The Orthomolecular Times

2024.12.16 分子栄養学と免疫の栄養素「自然免疫:好中球の働きとビタミンC」

身体の仕組み

分子栄養学の皮ふ(肌)の抗酸化栄養素②「皮ふには抗酸化物質ビタミンC、ビタミンEが存在する」

皮ふ(肌)には抗酸化作用をもつビタミンCやビタミンEが存在することをご存じですか?

皮ふの大きな仕事のひとつは、紫外線や大気汚染など環境のダメージから身体を守ることです※1、※2、※3

皮ふに存在する抗酸化栄養素(ビタミンC、ビタミンEなど)は、紫外線などが引き起こす酸化ストレスから守るために有用であると考えられています※1、※4

今回は皮ふと抗酸化栄養素ビタミンC・ビタミンEの関係について、ヒトが対象になっている研究も一緒に学びましょう。

皮ふ(肌)には抗酸化作用をもつビタミンCが存在する

健康な皮ふにはたくさんのビタミンCが存在しています※1

皮ふに存在するビタミンCは、紫外線によるダメージから皮ふを守るために働く

・水溶性(水に溶ける性質)

の重要な抗酸化物質だと考えられています※1、※4

皮ふに存在するビタミンCの量は、血液中に存在するビタミンCよりもはるかに量が多いため、ビタミンCは積極的に皮ふに蓄積されていると考えられています※1

皮ふに存在するビタミンCは食事として摂取され※4、それが血流などを通して皮ふまで運ばれてきたものです※1。皮ふにあるビタミンCのほとんどは、細胞の中に存在します※1、※5、※6、※7

老化した皮ふ、紫外線照射された皮ふでは、それが原因なのか結果なのかはわかりませんが、ビタミンCが減っていることが報告されています※1、※6、※7、※8、※9。ビタミンCは皮ふの表面(表皮)の方が皮ふの奥の方(真皮)の2~5倍存在していることが示されています※1、※5、※6 。

皮ふ(肌)には抗酸化作用をもつビタミンEが存在する

ビタミンEは人の皮ふ(肌)に最も豊富に存在する

・脂溶性(あぶらに溶ける性質)

の抗酸化物質です※4

ビタミンEは皮ふの細胞のあぶら(脂質)の部分に存在して抗酸化物質として働くと考えられています※3、※4

紫外線は特に、あぶらの一種である不飽和脂肪酸を多く含む “細胞膜” で脂質過酸化反応を引き起こす原因になるといわれます※10。ビタミンEはその細胞膜を「サビ(酸化)」から守る働きをすると考えられています。(※紫外線が起こす酸化ストレスって何?

皮ふを保護するといわれるビタミンEは、食事として摂取され※4血流などを通って皮ふまで運ばれてきたものです※1

紫外線に当たると皮ふ(肌)のビタミンEが減少する

皮ふ(肌)を紫外線(UVA、UVB)にさらした場合、皮ふに存在するビタミンE(α-トコフェロール、γ-トコフェロール)がどうなるかを調べた研究があります。

この研究では、マウスと健康な若い成人(皮ふタイプ II および III、平均年齢 26 ± 3 歳) が対象となっています。太陽光の紫外線(UVA、UVB)を模した光を実際に皮ふにあて、その後角質層(角層。皮膚のいちばん表面の層)のビタミンEがどうなるかを調べました※11

その結果、採取したマウスとヒトの角質層ではどちらもビタミンEが減っていることが示されました※11。ビタミンEは紫外線で起こる活性酸素・フリーラジカル消去のために消費されている皮ふの大切な栄養素であると考えられています※4、※11。(※紫外線が起こす酸化ストレスって何?

紫外線に対するヒトの研究:ビタミンCとビタミンEの組み合わせ

ビタミンCとビタミンEを用いた、紫外線で起こる日焼けについて調べたヒトの研究(下記①~③)を3つご紹介します。

①20人の健康な被験者を2グループ(下記ⒶⒷ)に分けて8日間摂取し、その効果を日焼け反応(最小紅斑量)などで評価。

 Ⓐ1日あたりビタミンC(2g)とビタミンE(d-α-トコフェロール)(1000 IU)
 Ⓑプラセボ

その結果、Ⓑでは日焼け反応が増えたが、Ⓐでは減ったことが示された※12、※13

②40人の健康な被験者を4グループ(下記Ⓒ~Ⓕ)に分け、50日間摂取を行い、その効果を日焼け反応(最小紅斑量)などで評価。

 Ⓒ1日あたりビタミンE(d -α-トコフェロール)(2g)
 Ⓓ1日あたりビタミンC(3g)
 Ⓔ両方のビタミンを摂取(1日あたりビタミンC(3g) とビタミンE(2g))
 Ⓕプラセボ

その結果、ⒸⒹⒻで日焼けがあったのに対し、ⒺのビタミンC(3g)とビタミンE(2g)を両方とも摂取した群で日焼けが顕著に少なかったことが示された※12、※14

③18人の健康な被験者(男性12人、女性6人)が3か月間、

・1日あたりビタミンC(2g)とビタミンE(d –α-トコフェロール)(1000 IU)

を摂取。その結果、飲まないときに比べ、日焼け反応と紫外線(UVB)によるDNA損傷(チミンダイマー)が大幅に減ったことが示された※10、※12

いずれも被験者数が少ないですが、ヒトではこのような研究が報告されています。

ビタミンCとビタミンEは一緒に摂ると効果的

分子栄養学では、ビタミンCとビタミンEを一緒に摂ることをお勧めしています。なぜなら、ビタミンCとビタミンEを一緒に摂ることで相乗効果が生まれる可能性があるからです。

皮ふのサビ(酸化)ダメージを減らすために、ビタミンC・ビタミンEの併用が効果的との報告があります※1。ビタミンCは抗酸化で疲れたビタミンEをリサイクルするのに役立ちます※1、※10

ビタミンCとビタミンEの抗酸化能力を再生するのに役立つ抗酸化物質がグルタチオン(GSH)です※1、※4。ビタミンCとビタミンEを再生して疲れたグルタチオン(GSSG)は、その後グルタチオンレダクターゼ(グルタチオン還元酵素:GR)によって再生されます※3、※15

グルタチオンレダクターゼが働くのに必要なビタミンB2とナイアシンも一緒に摂ることで、さらなる相乗効果を目指しましょう。(※皮ふ(肌)の抗酸化栄養素①「抗酸化酵素と鉄、亜鉛、マンガン、セレン、ビタミンB2」

分子栄養学では、1年を通した皮ふ(肌)を守る紫外線対策の一環として、ビタミンCとビタミンEを一緒に摂ることをお勧めします。

今回のまとめ

皮ふ(肌)に存在するビタミンCとビタミンEを一緒に摂取することは、紫外線の害から皮ふを守る可能性が示されています。

ビタミンCは細胞の水溶性のところで、ビタミンEは細胞膜の脂溶性のところで抗酸化栄養素として働くと考えられています。ビタミンCとビタミンEは、一緒に摂ることで相乗効果が期待されています。

皮ふのもつ抗酸化能力は加齢とともに低下し※3、※16、老化した皮ふは紫外線にさらに弱くなると言われます※3、※16

分子栄養学実践医師のモニタリングのもと、至適量の抗酸化栄養素(ビタミンC、ビタミンE)を補給していつまでも若々しい皮ふを保ちましょう。

※1 Pullar, JM.,et al. (2017). The Roles of Vitamin C in Skin Health. Nutrients, 9(8), 866.

※2 D'Orazio, J.,et al. (2013). UV radiation and the skin. International Journal of Molecular Sciences, 14(6), 12222–12248.

※3 Papaccio, F.,et al. (2022). Focus on the Contribution of Oxidative Stress in Skin Aging. Antioxidants , 11(6), 1121.

※4 Woodby, B.,et al. (2020). Skin Health from the Inside Out. Annual Review of Food Science and Technology, 11, 235–254.

※5 Shindo , Y.,et al. (1994). Enzymic and non-enzymic antioxidants in epidermis and dermis of human skin. Journal of Investigative Dermatology, 102(1), 122–124.

※6 Rhie, G.,et al. (2001). Aging-and photoaging-dependent changes of enzymic and nonenzymic antioxidants in the epidermis and dermis of human skin in vivo. Journal of investigative dermatology, 117, 1212–1217.

※7 McArdle, F.,et al. (2002). UVR-induced oxidative stress in human skin in vivo: Effects of oral vitamin C supplementation. Free Radical Biology and Medicine, 33, 1355–1362.

※8 Shindo, Y.,et al. (1994). Dose-response effects of acute ultraviolet irradiation on antioxidants and molecular markers of oxidation in murine epidermis and dermis. Journal of Investigative Dermatology, 102, 470–475.

※9 Shindo, Y.,et al. (1993). Antioxidant defense mechanisms in murine epidermis and dermis and their responses to ultraviolet light. Journal of Investigative Dermatology, 100, 260–265.

※10 Placzek,M.,et al. (2005). Ultraviolet B-induced DNA damage in human epidermis is modified by the antioxidants ascorbic acid and D-α-tocopherol.  Journal of Investigative Dermatology, 124(2), 304–307.

※11 Thiele, JJ.,et al. (1998). Depletion of human stratum corneum vitamin E: an early and sensitive in vivo marker of UV induced photo-oxidation. Journal of Investigative Dermatology, 110(5), 756–761.

※12 Pérez-Sánchez, A..et al. (2018). Nutraceuticals for skin care: A comprehensive review of human clinical studies. Nutrients, 10(4), 403.

※13 Eberlein-König, B.,et al. (1998).  Protective effect against sunburn of combined systemic ascorbic acid (vitamin C) and d-α-tocopherol (vitamin E). Journal of the American Academy of Dermatology, 38(1), 45–48.

※14 Fuchs, J.,et al. (1998). Modulation of UV-light-induced skin inflammation by D-alpha-tocopherol and L-ascorbic acid: a clinical study using solar simulated radiation. Free Radical Biology and Medicine, 25(9), 1006–1012.

※15 Averill-Bates, DA. (2023). The antioxidant glutathione. Vitamins and Hormones, 121, 109–141.

※16 Poljšak, B.,et al. (2012). Free radicals and extrinsic skin aging. Dermatology Research and Practice, 2012, 135206.

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