The Orthomolecular Times

2024.12.16 分子栄養学と免疫の栄養素「自然免疫:好中球の働きとビタミンC」

各種検査について

血液検査の意義② 重要な血液検査をさらに活用するための方法とは?

健康診断や内科の検査でよく行われる血液検査。
血液検査の数値の意味について深く考えたことはありますか?

血液検査の結果には、私たちの身体に関する多くの情報が含まれています。血液検査は、生活習慣の改善や治療効果の判定だけでなく、分子栄養学においては「健康を守るための非常に優れたツール」としても活用されています。

今回は身体の栄養状態や健康状態を調べるために欠かせない血液検査の意味と、分子栄養学における活用方法について一緒に学んでいきましょう。

血液検査で何がわかるのか

そもそも血液検査でどんなことがわかるかご存じですか?

一般的によく行われる健康診断の血液検査には「血球検査」と「生化学検査」の2つがあります。

血球検査は、血液中で働く赤血球、白血球、血小板などの細胞の数や性質を調べて、これら細胞の状態が正常かどうかを確認する検査です。
例えば、鉄分などが不足して赤血球が作られなくなる貧血や、白血球が異常に増殖する白血病などが血球検査で判断できます。

一方、生化学検査は血液の中に溶けているさまざまな酵素やタンパク質、血糖値などを把握する検査です。
例えば調べる酵素の種類を変えることで、各臓器の情報をこと細かく知ることができます。
生化学検査の一例を紹介すると次の通りです。

AST・ALT 肝臓の細胞がどれくらい壊れているかを調べられます。ALTの方が高ければ脂肪肝をはじめとした慢性肝炎であることを示唆しやすいです。ASTは心筋や骨格筋の損傷も反映します。
γ-GTP
(γ-グルタミルトランスフェラーゼ)
肝臓や胆道系の疾患を示す指標です。飲酒や薬剤の影響を受けやすく、アルコール性肝障害のスクリーニングにも用いられます。
ALP
(アルカリフォスファターゼ)
骨や肝臓、胆道の疾患を示す指標です。特に骨の病気や、胆道閉塞などで上昇します
LDL
(低密度リポタンパク質)コレステロール
LDL(低密度リポタンパク質)コレステロール:LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」として知られます。LDLにはコレステロールを肝臓から全身へ運ぶ働きがあります。LDLが増えすぎると、動脈硬化性疾患のリスクが増加します。
HDL
(高密度リポタンパク質)コレステロール
コレステロール:HDLは「善玉コレステロール」として知られ、血液中などの余分なコレステロールを肝臓に運び、体外に排出する働きを持っています。HDLは値が低いほど虚血性心疾患のリスクが高まることが知られています。
TG
(中性脂肪)
中性脂肪はエネルギーの貯蔵形態であり、食事や肝臓で合成されます。血中の中性脂肪が高いと、動脈硬化性疾患などのリスクを高めるといわれます。LDLとHDLのバランスと合わせて評価することで、動脈硬化のリスクをより細かく把握します。

こうして見ると、実に多くのことがたった1回の血液検査で判明することがわかります。 分子栄養学に基づいた栄養療法でも、個体差(※分子栄養学とは⑥)を大切にするためのツールとして、詳細な血液検査を推奨しています(※血液検査の意義①)。

血液検査で色々わかるのはなぜか?

しかし、なぜ血液検査で色々わかるのか?ひと言で言えば「全ての臓器が血液でつながっているから」です。

私たちは毎日口にする食べものや飲みものから必要な栄養素を取り込みます。そしてその栄養素を使って私たちの身体は日々新しい材料と入れ替わっています。

食べものから取り込まれた栄養素は血液に乗り、まず「門脈」という特別な血管を通って肝臓に運ばれます。肝臓ではその栄養素を使って、必要な成分を作ったりします。

そしてその後、心臓が強力な筋肉で血液を全身に送り出し、各臓器に必要な成分を届けます。

臓器に届いた成分は、それぞれの臓器で必要なだけ使われます。使い終わった成分や使われなかった成分は静脈を通って心臓に戻り、再び肺を経て全身を巡ります。その途中で不要な成分は尿や便として体外に排出されます。

このように考えると、全ての臓器は血液を通して一体となっているとおわかりいただけるのではないでしょうか。

つまり、血液検査1つで

  • 食べ物や飲み物がどのように吸収されたか
  • 吸収された栄養素がどのように利用されたか
  • 必要な栄養素を元に、身体にとって必要なものがどのように合成されたか
  • 代謝産物(老廃物など)の排泄がうまくいっているか

がわかります。
それだけではありません。血液検査では

  • 感染症に罹っていないか
  • 炎症が起きていないか
  • 大切な細胞が壊れていないか
  • 代謝に必要な酵素は働けているか

などもわかります。

1回の検査でこれだけわかる検査は他にそうそうありません。身体のことを知る基本となる検査と言えるでしょう。

血液検査を利用した分子栄養学的「テーラーメードアプローチ」が進んでいます

通常の血液検査は「今、病気であるか」を調べるためのものです。

しかし、分子栄養学に基づく血液検査では、「現在の栄養状態」や将来の病気のリスクを知るために、多くの項目を検査します(※血液検査の意義①)。そして、関連する複数の項目を考慮しながら、医師とともに健康の自主管理を進めています。

2021年に発表された日本人を対象とする研究によると、「合計で253人の『未病または未診断』の患者が分子栄養療法アプローチを使用して治療され、その大部分が慢性症状と未病状態から回復した」※と報告されています。 詳細な血液検査を利用した分子栄養学による「テーラーメードアプローチ」が、全国で医師とともに進められています。

まとめ

分子栄養学における血液検査は、病気の診断だけでなく、健康管理や予防医療における重要なツールとしての役割を考えています。

そして血液検査の結果を正しく理解し日々の健康管理に役立てることで、より健康的な生活を送ることを目指します。一緒に分子栄養学を学び、健康を守っていきましょう。


Arakaki, M., et al. (2021). Personalized nutritional therapy based on blood data analysis for malaise patients. Nutrients, 13(10), 3641.

RELATED

PAGE TOP