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2024.12.2 分子栄養学のヘルシーエイジング「骨格筋を支えるミトコンドリアは新しく生まれ変わる」

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分子栄養学の暑熱対策③「熱ストレスの専門用語:乾球温度、湿球温度とは」

暑い時に気になる湿度。

湿度は暑い夏の熱ストレス対策に影響します。なぜなら暑い環境で湿度が高すぎると、体温を下げるための汗が蒸発しにくくなるからです※1

今回は分子栄養学の熱ストレス対策を考える上で重要な、湿度に関わる用語を一緒に学びましょう。暑さ指数WBGT(湿球黒球温度)を求める際に使われる「乾球温度」、「湿球温度」についてご紹介します。

熱中症警戒アラートは、暑さ指数WBGTを基準に発表される

猛暑の中、ニュースで流れる熱中症警戒アラートは、暑さ指数WBGT(湿球黒球温度)を基準に発表されます※2

暑さ指数WBGTは、「気温、湿度、日射・輻射熱」を考慮して計算された温度の指標です※3。そしてその計算に使われるのが乾球温度、湿球温度、黒球温度です。

これら乾球温度、湿球温度、黒球温度は、天気予報でおなじみの「気温」と何が違うでしょうか。今回はそのうちの乾球温度、湿球温度の2つの意味を探ります。 

乾球温度(Dry-bulb temperature)とは

天気予報で発表される気温は、乾球(かんきゅう)温度ともいいます。

乾球温度は一般的な温度計(乾球温度計)で測る空気の温度のことで、単位は「℃(度)」で表します。 

湿球温度(Wet-bulb temperature)とは

湿球(しっきゅう)温度とは湿球温度計によって示される温度のことです。単位は「℃(度)」で表します。

湿球温度は、主に「湿度の影響」※4を示す温度です。

湿度は暑い夏の熱ストレス対策に影響します。なぜなら暑い環境で湿度が高すぎると、体温を下げるための汗が蒸発しにくくなるからです※1。( ※熱ストレスって何? ) 

湿度とは

それではここで湿度の意味について考えます。湿度とは何でしょう。

湿度とは「空気がどのくらい湿っているか」を表した言葉です※5。水の気体(水蒸気)※6が空気中にどのくらい含まれているかの割合を指しています。

空気が含むことができる水蒸気の量は決まっています。

湿度が0%のときは空気に全く水蒸気がない、カラカラに乾燥している状態です。湿度100%のときは、空気が持てる水蒸気が限界だ、これ以上水蒸気を持てません、というじめじめした状態を指しています。

湿度は0~100%、単位は%で表されます。

湿球温度は、その湿度の影響を主に示す温度です。暑さ指数WBGTを算出する際にいちばん影響を与えるものと捉えられています。

暑さ指数WBGT全体を10とした場合、湿球温度はその7割を占める形で計算されます※4(※日射のある屋外の場合※7)。

湿球温度を示す湿球温度計の仕組み

それではそもそも湿球温度はどのように測られているでしょうか。その仕組みを探っていきましょう。

気温と湿度を求める際に使われるのが乾湿計(乾湿球湿度計)です。乾湿計は乾球温度計と湿球温度計を一緒に並べて測る計器です。

  • 乾球温度計と湿球温度計の示度※11の差(乾球温度から湿球温度を引いた値)
  • 乾球温度計の示度

を用いて気温と湿度を求めることができます。

湿球温度計に使われる温度計そのものは、気温を測る普通の温度計(乾球温度計)と同じものです。ただし、温度計の先端の球の部分(球部。湿球温度計感部)は水を含んだ濡れた布(ガーゼなど)で包まれています。

湿球温度計は「水が蒸発する際は、まわりから熱を奪う」という性質を利用しています。

湿度が低く水がどんどん蒸発できる環境にあると、湿球温度計感部を包んでいる布の水分が蒸発します。その際に熱が奪われるため、普通の気温よりも湿球温度の方が低くなります。

ほとんどの場合において、湿球温度は気温よりも低くなります。なぜなら温度計の球部をくるんだ布の水分が蒸発することによって、湿球温度計が熱を失うからです。 

湿度100%のとき、気温(乾球温度)と湿球温度は同じになる

湿度100%とは、これ以上空気が水蒸気を含むことができないという状態です。湿度100%の状態では湿球温度計感部から水が蒸発しないため、熱も失われず乾球温度と湿球温度は同じになります。

乾球温度計と湿球温度計の示す示度の差が大きくなればなるほど、湿球温度計からたくさんの水が蒸発して熱を奪われた状態であることを示します。そのため、乾球温度と湿球温度の差があればあるほど、湿度は低い、つまり乾燥している状態だと考えられます。

また乾球温度と湿球温度の差が少ないほど、熱が失われなかった=水が蒸発できなかったことを示します。つまり周辺の環境が湿っている=湿度が高いということが考えられます。

湿球温度は、日射の強弱、風速、気温などによっても変化します※8。 

湿度が高すぎると汗が蒸発しにくくなる

暑い時に湿度が高すぎると、汗は蒸発しにくくなります※1

汗をかくことは身体の熱を放散する手段としてとても重要であるため、かいた汗が蒸発できるかどうかは熱ストレスから身を守る際に非常に重要な要因です。( ※分子栄養学による暑熱対策②「暑さで心臓が酷使される!?」

そのため気温だけでなく、湿度の影響を示す湿球温度は熱ストレスを考える際に非常に重要だと考えられています。 

気温が高いときには、同時に湿度が高くなる

気温が高くなるときは、同時に湿度も高くなります※1。気温が1℃上昇するごとに空気のかたまりが7%多い水蒸気を含むことが可能になることが示されています※1、※9

そのため、「温暖化が進む危険性を、熱と湿度の組み合わせとして考える指標「湿球温度」を使用して研究を進めることは理にかなっている」とした研究が発表されています※10

その研究によれば湿球温度35℃がヒトが耐えられる温度の限界だとされています※10。 

湿球温度35℃がヒトが耐えられる限界?

ヒトの身体は湿球温度35℃(湿度100%で気温35℃、湿度50%で気温 約46℃)を越えると環境から熱を受ける側となり、熱の放散ができなくなります。そのため湿球温度35℃の環境にいるだけで深部体温は高くなっていくことが推測されています※1、※10

その論文では、例え健康な人であっても湿球温度35℃で生存できる限界は6時間だろうと推定されています※10

しかしその後、実際に健康な若者が通常の日常生活を送る程度の活動を調べた研究において、湿球温度35℃よりもずっと低い気温が限界である可能性が示されました。その研究によれば、定常状態の深部体温を保てる限界の湿球温度は30~31℃(湿度100%で気温30~31℃、湿度50%で気温 約40℃)であったことが報告されています※1。 

今回のまとめ

湿度は暑い夏の熱ストレス対策に影響します。なぜなら暑い環境で湿度が高すぎると、体温を下げるための汗が蒸発しにくくなるからです※1

その湿度の影響を示す温度が湿球温度です。

ヒトが定常状態の深部体温を保つことのできる限界の温度は、湿球温度35℃と言われてきましたが※10、実際には湿球温度30~31℃ともっと低い可能性が示されています※1

温暖化が進む時代、熱ストレス対策を考える際には気温だけでなく湿度の存在も考慮に入れて対策を講じましょう。そして分子栄養学の提案する栄養素対策とともにしっかり体調管理をしていきましょう。( ※分子栄養学による暑熱対策②「暑さで心臓が酷使される!?」

 

※1 Vecellio, DJ.,et al. (2022). Evaluating the 35℃ wet-bulb temperature adaptability threshold for young, healthy subjects (PSU HEAT Project). Journal of Applied Physiology (1985), 132(2), 340–345.

※2 出典:気象庁ホームページ (https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/heat_alert.html)

※3 「正確には、これら3つに加え、風(気流)も指標に影響します。」※出典:環境省ホームページ (https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_lp.php)

※4 出典:環境省ホームページ (https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_lp.php)

※5 「一般に「湿度」と呼ばれているものは、正確には「相対湿度」といい、相対湿度は水蒸気量とそのとき の気温における飽和水蒸気量との比を百分率で表したものです。」※出典:気象庁ホームページ(https://www.jma-net.go.jp/matsuyama/publication/tenko/tenko201912.pdf)

※6 水蒸気とは、気体になった水のことです。
私たちが普段見るコップの水は液体ですが、コップの水をそのまま置いておくと、時間が経つにつれ自然と中に入っていた水が少なくなります。実はこの減った分は蒸発して気体になっており、その気体になった水を水蒸気と呼んでいます。

※7 堀越 哲美ほか.(2021).生活実感に呼応する相対湿度50%を基準としたWBGTの提案.日本生気象学会雑誌,57(4),117–126.

※8 「平成29年度 オリンピック・パラリンピック暑熱環境測定業務 業務報告書」(環境省)(https://www.env.go.jp/content/900404714.pdf)(2024年9月11日に利用)

※9 Trenberth, KE.,et al. (2003). The changing character of precipitation. Bulletin of the American Meteorological Society, 84, 1205–1218.

※10 Sherwood, SC.,et al. (2010). An adaptability limit to climate change due to heat stress. Proceedings of the National Academy of Sciences of The United States Of America, 107(21), 9552–9555.

※11 示度(しど)とは計器の示す目盛りの数値のことです。乾球温度計の場合の示度は気温を表します。

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