The Orthomolecular Times

2024.12.16 分子栄養学と免疫の栄養素「自然免疫:好中球の働きとビタミンC」

身体の仕組み

年末年始に向けた正しい身体づくり「脂肪肝対策②」

美味しいものを食べる機会の多い年末年始。運動不足や糖質・脂質過剰で起こり得る内臓脂肪・脂肪肝について2回に分けてお届けしています。前回は、脂肪の役割や種類、脂肪肝になる仕組みなどをお伝えしました(※年末年始に向けた正しい身体づくり「脂肪肝対策①」)。今回は第2回目、内臓脂肪・脂肪肝への分子栄養学的対策です。

分子栄養学的対策①:まずは自分の今の状態を知る

自分で太ったな、と思っても、実はタンパク質不足でむくみが起こっている可能性もあるかもしれません。そこで、適切な栄養状態で最適な健康状態を保つために、まず自分の今の状態を詳細な血液・尿検査で知ることをお勧めします。(※血液検査の意義① 血液検査の意義② 血液検査の意義③ 血液検査の意義④ )。その上で、医師や管理栄養士とともに自分に必要な対策、筋肉を増やす、脂肪を燃やす、といった作戦を立てていきます。

筋肉はいちばんのエネルギー消費器官

いかに楽して食べた分を消費するかを考える場合、活躍してくれるのが筋肉です。なぜかというと、1日の消費エネルギー量は、基礎代謝という部分が約60%を占め、その中で筋肉によるエネルギーの消費がいちばん多いからです※6。総エネルギー消費量(24時間相当)は、大きく基礎代謝量(約60%)・食事誘発性熱産生(約10%)・身体活動量(約30%)の3つで構成されています※7。基礎代謝とは、生命活動を維持するために最低限必要となるエネルギーのことです。

分子栄養学的アプローチ②:バランスの良い食事をよく噛んで食べましょう

筋肉の維持には、適切なエネルギー量とタンパク質の補給が大事です。自分の活動量に合った食事の量を食べましょう。(※5大栄養素(概論))タンパク質は、1回の食事で手のひらにのるくらいが目安です。よく噛むと、タンパク質が物理的に小さく細かくされてから胃に行くため、胃の中で消化されやすくなり、それが下流にある腸内環境を整えることにもつながります。

このほか、適正な糖質量、青魚やアマニ油などのオメガ3系の脂質を積極的に摂り、食前に野菜、海藻、きのこなどの食物繊維をたっぷり食べましょう。おかずを先に食べて血糖値の急な上昇を防ぐことで中性脂肪を下げることにつながる可能性があります。

分子栄養学的アプローチ③:効率の良い代謝のためのビタミン・ミネラルを一緒に

3大栄養素(※5大栄養素(概論))からエネルギーや新しい細胞をつくったり、全身で行われている代謝のほとんどに酵素が活躍します※分子栄養学とは⑦-2 。そして、そのほとんどの酵素が働くのに、5大栄養素のうちのビタミン・ミネラルが必要です(※分子栄養学とは⑦-3)。ビタミン・ミネラルが足りないと糖質や脂質の代謝が悪くなり、せっかく摂った3大栄養素をエネルギーに換えられずに脂肪として蓄積しやすくなる可能性を考えています。

分子栄養学的アプローチ④:腸内環境を整える短鎖脂肪酸

脂肪肝の原因のひとつとして腸内環境の悪化、リーキーガット症候群などが注目されています。リーキーガット症候群とは、腸の細胞と細胞の間にすきまができることで、腸管バリア機能が落ち、本来なら通らないものまで通ってしまい、炎症を起こしたりしてしまう状態のことです。

そこで腸内環境を整えることも脂肪肝対策の重要なポイントとして考えられています。腸の中に住んでいる腸内細菌のバランスや多様性を整えるということがポイントのひとつです。身体に良い影響を与える生菌として、乳酸菌、酪酸菌、ビフィズス菌などが有名です。(※子供の栄養「腸は全身をコントロールする第2の脳」)これらの菌が水溶性食物繊維やオリゴ糖などを発酵して短鎖脂肪酸を作ります。短鎖脂肪酸は、腸粘膜を整え※8、脂肪酸合成を抑制し※9、食欲を調節してくれることで※10肥満を予防する役割が期待されています。また、炎症を抑制し※11、免疫機能の調整をしたり※12、全身の健康状態に関わっているといわれます。よく噛んで腸内細菌のエサとなるさまざまな食物繊維をたっぷり食べ、自分のおなかの中に合った良い菌のお花畑を咲かせましょう。SIBO(小腸内細菌異常増殖症)の方は、食べられる食品が変わりますので、自分に合ったものを食べましょう。

分子栄養学的アプローチ⑤:良い睡眠と適度な運動

悪い睡眠と非アルコール性脂肪肝疾患の関係が指摘され※13、健康な成人男性を対象とした研究で、睡眠時間を4時間に制限すると、食欲抑制ホルモンのレプチンが減少し、食欲を促進するホルモン、 グレリンの上昇がみられるため、食欲が増えることがわかっています※14。また、良い睡眠をとることで、体調も整います。軽い筋トレで筋肉量を維持し、ウオーキングで脂肪を燃やす、内臓脂肪や脂肪肝改善に適度な運動が勧められています。体調や抱える病気の状態によって、「適度な運動」の内容は変わります。ぜひ1年に1回、医療機関でご自分に起こる変化や体調を把握しながら、自分にとっての適切な運動を続けていきましょう。

忘年会、クリスマスが終わったと思ったら、お正月、新年会とアルコール、ご馳走、スイーツなど、ついつい食べ過ぎの機会が増えるこの季節。そんな中でも適切な量のタンパク質、ビタミン・ミネラルと適度な運動で脂肪を燃やし、筋肉を維持し、食物繊維をよく噛んで食べることで腸内環境を整えて、素敵な新年を迎えましょう。

※6 厚生労働省eヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-004.html 
「表2: ヒトの臓器・組織における安静時代謝量」参照
大河原 一憲

※7 厚生労働省eヘルスネットより引用
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-003.html 
大河原 一憲

※8 Kelly C. J.,et al. Crosstalk between Microbiota-Derived Short-Chain Fatty Acids and Intestinal Epithelial HIF Augments Tissue Barrier Function. Cell Host Microbe. 17(5) :662-71.(2015)

※9 Shimizu H.,et al. Dietary short-chain fatty acid intake improves the hepatic metabolic condition via FFAR3. Scientific Reports, 9: 16574. (2019)

※10 Chambers E.S. , et al. Effects of targeted delivery of propionate to the human colon on appetite regulation, body weight maintenance and adiposity in overweight adults. Gut,64(11):1744-1754. (2015)

※11 Nastasi C., et al. The effect of short-chain fatty acids on human monocyte-derived dendritic cells. Scientific Reports,5: 16148. (2015)

※12 Kim M., et al. Gut Microbial Metabolites Fuel Host Antibody Responses. Cell Host Microbe, 20(2):202-214.(2016)

※13 Marjot T., et al. Sleep and liver disease: a bidirectional relationship. Lancet Gastroenterol Hepatol, 6(10):850-863. (2021)

※14 Spiegel K.,et al. Brief communication: Sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin levels,   and   increased   hunger   and   appetite.  Annals of Internal Medicine,141(11):846-850. (2004)

RELATED

PAGE TOP