The Orthomolecular Times

2024.12.23 分子栄養学と免疫の栄養素「ビタミン・ミネラル補給と冬の感染症・免疫対策」

身体の仕組み

分子栄養学と免疫の栄養素「ビタミン・ミネラル補給と冬の感染症・免疫対策」

感染症予防のための免疫に、微量栄養素(ビタミン・ミネラル)が複雑に関わっていることをご存じですか。

今回は、ビタミン・ミネラルと免疫の関わりについて一緒に学びましょう。

冬の感染症・免疫対策としての微量栄養素(ビタミン・ミネラル)

2024年12月、マイコプラズマ肺炎・伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)の患者さんの数が例年に比べて増加していることが、厚生労働省から発表されています。インフルエンザの流行期にも入り、冬の感染症対策が求められています※1

感染症対策として分子栄養学が提唱するのが、まず第一に規則正しい生活(バランスの良い食事、適切な運動、良質な睡眠・休養)です。そしてそれに加え、医師によるモニタリングのもと行う詳細な血液検査などをもとにした「個体差に沿った栄養素の補給」を提唱しています。

「免疫と栄養素は関係あるの?」

と思われる方もいらっしゃることでしょう。

今回は、微量栄養素(ビタミン・ミネラル)と免疫システム全体の関係について一緒に学んでいきましょう。

栄養素のわずかな欠乏が適切な免疫反応を損なう可能性

未知のウイルスだった新型コロナ感染症。その対策として、まずは適切な栄養素が適切な免疫を維持するために必須であることが数々の論文で指摘されています※2、※3

栄養素の欠乏が新型コロナウイルス感染症とその重症化、その後の回復具合にも関わる可能性が示され※2、※4、感染症や後遺症を防ぐ免疫を支える手段として、

・適切な栄養管理

が注目されています※5

免疫システムに必要な栄養素を補給することで感染症を予防できる可能性があり、栄養素のわずかな欠乏が適切な免疫反応を損なう可能性があるとするものです※5

その文献によれば、私たちの身体の免疫システムはビタミンやミネラルといった微量栄養素によって繊細に調整されていることが図としてまとめられています。各栄養素は、免疫の全段階で以下のような重要な役割を果たしています※5

免疫システムの第1・第2のバリアに関わる栄養素

免疫は3段階のバリアで守られています。(分子栄養学の栄養素「ビタミンCと免疫」

その3段階のどこにどの栄養素が関わっているか、先ほどの図の一部を簡単にまとめると以下のようになります。

第1のバリアは、皮ふや粘膜という物理的・化学的な防御壁です。この防御壁の構造と機能を維持するために必要な栄養素として、

・ビタミン(A、C、D、E)、亜鉛

が示されています※5。たとえば、病原体(細菌やウイルスなどの異物)が身体に侵入しようとするとき、これらの栄養素が最初の関門の助けとなる可能性が示されています。

第2のバリア(免疫細胞による自然免疫)では、

・免疫細胞の増殖
・免疫細胞の移動
・貪食した異物を破壊するための活性酸素生成

などを高めるために、

・ビタミン(A、B6、B12、葉酸、C、D、E)
・ミネラル(鉄、亜鉛、銅、セレン、マグネシウム)

が必要であることが示されています※5

これらは免疫システムの一例ですが、重要なのは、これらビタミン・ミネラルが不足すると免疫システムの働きが弱まり感染症にかかりやすくなる可能性が考えられることです。この文献では明らかな欠乏だけでなく、わずかな不足でも感染リスクが高まる可能性を指摘しています※5

つまり、バランスの取れた食事でこれらの微量栄養素を十分に摂取することが、強い免疫システムを維持するカギとなる可能性です。

ただしどのくらいの量の栄養素が最適かの研究は、まだまだ進んでいないのが現状です※5

分子栄養学が考える適切な栄養管理の基本は、個体差に沿った異化=同化を目指すこと

それでは、免疫のための適切な栄養管理はどのように行えばよいでしょう。

その答えのひとつとして提案するのが、分子栄養学による個体差栄養学です。

分子栄養学はより良い生活習慣とともに、個体差に沿った至適量の栄養素の補給(摂取・消化・吸収・代謝)による代謝の異化=同化による健康、免疫の調整を目指します。(※代謝=異化×同化

分子栄養学は「個体差」のより深い要因に対してアプローチ

分子栄養学の考える個体差とは、

・ライフスタイル
・ストレスに感じること
・生体内の代謝状態
・胃の状態
・口腔内環境
・腸内環境
・遺伝子多型※6

など、みなさん1人ひとりが違うことを指しています。

分子栄養学の創始者のひとりであるライナス・ポーリング博士は、代謝に必要な酵素と基質の親和性※7の個体差から、ビタミンの必要量にも大きな個体差があることを提唱しています。(※分子栄養学とは⑦-2「酵素の役割」

同じ「ひとり」の中でも、その時置かれた環境、病気の時と健やかな時、ストレスの状態、体調、口腔内環境、腸内細菌叢のバランスまで、全く違う可能性があります。

分子栄養学は、「ひとり」と「ひとり」の間の個体差だけではなく、その一歩先の、「自分の中の個体差」を医師とともに読み解くことにより、より深い要因に向かってアプローチしていきます。その個体差を読み解くツールとして使用するのが、詳細な血液検査や腸内環境検査などです。

※血液検査でわかる!あなたの健康状態
※あなたの腸は大丈夫? リーキーガット症候群(理論編②)

今回のまとめ

感染症が心配される冬。感染症予防、免疫対策に有効な手段のひとつとして考えられているのが微量栄養素(ビタミン・ミネラル)の十分な摂取です。

微量栄養素(ビタミン・ミネラル)が不足すると免疫システムの働きが弱まり、感染症にかかりやすくなる可能性が考えられています。

分子栄養学では、詳細な血液検査・腸内環境検査などに基づき医師のモニタリングのもとで行う、個体差に沿った最適な栄養素の補給を提唱しています。

免疫には十分なタンパク質も必須です。生活習慣を整え、科学的な手段を用いて新しい1年に備えた的確な免疫対策を進めましょう。(※分子栄養学における免疫と栄養素の基本対策①

※1 出典:「感染症情報」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/index.html)(2024年12月16日に利用)

※2 Ali, AM.,et al. (2021).  Skeletal Muscle Damage in COVID-19: A Call for Action. Medicina (Kaunas), 57(4), 372.

※3 Akhtar, S.,et al. (2020). Nutritional perspectives for the prevention and mitigation of COVID-19. Nutrition Reviews, nuaa063.

※4 Filippo, LD.,et al. (2021). COVID-19 is associated with clinically significant weight loss and risk of malnutrition, independent of hospitalisation: A post-hoc analysis of a prospective cohort study. Clinical Nutrition, 40(4), 2420–2426.

※5 Gombart, AF.,et al. (2020). A review of micronutrients and the immune system–working in harmony to reduce the risk of infection. Nutrients, 12(1), 236.

※6 遺伝子多型(polymorphism)とは
親から子へと生物の特徴が受け継がれていくことを遺伝といい、その遺伝情報を伝えるもののことを遺伝子といいます。遺伝子多型とは、一般的に“100人に1人以上”と比較的よくみられる遺伝子の個体差のことです。細かくみると、遺伝子の本体であるDNA(デオキシリボ核酸という物質)の中の 塩基 と呼ばれる物質の並びの違いを指します。この並びの違いが、体質や病気の罹りやすさなどに影響する可能性が考えられています。

※7 基質とは
酵素のはたらきかけで化学反応を起こす物質のことです。その酵素に対して反応を起こすものを、その酵素に対する「基質」といいます。

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