The Orthomolecular Times

2024.9.9 分子栄養学による暑熱対策②「暑さで心臓が酷使される!?」

各種検査について

血液検査の意義③ 個人に合わせた基準値で行う血液検査と健康管理のポイント

会社や医療機関での健康診断で血液検査を受けた際、「基準値の範囲内だから大丈夫」「基準値から外れたD判定で焦ってしまった」と感じたことはありませんか?しかし、基準値の範囲内だからといって安心できるわけではなく、基準値から外れたからといって必ずしも異常であるとは限りません※1、※2
分子栄養学で使用される“個人に合わせた基準値”は、一般的な基準値に当てはまらない場合もあります。
一般の血液検査における基準値と、分子栄養学で重視している“個人に合わせた基準値”の違い、さらに分子栄養学の知見を活かした目安値について一緒に学んでみませんか。

基準値とは?

まず基準値とは、「健常者(病気がない)とされる集団」の全体のデータから、中央の95%が含まれる範囲を統計学的に算出したものです。
血液検査の判断に用いられているものには、基準値(基準範囲)のほかに臨床判断値があります。
血液検査の結果に記載されている基準値には、この95%の下限値と上限値の範囲が記されています。一般的な健康診断などでは、それに従い「基準値の範囲内/範囲外」を判断し、「検査値を判読する基準(めやす)」※1となっています。

上図からわかる通り、全体のデータのうち、いちばん高い方のデータといちばん低い方のデータをそれぞれ2.5%ずつ除き、平均値を挟んだ95%に含まれる範囲を基準範囲(基準値)としています。

基準値は個人の正常値ではない

つまり、健康診断や診療で用いている血液検査の基準値は、個人に合わせた正常の範囲ではなく、一般的なデータから算出した数値になることがわかります。
血液検査の結果を確認して「今回は健康的なデータになっていた」「今回は基準値から外れていた」と捉えていても、それは個人としてのデータではなく、集団としての調整されたデータと照らし合わせての結果となります。

個人に合わせた基準値とは

それでは、一人ひとり個人の平均的な数値は、どのようにして捉えたらいいのでしょうか?ここで分子栄養学においては『個人に合わせた基準値』の考え方が登場します。
分子栄養学では、「誰一人として同じ身体の人間はいない」と考え、個体差を非常に重視します。例えば、同じ性別と年齢層の2人がいたとしても、身長や体重、普段の生活スタイル、腸内環境や体質、ストレスの状態などは決して同じではありません。病気や怪我、ストレスや生活の変化も、個人それぞれの身体に異なる反応をもたらします。
その視点から、分子栄養学では個人の安定した数値を『個人に合わせた基準値』と位置付けています。個体差を捉え、その中で個人それぞれの基準となる数値を継続的・定期的な血液検査を重ねながら導き出していきます※1

基準値には限界がある!?

ここでいったん一般的な基準値の話に立ち戻り、その意味について考えてみましょう。
かつて基準値は「正常値(正常範囲)」と呼ばれていました。しかし、次のようなケースがあるため、「正常」という言葉は誤解や混乱を招く可能性がありました。

  • 95%の範囲内であっても、健康とみなされない
  • 95%の範囲外であっても、「健常者(病気でない)」と判断される

このため、現在では「正常値」に代わり『基準値』という言葉が使われ、「基準範囲」としての意味合いに取って代わられています。同時に、基準値は「正常・異常を区別したり、特定の病態の有無を判断する値ではない」※2と明示されています。そして、基準値から外れていても、他の関連する検査項目や生理的な要因などとともにバランスよく総合的に判断することが行われています。
そして分子栄養学においては、上記の考えに加えて、数値の経時変化、その時の身体の状態などのさまざまな条件を考慮した上で血液検査を判断することを重要視しています。

分子栄養学の目安値とは

さらに分子栄養学には、健康管理を行ううえで適性と思われる参考値が存在します。そしてその数値を『目安値』と呼んでいます。
分子栄養学における目安値は、これまで分子栄養学分野で積み重ねた35万件以上の莫大なデータから導き出した「健康状態を維持・改善するため、必要な代謝を得るための参考値」※3としての意味合いが背景になっています。

分子栄養学では『個人に合わせた基準値』も大切にしつつ、分子栄養学の知見を活かした目安値を参考に、オプティマムヘルス(※分子栄養学とは⑧)実現を目指したいと考えています。

まとめ

一般的な基準値は健常者95%のデータに基づいており、個々の正常値ではありません。一方、分子栄養学では個体差を重視し、個人に合わせた基準値を設けて、さらに、分子栄養学の膨大なデータから導かれる目安値も活用することで、血液検査データから健康状態や栄養状態を読み解いています。
まずは定期的な血液検査を受けて「自分だけの基準値」を探り、分子栄養学の目安値を活用した健康づくりを始めてみませんか。

※1 田内 一民.(2002). 基準値 ・基準範囲の現状と問題.Health evaluation and promotion, 29(6), 36 (1002)-39 (1005).
※2 日本臨床検査医学会ガイドライン作成委員会 編集.基準範囲・臨床判断値,臨床検査のガイドライン JSLM2018.一般社団法人日本臨床検査医学会.12-22. https://www.jslm.org/books/guideline/2018/03.pdf
※3 Arakaki, M., et al. (2021). Personalized nutritional therapy based on blood data analysis for malaise patients. Nutrients, 13(10), 3641.

RELATED

PAGE TOP