The Orthomolecular Times

2024.12.16 分子栄養学と免疫の栄養素「自然免疫:好中球の働きとビタミンC」

食事

食事の基本

分子栄養学の基本は、何といっても食事・運動・睡眠・ストレスケアなどの規則正しい生活です。例えば食事が乱れているだけで、病態によっては栄養素の効果が全く実感されないということも起こり得るため、よく噛んで美味しく食べる正しい食事をとても大切にしています。

今回は、基本の食事、エネルギー産生栄養素(3大栄養素)(※5大栄養素(概論))、食べる時間についてです。

適正な糖質量

1食につき約30~50g、1日約90~150g(病態によって1食につき約20~40g、1日約70~120g)をお勧めしています。
糖質とは、お米やパン・麺などの主食、いも類、果物、お菓子やジュースなどに多く含まれる栄養素で、血糖値を上げる栄養素です。でんぷんやショ糖、果糖、ブドウ糖などがあり、全身のエネルギー源になります。1食に食べる糖質量や糖質の質(GI値)をコントロールしたり、食べる順番として野菜・肉魚などのおかずを先に食べ、最後に糖質を食べることで、血糖値の上昇を抑えることをお勧めしています。

<糖質を多く含む食品>
米(白米、胚芽米など)、パン、麺(パスタ、うどん、ラーメン、蕎麦、ビーフンなど)、はるさめ、いも類、根菜類(かぼちゃなど)、果物(ドライフルーツ、バナナ、桃、柿、みかんなど)、砂糖(白砂糖、黒糖、てんさい糖など)、お菓子(洋菓子、和菓子、アイス、スナック菓子、せんべいなど)、清涼飲料水(炭酸飲料、ジュースなど)

タンパク質をしっかり摂取

体重1㎏当たり、1日1.0~1.5gのタンパク質を食べましょう。体重60㎏の方でしたら、1日60~90gをお勧めしています。

筋肉を維持するために適量のタンパク質が必要です。効率よい代謝を支える酵素や( ※分子栄養学とは⑦-3)、心の素セロトニンなどの神経伝達物質もタンパク質でできています。タンパク質をよく噛んで食べることで、消化の助けとなり、腸で吸収されやすくなります。

<タンパク質を多く含む食品>
肉類(鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、鹿肉など)、魚介類(さんま、アジ、鯛、アサリ、イカ、タコなど)、卵、大豆製品(豆腐、納豆、大豆の水煮、豆乳など)、乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルトなど)、ナッツ(アーモンドなど)など

例)1食分のタンパク質含有量※1
鮭薄切り1枚(70g):タンパク質12.1g、豚ロース肉(脂身あり)100g:タンパク質15.6g、鶏ささみ2本(100g):タンパク質19.7g、鶏卵M玉1個(55g):タンパク質6.2g、絹ごし豆腐100g:タンパク質5.3g、木綿豆腐100g:タンパク質6.7g

良質な脂質の適切な量の摂取を

1日に必要なエネルギー量の20~30%を脂質から摂りましょう。

脂質は細胞膜(細胞の内と外を仕切る薄い膜のこと)やホルモンの材料になり、健康的な食事には不可欠な食材です。脂質と一緒に食べることで、脂質に溶ける栄養素(ビタミンA,D,E,K、β-カロテンなど)の吸収率が高まり、お通じがつるっと出ることにもつながります。脂質の種類と量に気をつけて選びましょう。長時間酸素にさらされたり加熱されて酸化した油脂や、トランス脂肪酸(マーガリン、ショートニング)は避けましょう。

お勧めの油脂:エゴマ油、亜麻仁油、オリーブ油など

例)食品の脂質含有量※1
小さじ1杯の亜麻仁油(4g):脂質約4g、エネルギー約35.9kcal、大さじ1杯のオリーブ油(12g):脂質約11.9g、エネルギー107.3 kcal

食前に食物繊維

食前に野菜などの食物繊維を食べることで食べ過ぎや血糖値の急上昇を防ぐことができます。1日20g以上の食物繊維を摂ることをお勧めしています※2。特に食物繊維の中の水溶性食物繊維は、腸の中の善玉菌のエサとなり、便通を整えたり、免疫を整え※3、炎症を防ぎ※4、脂肪合成を抑制してくれたりと※5、全身の健康につながることが期待されています。

<食物繊維を多く含む食品>
野菜(ほうれん草、小松菜、ブロッコリー、おくらなど)、きのこ(えのき、しめじ、なめこなど)、海藻(わかめ、めかぶ、もずく、昆布など)、こんにゃく、寒天、納豆、山芋など

食べる時間、食べるタイミング

朝から元気に活動するエネルギーを確保するため、タンパク質・糖質・脂質・ビタミン・ミネラル・食物繊維を含んだ、バランスの良い朝食をよく噛んで食べることが大切だと考えています。午前の朝食で適量のタンパク質を摂ることは、体内時計のリセットにつながることが示されています※6※7。加えて、適量のタンパク質を朝・昼・夕食で均等に摂ることが筋肉維持につながるという報告があります※8

体内時計にとって不適切な時間帯に食事を取ることでも生活習慣病の原因のひとつになると推測されています。夜間には体内時計を調節する時計遺伝子の一つであるBMAL1遺伝子とその蛋白質が活性化しますが、この蛋白質は脂肪を蓄積し分解を抑える作用を持っています※9。余計な脂肪を貯め込まないように、午前中にしっかりした量と質の朝ごはんを食べ、夕食はなるべく早めの時間に食べるとよいかもしれません。もし、夕食が遅くなってしまう場合には、夕方に補食を摂り、その後の夕食は野菜と豆腐などのタンパク質、温かいスープなど、消化のよいおかずにするとよいでしょう。

まとめ

総エネルギー量(カロリー)不足と各栄養素の不足は、筋肉量の低下、余計な体脂肪の増加だけでなく、病気の発症につながるリスクとなってしまいます。毎日3食、規則正しい時間に食べることが、健康を維持し、栄養素を効かせる重要な礎となると考えます。自分の選ぶ適正な食事と個体差(※分子栄養学とは⑥)に沿った栄養素の補給で、自分の健康の基礎を手に入れましょう。

※1
『八訂食品成分表2022/女子栄養大学出版部』より計算

※2
厚生労働省の食事摂取基準2020によれば、理想の1日の食物繊維量は「成人では理想的には 24 g/日以上、できれば 14 g/1,000 kcal 以上を目標量」と記述されています。しかし、現状の摂取量があまりにも少ないため、目標量を18~64歳で男性21g以上、女性18g以上としています。そこで、分子栄養学では、達成可能な摂取量として最低1日20g以上の摂取をお勧めしています。

※3
Kim,M., et al. Gut Microbial Metabolites Fuel Host Antibody Responses. Cell Host Microbe, 20(2):202-214.(2016)

※4
Nastasi,C., et al. The effect of short-chain fatty acids on human monocyte-derived dendritic cells. Scientific Reports,5: 16148. (2015)

※5
Shimizu,H.,et al. Dietary short-chain fatty acid intake improves the hepatic metabolic condition via FFAR3. Scientific Reports, 9: 16574. (2019)

※6
Wehrens, S.M.T.,et al. Meal Timing Regulates the Human Circadian System. Current Biology,  27(12):1768-1775.e3.(2017)

※7
Ikeda, Y.,et al. Glucagon and/or IGF-1 Production Regulates Resetting of the Liver Circadian Clock in Response to a Protein or Amino Acid-only Diet. EBio Medicine, 28:210-224.(2018)

※8
Mamerow, M.M.,et al. Dietary protein distribution positively influences 24-h muscle protein synthesis in healthy adults. The Journal of Nutrition, 144(6):876–880.(2014)

※9 厚生労働省eヘルスネットより引用
 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-008.html
三島 和夫

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