The Orthomolecular Times

2025.4.14 分子栄養学の栄養素「心のエネルギーに必須!ナイアシンとNAD」

ヘルシーエイジング

分子栄養学の栄養素「心が元気になる栄養素:タンパク質」

3大栄養素のひとつ、タンパク質が “元気な心” に役立つと考えられていることをご存じですか?

・健やかな心を育むタンパク質

の役割について、最新の科学情報を交えて一緒に学びましょう。

メンタルヘルスと栄養の関係

栄養とメンタルヘルスの関係は、近年注目を集めている研究分野であり、食事の質が精神的健康に大きな影響を与える可能性が数々の論文によって示されています※1、※2

4月に新しい人生の段階を迎える新成人。社会人としての第一歩は、ワクワクと同時に不安や挑戦にも満ちる季節です。この重要な時期に、心と身体の健康を支える鍵となる「栄養素」について一緒に学びましょう。

心とは?

「心と栄養素は関係があるの?」
そう思う方もおられることでしょう。

人が人らしくいる「心」。

心とは何か。脳科学の視点からみる場合、

「脳の働き」

から心が生じると考えられています。

脳は神経細胞(ニューロン。以下、神経細胞)などでできており、その神経細胞同士がリレー方式で連絡を取り合って複雑な回路をつくることで、感情を感じたり考えたりすることができるといわれます。

そして脳は、

・脂質
・タンパク質・アミノ酸
・微量栄養素(ビタミン・ミネラル)

などの栄養素が働くことによって機能します※3、※4。そのため、健やかな心と栄養素の関連を研究することは理にかなっているとする意見があります※3

論文の世界では2015年『Lancet Psychiatry』という医学雑誌の論文において、“Nutritional Psychiatry” という新しい研究分野が登場しています※5

日本語の意味は、
・Nutritional(栄養の)
・Psychiatry(精神医学)

「私たちは、食事と栄養を身体的および精神的健康の中心的な決定要因として認識することを提唱する」
“We advocate recognition of diet and nutrition as central determinants of both physical and mental health.” ※5

というものです。

その他にも、例えば健康的な食事がうつ病のリスクを減らす可能性が数々報告されています※1、※3

そのため分子栄養学では、健康な心を育む栄養素のひとつとしてタンパク質を重要視しています。

今回はさまざまな栄養素のうち、最も基礎となる健やかな心を育む栄養素

・タンパク質(アミノ酸)

と、心にとって重要な神経伝達物質の関わりについて一緒に学びましょう。

心を元気にする主要栄養素:タンパク質

私たちが食べる食事に含まれるタンパク質の種類と量が、うつ病と深い関係があることが示されています※1

その論文によれば、うつ病を病態生理学※6の視点から見てみると、タンパク質はとても重要な働きをしています※1

その働きのひとつが、神経伝達物質の前駆体になるアミノ酸を供給することです※1

「前駆体」とは、身体の中で別の重要な物質に変わる前の段階の物質のことです。いわば「素材」や「材料」のようなものを指しています。

タンパク質の重要な役割

タンパク質を構成するのは、いちばん小さな単位分子「アミノ酸」です。

アミノ酸は、脳内で「神経伝達物質」と呼ばれる大切な物質を作るための材料になります。

特に重要なのは「芳香族アミノ酸」と呼ばれる種類のアミノ酸です。適度な量と適切なバランスの神経伝達物質は、人に幸福感ややる気をもたらします。

  • トリプトファン → セロトニン(リラックスさせて穏やかな気分をつくる物質)を作ります
  • チロシン、フェニルアラニン → ドーパミン、ノルアドレナリン(やる気に関わる物質)を作ります

上記のうち、「トリプトファン」「チロシン」「フェニルアラニン」が材料となる芳香族アミノ酸、「セロトニン」「ドーパミン」「ノルアドレナリン」が神経伝達物質です。

つまり食事でこれらのアミノ酸をしっかり補充することは、脳内の大切な神経伝達物質の材料の補給につながり、健やかな心をつくる可能性につながります。

そこでアミノ酸のもとであるタンパク質をしっかり食べることが、健やかな心にとってとても重要だといわれています。
※必ず摂る必要がある必須栄養素「タンパク質」

脳内の「伝言ゲーム」を制御する栄養素の力

嬉しい、悲しいなどの感情、やる気、睡眠、集中力は、私たちの脳内で行われている神経細胞同士の複雑な「伝言ゲーム」によってうみ出されます。

その伝言ゲームの「特別な伝言係」の役割をしているのが、神経伝達物質です。

神経伝達物質は、脳の中で神経細胞同士がメッセージをやり取りするための「特別な伝言係」のようなものです。

神経細胞は、考える頭の部分(細胞体)からびゅっと1本の軸索(じくさく)という部分が伸びています。

そしてその軸索の先っぽから神経伝達物質が放出されて、それを次の神経細胞が受け取ります。これがリレー方式で繰り返されることで情報が次々伝わります。

そしてこれらの神経細胞と神経伝達物質のつくる複雑な回路が、私たちの感情、行動、思考を調整する重要な役割を担うと考えられています。

タンパク質をよく噛んで食べ、腸を整える

タンパク質は健やかな心に欠かせない栄養素です。

しかし未消化のタンパク質は腸にすむ悪玉菌のエサになり、腸内環境の乱れのもとになります。健康な腸内環境は、心の健康に重要であるとする文献が増えています※7

タンパク質はよく噛んで食べてしっかり消化し、腸内環境を整えましょう。
※分子栄養学的リーキーガット症候群対策②

今回のまとめ

最新の栄養学研究では、栄養素と精神的健康の密接な関係が示されています。

毎回の食事は単なる栄養補給ではありません。それは脳内の複雑なコミュニケーションシステムを最適化する、究極のツールです。

毎日毎食よく噛んで、良質なタンパク質が含まれる適量の食事をしっかり食べましょう。

腸内環境を整え、

・適切な量と質のタンパク質

を積極的に選んで食べるたった少しの食生活の変化が、皆さんの人生を劇的に変える可能性があります。

今日から始める、分子栄養学お勧めの心と身体の「元気」レシピ。あなたの新しい可能性を、分子栄養学のお勧めする毎日の食事から始めましょう。
※食事の基本

※1 Zielińska, M.,et al. (2023). Dietary Nutrient Deficiencies and Risk of Depression (Review Article 2018–2023). Nutrients, 15(11), 2433.

※2 Jacka, F. (2017). Nutritional Psychiatry: Where to Next? eBioMedicine, 17, 24–29.

※3 Adan, RAH.,et al. (2019). Nutritional psychiatry: Towards improving mental health by what you eat. European Neuropsychopharmacology, 29(12), 1321–1332.

※4 Delpech, JC.,et al. (2015). Transgenic increase in n-3/n-6 fatty acid ratio protects against cognitive deficits induced by an immune challenge through decrease of neuroinflammation. Neuropsychopharmacology, 40, 525–536.

※5 Sarris, J.,et al. (2015). Nutritional medicine as mainstream in psychiatry. Lancet Psychiatry, 2(3), 271–274.

※6 生理学とは、健康な身体がどのように働いているかを研究する学問です。それに対して病態生理学とは、病気のときに身体の働きがどう変わり、どんな問題が起きるのか、何が起きているのかを研究する学問です。

※7 Socała, K.,et al. (2021). The role of microbiota-gut-brain axis in neuropsychiatric and neurological disorders. Pharmacological Research, 172, 105840.

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