ることで過剰症に陥る心配もされています。ぜひ、血液検査と医師による科学的なモニタリングによって、より良い健康自主管理(※自分自身の身体を知ろう:Know Your Bodyがなぜ大切か)に生かしていきましょう。

※1 Gombart AF.,et al. A Review of Micronutrients and the Immune System–Working in Harmony to Reduce the Risk of Infection. Nutrients, 12(1):236.(2020) 

※2 元素とは
同じ原子の中には質量の違うものがいくつか存在することがありますが、原子の種類としては同じなので、それらを元素と呼んでいます。例えば、水素原子(H)には質量が違うものが3種類あります(陽子の数は同じだが中性子の数がそれぞれ0個、1個、2個のもの)。しかし、すべて性質は同じ「水素」です。この、質量が違うが性質が同じ複数の原子を1つの種類として考える際、「元素」という言葉が使われます。元素とは、原子の種類のことです。

※3 糸川 嘉則 (編).『ミネラルの事典(新装版)』.朝倉書店.(2021)

※4 糸川 嘉則.代替医療としてのビタミン・ミネラル.日本補完代替医療学会誌,1 (1) : 41-52. (2004)

RELATED

PAGE TOP