The Orthomolecular Times

2024.12.16 分子栄養学と免疫の栄養素「自然免疫:好中球の働きとビタミンC」

妊娠前・妊娠中・産後

ご存じですか? 若い世代でもみられる尿失禁②(尿失禁の主なタイプ)

尿失禁は病気です。早期に発見し、そのタイプごとにしっかり対処すれば、改善の余地が見込まれています※1※ご存じですか? 若い世代でもみられる尿失禁①)。まだまだわかっていないことの多い尿失禁ですが、ぜひ今理解されている病気と身体の仕組みを知って予防を目指し、改善できるものはしっかりと改善し、一緒に人生100年時代のQOLの向上を目指しましょう。今回は、尿失禁についてお届けする第2回、尿失禁のタイプなどについてです。 

尿失禁の主な4つのタイプ

尿失禁には、主に4つのタイプがあります※7。自分の症状の主なタイプを知ることで、適切な対応策、治療方法が変わります※1

①腹圧性尿失禁(SUI)

おなかに力を入れたときに起こります。女性に最も多いタイプといわれています。せき・くしゃみ※1、階段の昇り降り、テニス・ゴルフ・ジョギングなどのスポーツ、大笑いする、子どもを抱っこする、重い荷物を持とうとするときなどに起こります。

●主な原因と考えられているもの:骨盤底筋の衰え(肥満、加齢、女性は妊娠・出産など)、外尿道括約筋の衰え※1など(※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策①(骨盤底筋、コラーゲン編)

②切迫性尿失禁(UUI)

急に強い尿意をもよおし(尿意切迫感といいます)、トイレに急ぐが耐えきれずにもれてしまいます。冷たい水で手を洗う、冷たいものに触る、トイレに入って下着をおろしている最中などに起こります。

●主な原因と考えられているもの:過活動膀胱(※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策②(膀胱編))、神経因性膀胱(仙髄より上位の中枢神経の障害)、細菌性膀胱炎、男性は前立腺肥大など

③混合性尿失禁

腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の両方の症状があるものをいいます。このタイプがいちばん多いといわれています※1

④溢流性(いつりゅうせい)尿失禁

尿意はない(トイレに行きたくない)のに、いつも少しずつもれてしまいます。高齢男性に多い症状です。

●主な原因と考えられているもの:神経因性膀胱(仙髄または末梢神経の障害)、膀胱の収縮力の低下(低活動膀胱)、男性は前立腺肥大、女性は骨盤臓器脱(※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策①(骨盤底筋、コラーゲン編))、など

その他、尿失禁には、反射性尿失禁や、尿意切迫感を感じる他の疾患(細菌性膀胱炎、膀胱がん、膀胱結石など)の可能性もあります※7。認知機能低下※1、※11や股関節の骨折などの身体障がいなどに伴う機能性尿失禁も報告されています※1

人に話すこと自体に恥ずかしさを感じたり、尿失禁が病気であること、その症状を知らないことなど、病院を受診すること自体が少ない現状が報告されていますが※4、尿失禁は早期発見・早期治療による改善の見込まれる病気です。症状がある場合にはすぐに医療機関を受診して、ぜひ原因を突き止め、改善に向かいましょう。

尿失禁の原因

まだまだ解明されていないことの多い疾病、尿失禁。尿失禁にはさまざまな病気が関わっていると考えられていますが、その原因として大きく神経細胞の変性や神経の情報伝達の問題(※ご存じですか? 若い世代でもみられる尿失禁①※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策③(神経と栄養素、血糖値など生活習慣編))、筋肉や結合組織などの解剖学的な問題などが考えられています※12※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策①(骨盤底筋、コラーゲン編))。切迫性尿失禁はまだまだ解明されていない部分が多く、現行では神経や筋肉との間の情報伝達の不具合※12や、神経や筋肉そのものの機能低下などが原因のひとつであると考えられています※12、※19※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策③(神経と栄養素、血糖値など生活習慣編))。また、腹圧性尿失禁は、多様な原因による筋肉の損傷や衰え、結合組織の障害などを伴う複雑な病態であると考えられています※12、※13※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策①(骨盤底筋、コラーゲン編))。

これらが考えられる原因としては、過活動膀胱、神経因性膀胱、骨盤臓器脱などの状態があります。尿失禁を考える上で欠かせない状態です。以下に説明いたします。

過活動膀胱:神経の伝達が障害もしくは亢進されて起こる?

切迫性尿失禁と診断される女性のほとんどに、過活動膀胱が診断されるという報告があります※1。過活動膀胱は尿意切迫感を感じることが主な症状で、頻尿(昼間に8回以上、または夜間に1回以上トイレに行く)や切迫性尿失禁を伴うことが多いといわれます。

過活動膀胱はいまだ謎が多く(※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策②(膀胱編))、神経の情報伝達が障害されたり、逆にそれが亢進することで神経が過敏になって起こるのではと考えられています。これらの原因として、生活習慣の乱れによる血管内皮機能障害、炎症(※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策③(神経と栄養素、血糖値など生活習慣編))、自律神経の亢進、脳血管障害、パーキンソン病などが考えられています。また、男性では前立腺肥大症、女性では閉経、骨盤臓器脱(※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策①(骨盤底筋、コラーゲン編))が原因となるとも考えられています※7。また、フレイルや認知機能低下と尿失禁を伴う過活動膀胱との関係性を指摘する報告もあります※14

過活動膀胱の診断、重症度・治療効果の評価に用いられているものに、過活動膀胱症状質問表(Overactive Bladder Symptom Score:OABSS)というものがあります。

※過活動膀胱の診断基準としては「尿意切迫感スコア(質問3)が2点以上、かつOABSS合計スコアが3点以上」、過活動膀胱の重症度判定として「OABSS合計スコア『軽症:5点以下、中等症:6~11点、重症:12点以上』」として活用されています。

神経因性膀胱:神経の部位が障害されて起こる

神経因性膀胱とは、尿をためたり出したりすることに関わる神経(脳、脊髄、末梢神経)が障害されて、電気信号(※ご存じですか? 若い世代でもみられる尿失禁①(20代でも尿失禁))をうまく伝えられなくなっている状態です(※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策③(神経と栄養素、血糖値など生活習慣編))。神経の障害される部位によって症状が異なります。これらの原因として、糖尿病(※血液・尿検査の意義③)、脳血管障害、神経変性疾患(パーキンソン病など)(※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策③(神経と栄養素、血糖値など生活習慣編))、脊髄損傷、骨盤内臓器の手術後などが考えられています※7

骨盤臓器脱

膀胱、子宮、直腸など骨盤に収まっているはずの臓器が徐々に膣から外に飛び出てくる女性の病気を、骨盤臓器脱といいます。一般的に、女性は閉経によるエストロゲン低下によって骨盤底の結合組織、靭帯や筋肉が緩んでしまうこと(※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策①(骨盤底筋、コラーゲン編))、妊娠・出産によって骨盤組織(神経、筋膜、筋肉)が傷つくこと※15、※16、※17※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策①(骨盤底筋、コラーゲン編))、加齢によって骨盤底を構成する筋肉、筋膜、靭帯が衰えてしまうことが原因と考えられています。

日本で2018~2019年にかけて行われた21 歳から 84 歳までの 1,032 人の女性を対象とした研究では、その17 % に骨盤臓器脱が認められたことが報告されています。骨盤臓器脱は高齢になるにつれてリスクが増えると述べられていますが、被験者の20代、30代女性の6.6%にその症状が認められたことも示されています※15。同じ報告の中では、体重過多、子宮摘出手術、 経膣分娩(3回以上)が骨盤臓器脱の高リスクであることが示されています※15。海外の研究では、出産経験のある女性の44%に骨盤臓器脱がみられたという報告もあります※18

そのメカニズムは奥が深く、まだまだ解明されていないことの多い尿失禁ですが、その実態について少しおわかりいただけたでしょうか?次回から3回に分けて、分子栄養学の得意分野における尿失禁対策についてお届けいたします。(※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策①(骨盤底筋、コラーゲン編)※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策②(膀胱編)※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策③(神経と栄養素、血糖値など生活習慣編)

※1 Aoki Y.,et al. Urinary incontinence in women. Nature Reviews Disease Primers, 3:17097.(2017)

※2 Fry CS.,et al.  The Role of the Mucosa in Normal and Abnormal Bladder Function. Basic and Clinical Pharmacology and Toxicology, 119(Suppl 3): 57–62.(2016)

※3 岩田誠.「骨盤括約筋支配ニューロンの局在」. 自律神経, 59(2):172-177.(2022)

※4 Lukacz ES.,et al. Urinary Incontinence in Women. JAMA, 318(16): 1592-1604.(2017)

※5 Batmani S.,et al. Prevalence and factors related to urinary incontinence in older adults women worldwide: a comprehensive systematic review and meta-analysis of observational studies. BMC Geriatrics, 21(1):212. (2021)

※6 吉澤 剛,他.「尿失禁」.日大医学雑誌, 80 (4): 187–193. (2021)

※7 病気がみえる vol.8 腎・泌尿器 第3版.医療情報科学研究所.(2019)

※8 Traish AM.,et al. Role of androgens in female genitourinary tissue structure and function: implications in the genitourinary syndrome of menopause. Sexual Medicine Reviews, 6(4):558–571.(2018)

※9 Nygaard IE.,et al. Physical activity and the pelvic floor. American Journal of Obstetrics and Gynecology, 214(2):164–171.(2016)

※10 Kim MM.,et al. The Association of Physical Activity and Urinary Incontinence in US Women: Results from a Multi-Year National Survey. Urology,159:72-77.(2022)

※11 Rait G.,et al. Prevalence of cognitive impairment: results from the MRC trial of assessment and management of older people in the community. Age and Ageing, 34(3):242-248.(2005)

※12 Aragón IM.,et al. The Urinary Tract Microbiome in Health and Disease. European Urology Focus,4(1):128-138.(2018)

※13 Herrera-Imbroda B.,et al. Stress urinary incontinence animal models as a tool to study cell-based regenerative therapies targeting the urethral sphincter. Advanced Drug Delivery Reviews, 82-83:106-116.(2015)

※14 三井貴彦,他.「過活動膀胱・頻尿とフレイル・認知機能低下との関係」.『医学のあゆみ』285(3).医歯薬出版株式会社,pp178-182.(2023)

※15 Kato J.,et al. Pelvic organ prolapse and Japanese lifestyle: prevalence and risk factors in Japan. International Urogynecology Journal,33: 47-51.(2022)

※16 Snooks SJ.,et al. Injury to innervations of pelvic floor sphincter musculature in childbirth. Lancet,2:546–550.(1984)

※17 Lukacz ES.,et al. Parity, mode of delivery, and pelvic floor disorders. Obstetrics and Gynaecology,107:1253–1260.(2006)

※18  Samuelsson EC.,et al. Signs of genital prolapse in a Swedish population of women 20 to 59 years of age and possible related factors. American Journal of Obstetrics and Gynecology, 180(2 Pt 1):299-305.(1999)

※19  Pearce MM.,et al. The female urinary microbiome in urgency urinary incontinence. American Journal of Obstetrics and Gynecology, 213(3):347.e1-11.(2015)

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