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2024.11.18 分子栄養学と運動「骨格筋が血糖値を下げる⁉ 運動効果と「GLUT4」の仕組みをわかりやすく解説」

食事

分子栄養学の食事「食品中のオメガ3(n-3系)脂肪酸、オメガ6(n-6系)脂肪酸」魚介類・肉・卵・油脂類 編

今回の記事では、普段食べている食品【魚介類・肉・卵・油脂類】の1食分に、どのくらいのオメガ3(n-3系)脂肪酸(以下、オメガ3脂肪酸)、オメガ6(n-6系)脂肪酸(以下、オメガ6脂肪酸)が含まれているかがわかります※1。ぜひ毎日の健康的な分子栄養学の食事に、オメガ6脂肪酸の量の適正化、オメガ3脂肪酸の十分な摂取にお役立てください。(※食事の基本※EPA・DHAの効果を上げる:分子栄養学的に考える適切なオメガ6(n-6系)量とは?※分子栄養学的な抗炎症対策には毎日のEPA・DHA摂取を!※全身の分子栄養学的抗炎症のカギを握るオメガ3(n-3系)脂肪酸

この記事では、オメガ3脂肪酸としてα-リノレン酸、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、オメガ6脂肪酸としてリノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸を扱っています。(※表中の「Tr」は、「微量」を意味しています。食品中にその成分が含まれてはいるが、最小記載量に達していないことを示しています。)

【魚介類・肉・卵・油脂類】の1食分に含まれるオメガ3(n-3系)脂肪酸、オメガ6(n-6系)脂肪酸の量

① 魚介類に含まれるオメガ3(n-3系)脂肪酸、オメガ6(n-6系)脂肪酸の量

オメガ3(n-3系)脂肪酸 オメガ6(n-6系)脂肪酸
食品 1食分(g) α-リノレン酸(mg) EPA(mg) DHA(mg) リノール酸(mg) γ-リノレン酸(mg) アラキドン酸(mg)
さんま(皮つき、生) 中1匹(可食部100g) 280 1500 2200 300 29 98
さば(マサバ、生) 切り身大(100g) 120 930 1400 200 30 220
いわし(生) 中2匹分(可食部100g) 59 780 870 92 17 100
あなご(蒸し) 1人前(80g) 20 608 408 50 4 79
アトランティックサーモン(皮なし、生) 刺身7切れ(105g) 840 420 620 2625 0 62
まあじ(生) 中1尾分(可食部80g) 13 208 384 22 0 30
秋鮭(白鮭、天然、生) 切り身大(80g) 22 192 368 30 0 10
牡蠣(生) 中3個(60g) 16 138 108 13 2 17
イカ(剣先イカ、生) 刺身1人前(60g) Tr 31 84 0 Tr 11
タコ(みずだこ、生) 刺身1人前(50g) Tr 35 55 1 0 15
たら(まだら、生) 切り身大(100g) Tr 24 42 1 0 4
あさり(缶詰、身、水煮) 1/4缶(21g) 1 17 18 2 8
ホタテ(貝柱、生) 中2個(40g) Tr 10 9 0 0 2
バナメイえび(生) 2尾(40g) 1 14 16 19 0 5

② 肉類・卵類に含まれるオメガ3(n-3系)脂肪酸、オメガ6(n-6系)脂肪酸の量

オメガ3(n-3系)脂肪酸 オメガ6(n-6系)脂肪酸
食品 1食分(g) α-リノレン酸(mg) EPA(mg) DHA(mg) リノール酸(mg) γ-リノレン酸(mg) アラキドン酸(mg)
ラムロース肉(脂身つき) 1食分(120g) 300 20 16 612 0 29
鶏むね肉(皮つき) 1食分(120g) 91 6 19 1020 0 42
鶏卵(全卵) 1個(55g) 16 0 40 605 0 94
鶏むね肉(皮なし) 1食分(120g) 29 4 14 324 0 32
豚もも肉(脂身つき) 1食分(120g) 28 2 8 708 0 78

③ 油脂類に含まれるオメガ3(n-3系)脂肪酸、オメガ6(n-6系)脂肪酸の量

(※比較しやすいように、油脂類はすべて大さじ1で計算してあります。)

オメガ3(n-3系)脂肪酸 オメガ6(n-6系)脂肪酸 オメガ9(n-9系)脂肪酸
食品 1食分(g) α-リノレン酸(mg) EPA(mg) DHA(mg) リノール酸(mg) γ-リノレン酸(mg) アラキドン酸(mg) オレイン酸
あまに油 大さじ1(12g) 6840 0 0 1680 0 0 1800
えごま油 大さじ1(12g) 6960 0 0 1440 0 0 1920
たら肝油 大さじ1(12g) 56 1560 744 80 11 34 1440
なたね油 大さじ1(12g) 900 0 0 2280 0 0
大豆油 大さじ1(12g) 732 0 0 6000 0 0
米油 大さじ1(12g) 144 0 0 3840 0 0
とうもろこし油 大さじ1(12g) 91 0 0 6120 0 0
ごま油 大さじ1(12g) 72 0 0 792 0 0
綿実油 大さじ1(12g) 41 0 0 6480 0 0
ラード 大さじ1(12g) 55 0 0 1068 0 12
バター 大さじ1(12g) 34 0 0 204 0 13

「たら(鱈)」は魚だがオメガ3が少ない⁉ 小さな青魚はEPA・DHAの宝庫

上記の表を見てみると、同じ魚でも、たら(鱈)にはEPA・DHAが少なく、さんま、さば、いわしなどの天然の青魚にEPA・DHAが多いことがわかります。また、近代的な手法で育てられる養殖魚は、食べるエサによって天然魚よりもEPA・DHAが減少することを報告する論文がありますが※2、実際、養殖アトランティックサーモンの身(筋肉部分)と肝臓に含まれる脂質(オメガ3:オメガ6比)は、エサとなる植物性の飼料に含まれるオメガ3:オメガ6の比によって変わることが示されています※3

今回の表に記載されている数値は『日本食品標準成分表2020年版(八訂)脂肪酸成分表編』をもとに、1食分ごとのグラムに換算し直したものです。これらを見ると、『日本食品標準成分表2020年版(八訂)脂肪酸成分表編』を作成する際に調べられたアトランティックサーモンは、オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸、EPA、DHA)も多く含まれていますが、それとともにオメガ6脂肪酸(リノール酸)も多く含まれていることがわかります。それに対し、秋鮭(白鮭、天然)は、オメガ3脂肪酸(EPA・DHA)が多く、オメガ6脂肪酸(リノール酸)は少ないことがわかります。

植物油脂では、あまに油・えごま油がオメガ3(α-リノレン酸)の宝庫

上記の表の中では、植物油脂ではあまに油、えごま油のみが、オメガ6脂肪酸(リノール酸)に比べ、オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)の比率が群を抜いて高いことがわかります。

こうやって各食品に含まれる数値を比べてみると、オメガ3脂肪酸であるEPA・DHAを多く含む魚介類、α-リノレン酸を多く含む食品は非常に限られていることがわかります。少し価格は高いかもしれませんが、あまに油、えごま油、そして魚介類を毎日食べましょう、とお勧めされているのがこの理由です※4

良いあぶらを選んで抗炎症対策:適正なオメガ6脂肪酸の量、至適量のオメガ3脂肪酸の量のススメ

ぜひ毎日の食事で賢く良い脂質を選び、分子栄養学に基づく栄養アプローチをさらに効果的なものにしていきましょう。分子栄養学の重要な5大栄養素、脂質(※食事の基本※5大栄養素(概論))を構成する栄養素、脂肪酸は、オメガ3脂肪酸:オメガ6脂肪酸の比の是正による抗炎症効果が期待されています。分子栄養学では、魚介類が苦手な方は、分子栄養学実践に求められる品質を兼ね備えた栄養補助食品(ダイエタリー・サプリメント)を上手に利用することをお勧めしています。(※EPA・DHAの効果を上げる:分子栄養学的に考える適切なオメガ6(n-6系)量とは?※分子栄養学的な抗炎症対策には毎日のEPA・DHA摂取を!※全身の分子栄養学的抗炎症のカギを握るオメガ3(n-3系)脂肪酸※分子栄養学の食事「食品中のオメガ3(n-3系)脂肪酸、オメガ6(n-6系)脂肪酸」種実類・豆類・乳類 編 では、種実類・豆類・乳類にどのくらいのオメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸が含まれているかが掲載されています。ぜひ毎日の食卓の確認にお役立てください。

※1 日本食品標準成分表2020年版(八訂)脂肪酸成分表編より、小数第一位を四捨五入して算出

※2 Simopoulos, A.P. The importance of the ratio of omega-6/omega-3 essential fatty acids. Biomedicine & Pharmacotherapy, 56(8):365-379.(2002)

※3 Katan T.,et al. Effect of plant-based diets with varying ratios of ω6 to ω3 fatty acids on growth performance, tissue composition, fatty acid biosynthesis and lipid-related gene expression in Atlantic salmon (Salmo salar). Comparative Biochemistry and Physiology Part D: Genomics and Proteomics,30:290-304.(2019)

※4 魚介類の中でも、マグロ、クジラ、キンメダイ、メカジキなどについては水銀が含まれるため、妊婦さんは食べ方に適切な量とバランスへの注意が必要です。

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