The Orthomolecular Times

2025.3.31 脂肪を燃焼する分子「カルニチン」を作る必須アミノ酸・ビタミン(C、B6、ナイアシン)、鉄

分子栄養学とは

分子栄養学とは⑦-3「酵素×ビタミン・ミネラル」

酵素とビタミン・ミネラル

「分子栄養学とは⑦」では、3回シリーズで酵素と代謝について考えています。

今回はその3回目、

・酵素とビタミン・ミネラルの重要な関係について

です。酵素とビタミン・ミネラルは、健康にとって切っても切れない重要な関係です。基礎から一緒に見ていきましょう。

まずは酵素が働ける条件について考えます。

酵素がしっかりと働くためには、温度やpHなど重要な条件があります。そして酵素がしっかりと働けるためのもうひとつ重要な条件が、

・補因子(cofactor)

の存在です。そしてこの補因子こそが、栄養素であるビタミン・ミネラルです。

多くの酵素が働くのに、ビタミン・ミネラルといった補因子が必要です。補因子のうち、低分子有機化合物であるものを補酵素と呼びます。補酵素の多くはビタミン由来のものです。

このことからいえることは、補因子であるビタミン・ミネラルがなければ働けない酵素がたくさんあるということです。

分子栄養学ではこの事実に深く着目しています。ある代謝経路に関わる補因子としてのビタミン・ミネラルが充足することで、酵素と代謝経路がスムーズに働くことが可能となり、人の健康増進に役立つのではないかと考えるからです。

※分子栄養学とは⑦-1)  (分子栄養学とは⑦-2

令和の江戸患い!?

この概念が最もわかりやすい例のひとつが、脚気です。

脚気は、「江戸患い」など昔の病気であると考えられていましたが、手軽に美味しく食べやすい食品がたくさん手に入るようになり、現代でも起こり得る病気になっています。

ケーキ、パフェ、かき氷、和菓子。毎日甘いものの話題が取り上げられ、世間には美味しいスイーツやインスタント食品があふれています。

精製された白い小麦粉や砂糖で作られたパンやケーキ、白米だけで作られたおにぎりやおせんべい。砂糖や果糖ブドウ糖液糖がたっぷり入ったジュースやゼリーなど、こういった食品は安くて美味しくて、手軽にすぐエネルギーを補給でき、お腹が満たされるため重宝されます。

しかしこれらの食品ばかりを食べることは、エネルギー源である糖質はたくさん摂れますが、肝心のエネルギー代謝のためのビタミン・ミネラルが足りません。(※5大栄養素(概論)

脚気の場合、ビタミンB1が足りないことによって糖質をエネルギーに変換できない、ということが起こります。そしてその結果、症状として

・全身のだるさ、手足のしびれ、心不全によるむくみ

などが起こり、ひどいときにはお亡くなりになってしまいます。

脚気という病気は、ビタミンB1欠乏で起こります。糖質のいちばん小さな単位(ブドウ糖)をエネルギーに換える代謝経路(解糖系)の補酵素ビタミンB1が欠乏し、その結果、エネルギー(ATPが作れずに病気になってしまいます

エネルギー源である糖質を食べたとしても、ビタミン13種類のうちのほんの1種類ビタミンB1が足りないだけで、こんなに恐ろしい病気にもなり得ます。

分子栄養学と一般の栄養学の違い

一般の栄養学では、ビタミンB1は脚気にならない量が摂れていれば正常、というように考えます。

しかし分子栄養学では脚気という欠乏症にならないビタミンB1の摂取量だけでなく、ビタミンB群全体としての働き、細胞が能力を十二分に発揮できる栄養素の最適な量(至適量)を考えます。

さらに、それらが関わる全身の詳しい代謝経路までを考慮します。全身の健康増進に役立てるには何が必要かを、医師とともに考えます。

もし「最近ちょっと疲れやすいな・・・」という時には、まずご自分の食生活を思い返してみてください。そして自分の代謝を十分に行えるくらいの栄養素が足りているかどうか、思い返してみてください。

ビタミンB1はエネルギー代謝の解糖系やクエン酸回路などの補酵素として重要ですが、その他にも、

・マグネシウム、ビタミンB2、ナイアシン、パントテン酸、鉄

などの栄養素が「解糖系」「クエン酸回路」「電子伝達系」といった一連のエネルギー代謝経路で必須の役割をしています。

また、ビタミンB群はオーケストラのようにそれぞれが相互に関わって働いていくため、分子栄養学では、ビタミンB1単独の摂取ではなく、ビタミンB群をすべて一緒に複合体として摂ることをお勧めしています。

そしてそれを、当てずっぽうで栄養素の量を補給していくのではなく、それぞれの個体差を考慮し、継続的な血液検査などを通しながら、医師と一緒にその方に合った至適量を探します。(※血液検査の意義①

酵素は、代謝を助けてくれるタンパク質でできています。タンパク質が極度に足りないと、その酵素自体を作れない、ということも起こり得ます。

分子栄養学で推奨する血液検査では、タンパク質が足りているか、代謝に必要な酵素は働けているか、ということも医師が科学的な視点で推測していきます。(※血液検査の意義①

まずは定期的な血液検査で今の自分をチェックしてみませんか。そして分子栄養学実践医師とともに、自分に合ったビタミン・ミネラルの摂取量を模索していきましょう。

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