The Orthomolecular Times

2024.11.18 分子栄養学と運動「骨格筋が血糖値を下げる⁉ 運動効果と「GLUT4」の仕組みをわかりやすく解説」

各種検査について

血液・尿検査の意義⑤「基本検査K-01 Ⓕビリルビン」

分子栄養学(※分子栄養学とは①※分子栄養学の歴史①)の基本ツールとして利用されるのが血液と尿の検査セット(K-01)です(※血液検査の意義①※血液検査の意義②※血液検査の意義③※血液検査の意義④)。69項目の詳細な血液・尿検査項目の内容を、関連する項目ごとに簡単に記述しています。(※血液・尿検査の意義①「基本検査K-01 Ⓐ血清タンパク質」※血液・尿検査の意義②「基本検査K-01 Ⓑ酵素」※血液・尿検査の意義③「基本検査K-01 Ⓒ糖・脂質代謝、Ⓓ腎機能・電解質」※血液・尿検査の意義④「基本検査K-01  Ⓔ血球」

今回は第5回、 Ⓕビリルビン の関連項目についてです。項目としては、T-Bil(総ビリルビン)、D-Bil(直接ビリルビン:抱合型ビリルビン濃度)、I-Bil(間接ビリルビン:非抱合型ビリルビン濃度)があります。

Ⓕ ビリルビン

このビリルビン関連項目では、胆汁※1の産生や分泌障害、溶血亢進(※血液・尿検査の意義④「基本検査K-01  Ⓔ 血球」)はないかを確認します。

赤血球中のヘモグロビンが代謝されてできたものがビリルビン

ビリルビンは、赤血球(※血液・尿検査の意義④「基本検査K-01  Ⓔ 血球」)の中に存在するヘモグロビン(Hb:Hemoglobin)(※血液・尿検査の意義④「基本検査K-01  Ⓔ 血球」)などの構成成分、ヘムの代謝産物です。

正常な赤血球の寿命は約120日といわれます。傷付いた赤血球は寿命を待たずに、寿命を迎えて古くなった赤血球は約120日で脾臓などで壊され、役目を終えます。

赤血球が壊されるにあたり、その中にあるヘモグロビンも一緒に壊されます。そのヘモグロビンが代謝(※分子栄養学とは⑤)されてできたものがビリルビンです。代謝産物であるビリルビンは、アルブミン(※血液・尿検査の意義①「 基本検査K-01 Ⓐ血清タンパク質」 )というトラックに乗せられ、まず肝臓まで運ばれます。

ビリルビンが肝臓で代謝されたものが直接ビリルビン(抱合型ビリルビン)

運ばれた先の肝臓では、ビリルビンはグルクロン酸という物質とくっつき、水に溶けやすい捨てられやすい形に変えられます。これをグルクロン酸抱合※2といいます。このグルクロン酸抱合を受けた形が、直接ビリルビン(抱合型ビリルビン)です。直接ビリルビンは、肝臓で常に作られている胆汁の成分になります。

その後、直接ビリルビンを含んだ胆汁は、胆管という通り道を通って十二指腸(胃とつながっている小腸のはじめの部分)に出て、最終的に便に捨てられていきます。

直接ビリルビンの値が上昇するのはどんなとき?

この一連の流れの中で、胆汁を作るはずの肝臓の働きが悪くなったり(肝炎・肝硬変など)、胆汁が作られて十二指腸に届くまでのどこかの部分で胆汁がうっ滞※3すると、胆汁が血中に逆流してしまい、直接ビリルビンの値が上昇します。胆汁のうっ滞は、結石やがんなどによって胆汁の通り道がふさがれてしまうことなどで起こります。

間接ビリルビンとは、総ビリルビンから直接ビリルビンを引いた差のこと

間接ビリルビンとは、総ビリルビンから直接ビリルビンを引いた差のことです。肝臓で抱合が追いつかないほど多くの赤血球が次々と壊れてしまうと(溶血亢進(※血液・尿検査の意義④「基本検査K-01  Ⓔ 血球」 ))、肝臓で処理できないビリルビンが増え、間接ビリルビンが高値となります。酸化ストレス※4亢進、抱合障害(抱合がうまくいかないこと)などで上昇します。

<ビリルビンに関する検査項目>

T-Bil(総ビリルビン)、D-Bil(直接ビリルビン:抱合型ビリルビン濃度)、I-Bil(間接ビリルビン:非抱合型ビリルビン濃度)

※1 胆汁とは
胆汁は、肝臓の細胞で常につくられている物質です。薬品、毒素、コレステロールなどを排泄したり、脂質の消化・吸収を助けるという消化液としての役割も担います。主な成分は胆汁酸、コレステロール、ビリルビンなどです。胆汁に含まれるビリルビンは黄色の色素であるため、胆汁が逆流し血液中の濃度が高くなりすぎると、ビリルビンが粘膜や皮ふに沈着し、白目の部分や肌が黄色くなります。これが黄疸です。

※2 抱合とは
生体内における抱合とは、要らなくなった薬物などを水に溶けやすくするための代謝のひとつです。薬物やビリルビンなど体外に捨てるべきものに、グルクロン酸やグルタチオンなどの物質をくっつけて(付加して)、毒性が少なく水に溶けやすい性質にかえ、尿や胆汁に排泄させやすくします。

※3 うっ滞とは
うっ滞とは、ふさがって滞る(とどこおる)ことを意味します。

※4  酸化、還元(酸化還元反応)、酸化ストレスとは
酸化とは、正しくは①酸素と結合する反応、②水素が奪われる反応、③電子(e)が奪われる反応のことです。その逆を還元といいます。酸化反応は生体にとって必要ですが、起こりすぎると細胞を傷つけ、病気のもとになってしまうと考えられています(フリーラジカル説)。その対策として、身体の酸化を防ぎ、もともと還元する能力の高い抗酸化栄養素が十分にそばにあれば病気は起こらないのではないか、とポーリング博士はビタミンCをはじめとする抗酸化栄養素の必要性を考えました。酸化と還元(もとに戻すこと)のバランスが崩れ、酸化が進んでしまうことを酸化ストレスといいます。生体を酸化するものとして、フリーラジカル、活性酸素が挙げられます。(※エンジオール基が世界を救う「ビタミンCの底力」

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