The Orthomolecular Times

2024.11.18 分子栄養学と運動「骨格筋が血糖値を下げる⁉ 運動効果と「GLUT4」の仕組みをわかりやすく解説」

栄養素のお話(基本編)

分子栄養学の栄養素:ビタミンB1 ②「ビタミンB1が働くためにはマグネシウムが必要!」

ビタミンB1(チアミン)が補酵素として働くためには、他の栄養素が必要なことをご存じですか?

その答えがマグネシウムです。

ビタミンB1はマグネシウムの助けを借り、まず違うかたちに変換されてからエネルギー産生などに重要な補酵素として働きます。

今回は、私たちが毎日摂取するビタミンB群をさらに活用する方法について一緒に学んでいきましょう。

ビタミンB1(チアミン)が細胞の中で働くかたちとは?

ビタミンB1(チアミン)は酵素の補酵素としてエネルギー代謝経路であるクエン酸回路の一部で働き、効率的なエネルギー産生に役立つビタミンB群のひとつです。(※分子栄養学の栄養素:ビタミンB1 ①「ビタミンB1不足で病気に⁉」

小腸で吸収されたビタミンB1の大部分は、血液に乗って各細胞まで送り届けられます※1、※2。ただし細胞まで運ばれたビタミンB1は、そのままのかたちですぐに働けるわけではありません。

細胞の中に入ったビタミンB1がエネルギー代謝などで活躍できるようになるには、まず働けるかたちに変換される必要があります。その変換されたかたちがTPP(チアミンピロリン酸※3)です。

ビタミンB1は細胞中で、まず活性型であるTPP(チアミンピロリン酸)となり、そのTPPがクエン酸回路などで補酵素として働きエネルギー産生を支えます※1、※4

細胞内でビタミンB1が働き者になるためには、マグネシウムが必要!

そして、ビタミンB1がTPPに変換されるには、ある栄養素が必要です。それが何かご存じですか?

答えはマグネシウムです。

細胞中にマグネシウムがしっかり存在することで、ビタミンB1をエネルギー代謝で活躍するための形態、TPPにかわることができます※5、※6、※7、※8、※9

そのためビタミンB1(チアミン)欠乏症は単にビタミンB1が足りないだけでなく、マグネシウム欠乏の状態である可能性も指摘する論文があります※1、※10

マグネシウムは、解糖系などエネルギー代謝に関わって働く重要なミネラルです。健康を維持するため、ビタミンB群と一緒にマグネシウムを摂ることが大切です。(※エネルギーのための分子栄養学的必須栄養素「解糖系と乳酸とナイアシン・マグネシウム」

ビタミンB1は腸内細菌からも供給される可能性

私たちはビタミンB1を自分たちで合成できないため、必ず食事で補う必要があります。しかし、そのほかにもヒトがビタミンB1を獲得する経路があると考えられています。

そのキーワードが腸内細菌です。ヒトは、大腸にいる腸内細菌からもビタミンB1を供給してもらっていると考えられています※4、※11。ご存じでしたか?

ただしビタミンB1を供給してもらっている量には限りがあります。腸内細菌叢によって合成されるビタミンB群は、人が人生の長い間を健康に生きるためには足りないことを指摘した論文があります※4

腸を整え、ビタミンB群はビタミンB群として、毎日必要な量を食べものや分子栄養学実践に求められるサプリメントから摂りましょう。(※分子栄養学実践に求められるサプリメントの品質その2

ビタミンB1、マグネシウムを多く含む食品

ビタミン B1を多く含む食品としては、

  • 肉類(特に豚肉)
  • うなぎ
  • 魚介類
  • 大豆製品
  • ナッツ類

などがあります。

一方、マグネシウムを多く含む食品には

  • 大豆製品
  • ナッツ類
  • 魚介類
  • 葉野菜
  • 海藻類

などがあります。

精製された白い小麦粉、白米、野菜、果物などの食品からはビタミンB1は期待できないとの報告があります※2。栄養素を含んだ食材を適量摂取し、効率的なエネルギー作りに役立てていきましょう。

ビタミンB群とマグネシウムをしっかり摂って、夏バテに負けない身体づくりを

今回のまとめです。

摂取したビタミンB1をエネルギー産生に必須の活性型TPPに変換するには、マグネシウムが必要です。

分子栄養学では、効率的なエネルギー産生のために8種類のビタミンB群(ビタミンB1・B2・B6・B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン)を一緒に摂取することを推奨しています。

これから暑さが続く季節、夏バテしない身体づくりの基礎として至適量のビタミンB群、マグネシウム摂取を進めていきましょう。

※1 Taryn, J.,et al. (2021). Thiamine deficiency disorders: a clinical perspective. Annals of the New York Academy, 1498(1), 9-28.

※2 Hrubša, M., et al. (2022). Biological Properties of Vitamins of the B-Complex, Part 1: Vitamins B1, B2, B3, and B5. Nutrients, 14(3), 484.

※3 チアミン二リン酸ともいいます。

※4 Peterson, CT., et al. (2020). B Vitamins and Their Role in Immune Regulation and Cancer. Nutrients, 12(11), 3380.

※5 チアミンピロホスホキナーゼ(TPK)という酵素の補因子としてマグネシウムが必要です。

※6 Piuri, G.,et al. (2021). Magnesium in Obesity, Metabolic Syndrome, and Type 2 Diabetes. Nutrients, 13(2), 320.

※7 Maguire, D.,et al. (2018). The role of thiamine dependent enzymes in obesity and obesity related chronic disease states: A systematic review. Clinical Nutrition ESPEN, 25, 8-17.

※8  Yamauchi, T.,et al. (2005). Roles of Mg2+ in TDP-dependent riboswitch. FEBS Letters, 579(12), 2583-2588. 

※9 Sechi, G.,et al. (2007). Wernicke’s encephalopathy: new clinical settings and recent advances in diagnosis and management. Lancet Neurology, 6(5), 442-455.

※10 Traviesa, DC. (1974). Magnesium deficiency: a possible cause of thiamine refractoriness in Wernicke–Korsakoff encephalopathy. Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry, 37, 959-962.

※11 野坂 和人ほか.(2015).ヒト大腸上皮細胞膜に存在するチアミンピロリン酸トランスポーター.ビタミン,89 (9), 459-461.

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