分子栄養学のヘルシーエイジング「健康を支える骨格筋は、健康なミトコンドリアがカギ!」
健康なミトコンドリアが健康な骨格筋を支えていることをご存じですか?
健康にとって極めて重要な骨格筋。
ミトコンドリアは分子栄養学で提唱する「細胞レベルの健康」を支える基盤、身体を支えるミクロの「エネルギーの発電所」です。
今回は、骨格筋とその健康を支えるミトコンドリアの関係の基礎について一緒に学びましょう。
骨格筋はなぜ大切?
骨格筋は私たちの健康を支える重要な器官です※1、※2。関節ごしに骨にくっついた骨格筋が縮んだり(収縮)伸びたり(弛緩)することで骨が動き、全体としての身体が動きます。(※習慣的な運動がキレイな姿勢、骨格筋をつくる!)
しかし、骨格筋はただ単に動きを支えるだけではありません。実は、私たちの生活の質(QOL)に欠かせないさまざまな働きをしています※1、※2、※3。
- 良い姿勢を保つ
- 呼吸を助ける
- 体温を維持する
- タンパク質、アミノ酸の貯蔵庫
- 糖代謝
- エネルギー代謝の柔軟性 など
(※骨格筋が血糖値を下げる⁉)
骨格筋の減少は例えば転倒につながり、そのまま寝たきりになる可能性も出てきます。そのほかに、
- 全身におけるエネルギー代謝の柔軟性の低下※1、※2、※4
- 心代謝性疾患(心血管疾患、2型糖尿病など)のリスク※5
につながることが示されています※2。
したがって、骨格筋の健康は私たちの生活の質、つまり豊かに暮らせるかどうかを大きく左右する重要な要素です※1、※2、※3。
骨格筋はタンパク質の合成と分解のバランスで維持される
骨格筋は水分を除くと80%がタンパク質でできており※6、骨格筋量はタンパク質の合成と分解のバランスによって維持されています※1。そしてそのタンパク質を、ミトコンドリアなどの細胞小器官※7などが囲んでいます※1。
筋肉を構成するタンパク質の合成が分解を上回るとき、筋肉は成長(肥大)します。逆にタンパク質の分解が合成を上回れば、筋肉は減少(萎縮)します※1。
骨格筋のタンパク質合成を支えるのは、ミトコンドリアのエネルギー
骨格筋量を支えるタンパク質の合成。筋肉のタンパク質合成を進めるためにエネルギーがたくさん必要であることから、健康な骨格筋を支えるためにミトコンドリアからのエネルギー供給が欠かせないとする文献があります※1。
ミトコンドリアとは、私たちが食べたエネルギー産生栄養素(3大栄養素:糖質、脂質、タンパク質)を、酸素を使ってエネルギー(ATP)に変える「細胞の中の小さな発電所」のことです。
ミトコンドリアは健康な筋肉を維持するためのエネルギーをせっせと供給し、骨格筋を陰で支えます※1、※3、※6。
分子栄養学では、ミトコンドリアが効率的にエネルギー(ATP)を作り出すために必要な栄養素(マグネシウム、ビタミンB群、CoQ10、鉄など)の至適量摂取を提唱しています。(※エネルギーをつくるための必須栄養素「マグネシウム、ビタミンB群、CoQ10、鉄」)
今回のまとめ
骨格筋の健康は、私たちの生活の質を左右する重要な要素です。
そしてその健康を支えているのが、ミトコンドリアという「細胞の中の小さな発電所」です。
分子栄養学では健康な骨格筋維持のため、適度な運動に加え、
- 腸を整える※1
- 良質なタンパク質の適量摂取
- タンパク質代謝に必須のビタミンB6とナイアシン
- エネルギー産生を進める栄養素(マグネシウム、ビタミンB群、CoQ10、鉄など)
も一緒に摂ることをお勧めいたします。
健康な骨格筋維持のためには、適切な糖質・脂質でしっかりエネルギー量を確保することも重要です。分子栄養学実践医師のモニタリングのもと、詳細な血液検査や腸内環境検査などをもとに栄養素の至適量摂取を目指しましょう。(※血液検査でわかる!あなたの健康状態)
いつまでも若々しい骨格筋を維持し、人生を楽しく過ごすヒントを分子栄養学で一緒に学んでいきましょう。
※1 Sartori, R.,et al. (2021). Mechanisms of muscle atrophy and hypertrophy: implications in health and disease. Nature Communications, 12, 330.
※2 Smith, JAB.,et al. (2023). Exercise metabolism and adaptation in skeletal muscle. Nature Reviews Molecular Cell Biology, 24(9), 607–632.
※3 Leduc-Gaudet, JP.,et al. (2021). Mitochondrial Dynamics and Mitophagy in Skeletal Muscle Health and Aging. International Journal of Molecular Sciences, 22(15), 8179.
※4 Goodpaster, BH.,et al. (2017). Metabolic flexibility in health and disease. Cell Metabolism, 25(5), 1027–1036.
※5 Kivimaki, M.,et al. (2019). Physical inactivity, cardiometabolic disease, and risk of dementia: an individual-participant meta-analysis. British Medical Journal, 365, l1495.
※6 Frontera, WR.,et al. (2015). Skeletal muscle: a brief review of structure and function. Calcified Tissue International, 96(3), 183-195.
※7 細胞の中で一定の機能をもつ構造物のことを細胞小器官といいます。