The Orthomolecular Times

2024.11.18 分子栄養学と運動「骨格筋が血糖値を下げる⁉ 運動効果と「GLUT4」の仕組みをわかりやすく解説」

栄養素のお話(基本編)

UV-Bの減る日本の冬、免疫のための分子栄養学的ビタミンD摂取のススメ

免疫と炎症における分子栄養学的アプローチの目的

分子栄養学における免疫と炎症における栄養素によるアプローチの目的は、
① 免疫を助けバリア機能を維持させる
② 過剰な炎症を防ぐ
③ 傷んだ組織を修復するための材料を供給する
の3つです。分子栄養学的免疫対策で重要視される栄養素は、タンパク質、グルタミン、ビタミンC、プレバイオティクス・プロバイオティクス、ビタミンD、ビタミンA、鉄、亜鉛、ビタミンB群などです。詳しくは※分子栄養学における免疫と栄養素の基本対策①※分子栄養学における免疫と栄養素の基本対策② をご覧ください。

そして、その中でも冬に気になる栄養素がビタミンDです。

皮ふでビタミンDをつくる紫外線(UV-B)の量は秋、冬、春に減少する

分子栄養学的免疫対策に欠かせない栄養素のひとつ、ビタミンD。ヒトがビタミンDを獲得する方法は3つ、食事(鮭などの魚、天日干しのしいたけなど)、太陽光の直射日光(紫外線UV-B)が皮ふに直接当たること、栄養補助食品(ビタミンD3のダイエタリー・サプリメント)の活用です。※13

ビタミンDは、肌に直接太陽光(紫外線UV-B)が当たることで作られますが、地球の北半球に位置する日本では、秋頃から春にかけてUV-Bの量が少なくなってしまいます。

気象庁による紫外線の観測成果、日積算UV-B量の月平均値(北海道札幌、茨城県つくば、沖縄県那覇)

気象庁による紫外線の観測成果、日積算UV-B量の月平均値(北海道札幌、茨城県つくば、沖縄県那覇)の参照値※5と直近1年間の値(2023年現在)は、以下のようになります。札幌、那覇の観測は2018年1月をもって終了しているため、2017年のデータを示しています。

観測地点:札幌(北海道)における日積算UV-B量の月平均値※6

(単位 kJ/m²)
札幌 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
参照値(1994-2008年) 2.02 4.15 7.69 12.18 16.82 21.29 22.03 19.96 14.04 7.28 3.03 1.70
2017年 1.99 4.38 8.28 12.46 18.70 20.01 22.68 21.44 13.44 7.58 2.76 1.61

観測地点:つくば(茨城県)における日積算UV-B量の月平均値※7

(単位 kJ/m²)
つくば 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
参照値(1994-2008年) 5.37 8.11 11.63 16.36 19.63 19.83 23.56 23.14 16.51 11.01 6.72 4.80
2022年 5.63 8.88 13.17 18.28 20.09 25.11 27.04 25.33 19.17 11.62 7.73 5.16

観測地点:那覇(沖縄県)における日積算UV-B量の月平均値※8

(単位 kJ/m²)
那覇 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
参照値(1994-2008年) 10.10 13.15 17.27 21.86 24.77 29.14 34.20 31.43 27.18 19.41 13.37 10.25
2017年 10.58 13.56 17.06 21.08 23.02 26.36 36.88 34.66 26.89 20.74 12.72 10.07

秋~春のUV-Bの減少に限らず、日焼け止めクリーム、肌の色もビタミンD不足の要因に

紫外線のうち、UV-Bは窓のガラス越し、日焼け止めクリーム、日傘や服などでも遮られてしまいます。また、皮ふの色が明るい人よりも、日焼けをしたこんがり肌など色素の沈着が濃い方がビタミンD生成能力が減少することがわかっています※9 、※10

ビタミンDは免疫と炎症のバランスを調整し、抗菌ペプチド産生を促して身体を守る

ビタミンDは、新型コロナ感染症において、身体の中に侵入してきた病原体(※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」)から身を守ろうと働く自然免疫、獲得免疫(※免疫を司る白血球「白血球の仲間たちの基礎」)のバランスを調整し、その両方の炎症性サイトカインを抑制、免疫が過剰に働きすぎないように調整してくれるとの報告があります※9。また、ビタミンDは、抗菌ペプチド「カテリシジン」と「ディフェンシン」の産生を促し、直接ウイルスなどの病原体を殺菌、抗菌することで身体を守ることも知られています※9

20世紀初頭のインフルエンザ大流行では、UV-B放射量が致死率を減らしたという報告

1918~1919年、全世界で4千万~5千万人の方の命が奪われたとされるインフルエンザ世界的大流行(パンデミック)※11。その際のアメリカの記録を用いて、太陽光の紫外線UV-B量をビタミンDの指標として調べた研究があります。それによれば、紫外線UV-Bの放射量が肺炎と致死率、感染率を減らした可能性が明らかとなっています※9、※12

感染症の流行る冬、春の花粉症に備えて、血液検査で万全のビタミンD対策を

紫外線UV-B放射量の減る日本の冬。健康な日本人の98%がビタミンD不足であるとする報告もあります※1

感染症の流行る冬、ビタミンDの合成・活性化に必須の栄養素マグネシウム※2、※3、※4※ミネラルって何?)を含む分子栄養学の食事とともに(※食事の基本)、血液検査による医師のモニタリングと分子栄養学実践に求められる品質を兼ね備えたビタミンD3のサプリメントを用い(※分子栄養学の歴史④分子栄養学の歴史⑤)、自分に合った至適量のビタミンD補給方法を確認することをお勧めします。食事や日光浴だけでは十分なビタミンDの補給が難しいため、サプリメントが必要であるとする論文もあります※13

よく食べ、よく動き、よく休み、食生活を含めた生活習慣を整えて万全のビタミンD対策、そして分子栄養学的免疫対策で、素敵な年末年始を迎えましょう。(※分子栄養学における免疫と栄養素の基本対策①※分子栄養学における免疫と栄養素の基本対策②

※1 Miyamoto, H.,et al. Determination of a Serum 25-Hydroxyvitamin D Reference Ranges in Japanese Adults Using Fully Automated Liquid Chromatography–Tandem Mass Spectrometry. Journal of Nutrition, 153(4):1253-1264.(2023)

※2 Uwitonze, AM.,et al. Role of Magnesium in Vitamin D Activation and Function.  Journal of Osteopathic Medicine, 118(3):181-189.(2018)

※3 Dai, Q.,et al. Magnesium status and supplementation influence vitamin D status and metabolism: results from a randomized trial. American Journal of Clinical Nutrition, 108(6):1249-1258.(2018) 

※4  Piuri, G.,et al. Magnesium in Obesity, Metabolic Syndrome, and Type 2 Diabetes. Nutrients, 13(2):320.(2021)

※5 参照値: 世界平均のオゾン量の減少傾向が止まり、オゾン量が少ない状態で安定していた期間(1994~2008年)の平均的なUV-B量の状況を示します。出典:気象庁ホームページ(https://www.data.jma.go.jp/env/uvhp/uvb_monthave_tsu.html)

※6 出典:気象庁ホームページ
(観測地点:札幌、https://www.data.jma.go.jp/env/uvhp/uvb_monthave_sap.html)

※7 出典:気象庁ホームページ
(観測地点:つくば、https://www.data.jma.go.jp/env/uvhp/uvb_monthave_tsu.html)

※8 出典:気象庁ホームページ
(観測地点:那覇、https://www.data.jma.go.jp/env/uvhp/uvb_monthave_nah.html)

※9 Xu, Y.,et al., The importance of vitamin d metabolism as a potential prophylactic, immunoregulatory and neuroprotective treatment for COVID-19. Journal of Translational Medicine,18(1):322.(2020) 

※10  Harris, SS. Vitamin D and African Americans. Journal of Nutrition, 136(4):1126–1129.(2006)

※11 World Health Organization. Ten things you need to know about pandemic influenza (update of 14 October 2005). Weekly Epidemiological Record, 80(49-50):428-431.(2005)

※12 Grant, WB.,et al. The possible roles of solar ultraviolet-B radiation and vitamin D in reducing case-fatality rates from the 1918–1919 influenza pandemic in the United States. Dermato-Endocrinology, 1(4): 215-219.(2009)

※13 Holick MF. Vitamin D deficiency. New England Journal of Medicine,357(3):266-281.(2007)

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