The Orthomolecular Times

2024.11.18 分子栄養学と運動「骨格筋が血糖値を下げる⁉ 運動効果と「GLUT4」の仕組みをわかりやすく解説」

身体の仕組み

秋の分子栄養学的紫外線対策のススメ②「紫外線対策はビタミンD補給も一緒に」

過度の紫外線対策はビタミンD不足を引き起こす可能性があることをご存じですか?

春や夏だけでなく秋にも対策が必要な紫外線(UVA、UVB)。

分子栄養学では、紫外線対策の際には、医師のモニタリングのもと血液検査を通した的確なビタミンD3補給を一緒に行うことをお勧めいたします。

秋にも必要な紫外線対策がビタミンD不足を招く?

猛暑の夏が過ぎ去り暑さや日射しが和らぐため、ほっと一息つきそうな紫外線対策。

しかし秋の季節にも肌や目に有害な紫外線(UVA、UVB)は地上に届くため、秋の紫外線対策は必須です。(※秋の分子栄養学的紫外線対策のススメ①

ところがその身体を守るための紫外線対策が過度である場合、健康維持に重要だと考えられているビタミンDの不足をまねく恐れがあります。

日本人のビタミンD不足の原因のひとつは、日焼け止めの使用?

都市部に住む日本人のビタミンD不足の傾向について、東京慈恵医科大学の研究グループが報告した研究があります※1

この研究は、2019~2020年に東京都内において健康診断を受けた「一見健康に見える」 5,518人を対象にして行われました。その結果、一見健康に見える人たちであったとしても、その中の98%の人がビタミンD不足(血中25(OH)D 濃度、<30 ng/mL)であることがわかりました。

こちらの研究では、ビタミンD不足の理由として

  • 伝統的な日本食(干ししいたけ)を食べる機会の減少

とともに

  • 屋内で過ごすことの多いライフスタイル
  • 日焼け止めや日傘の使用

などが推察されています※1

過度の紫外線対策がビタミンD不足を招く要因に?

紫外線対策としての日焼け止めの使用は、日本だけでなくWHO(世界保健機関)でも勧められている対策です。

また夏の猛暑では、熱中症予防対策として熱中症警戒アラートが発表された場合、

  • 不要不急の外出を控える
  • 室内等のエアコン等により涼しい環境で過ごす

ことが推奨されています※2

つまり、猛暑の夏は多くの人にとって

  • 熱中症予防のために涼しい屋内で過ごす時間が増える
  • 紫外線に直接当たる時間が減る

可能性があることが推測されます。

これらは、先ほど紹介した東京慈恵医科大学によるビタミンD不足の研究の推測のうち、

  • 屋内で過ごすことの多いライフスタイル
  • 日焼け止めや日傘の使用

が当てはまります。

このことから、分子栄養学では健康を守るために必須の事柄である熱中症予防対策・紫外線対策と一緒に、適切なビタミンD補給の必要性を考えています。

ビタミンDは健康維持に重要なビタミン

適度な直射日光による紫外線(UVB)は、健康維持に重要なビタミンD3の生成に必要です※3

ビタミンDは、

  • 丈夫な骨
  • 免疫バランスの調整
  • 認知機能
  • 筋肉の維持
  • 糖尿病対策
  • 健康な妊娠

など、全身の健康に重要なビタミンであることが示されています。(※日本人の98%がビタミンDが不足している⁉ 春の花粉症に備えた分子栄養学ビタミンD対策

ビタミンD3はマウス※4とヒトの表皮を構成するケラチノサイト(角化細胞)※5の研究において、紫外線(UVB)の害を内側から保護することも報告されています。

分子栄養学では紫外線対策の際、血液検査による的確なビタミンD補給をお勧め

全身の健康にとって欠かせない栄養素のひとつ、ビタミンD。人がビタミンDを獲得できる方法は以下の3つです※6

  • 食事
  • 適度の直射日光(紫外線UVB)が皮ふに直接当たること
  • 栄養補助食品(ダイエタリー・サプリメント)の活用

ビタミンD3は、肌に直接紫外線UVBが当たることで作られますが、地球の北半球に位置する日本では、秋頃から春にかけてUVBの量が少なくなります。(※UV-Bの減る日本の冬、免疫のための分子栄養学的ビタミンD摂取のススメ

過度の紫外線対策によるビタミンD不足を防ぐため、まずは血液検査でビタミンD血中濃度を確認することをお勧めします。

そのうえで、食事や分子栄養学実践に求められるサプリメントによってビタミンDを摂取しましょう。ビタミンDは食事だけで補うことは難しいため、適度の日光浴とサプリメントを勧める論文があります※6

ビタミンDをサプリメントで補う際は、個体差に沿った適切な摂取量と血中濃度を見極めるため、分子栄養学実践の医師のモニタリングのもと血液検査で確かめながら行うことを推奨しています。血液検査によってビタミンD3サプリメント摂取によるビタミンD過剰症※6、※7を防ぎましょう。

食品中に含まれるビタミンDの量については、※普段食べている食事には、どのくらいのビタミンDが含まれる? をご参照ください。

今回のまとめ

分子栄養学では過度の紫外線対策(日焼け止めの使用など)によるビタミンD不足を防ぐため、分子栄養学実践の医師のモニタリングのもと血液検査を通したビタミンD血中濃度の確認を推奨しています。

紫外線UVBは窓のガラス越し、日焼け止めクリーム、日傘や服などでも遮られてしまいます。(※秋の分子栄養学的紫外線対策のススメ①

これからの季節、秋の紫外線対策とともに血液検査でビタミンDを適切に補給し、冬のインフルエンザ予防にもつなげていきましょう。分子栄養学では、適切なビタミンDは冬の免疫対策にも重要であると考えています。(※UV-Bの減る日本の冬、免疫のための分子栄養学的ビタミンD摂取のススメ

医師とともに確認する分子栄養学的な至適量のビタミンD摂取で、効率的な紫外線対策を進めていきましょう。

※1 Miyamoto, H.,et al. (2023). Determination of a Serum 25-Hydroxyvitamin D Reference Ranges in Japanese Adults Using Fully Automated Liquid Chromatography–Tandem Mass Spectrometry. The Journal of Nutrition, 153(4), 1253–1264.

2 出典:「環境保健マニュアル2022」(環境省)(https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf)(p.17))を加工して文章を作成。

※3 Young, AR.,et al. (2017). Ultraviolet radiation and the skin: Photobiology and sunscreen photoprotection. Journal of the American Academy of Dermatology, 76(3), 76(3S1), S100–S109.

※4 Gupta, R.,et al. (2007). Photoprotection by 1,25 dihydroxyvitamin D3 is associated with an increase in p53 and a decrease in nitric oxide products. Journal of investigative dermatology, 127, 707–715.  

※5 Chaiprasongsuk, A.,et al. (2019). Protective effects of novel derivatives of vitamin D3 and lumisterol against UVB-induced damage in human keratinocytes involve activation of Nrf2 and p53 defense mechanisms. Redox Biology, 24, 101206.

※6 Holick, MF. (2007). Vitamin D deficiency. New England Journal of Medicine, 357(3), 266–281.

※7 Martens, PJ.,et al. (2020). Vitamin D’s Effect on Immune Function. Nutrients, 12(5), 1248.

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