分子栄養学の栄養素:ビタミンB群を知る④「ビタミンB群と健康なココロには深い関係がある」
ビタミンB群が健康なココロをつくるために必要不可欠な栄養素であることをご存じでしょうか。
また、ビタミンB群が身体に必要なものと知りつつも、具体的にどのような働きをしてくれるのかわからない方がいるかもしれません。
本記事を読み、ビタミンB群がどのような仕組みで健康なココロをサポートするのか、その基礎を一緒に学んでいきましょう。
ビタミンB群は健康なココロをつくる神経細胞の活動をサポートする
ビタミンB群は健康なココロをつくるために必要になります※1。なぜなら、ビタミンB群を摂取すると、ココロと深いつながりのある脳にとって重要なエネルギー産生が促されるからです※1。
十分な量のビタミンB群の摂取は、解糖系・クエン酸回路・電子伝達系と呼ばれる3つのエネルギー代謝経路の正常な機能をサポートします※1。
3つのエネルギー代謝経路が機能すると、例えば、セロトニンを生成する神経細胞※2のエネルギーになり、間接的にココロをサポートする可能性が示されています※3。
セロトニンとは、ココロの安定をもたらすといわれる神経伝達物質のひとつです。セロトニンが不足すると不安やうつなどココロの症状を引き起こすといわれます。
健康なココロを保つためにも、ビタミンB群を摂取し、神経細胞の活動をサポートしてあげましょう。
ビタミンB群を摂取して健康なココロの基礎となるATPを生み出す
それではここで、先ほど登場した3つのエネルギー代謝経路が機能してできるエネルギーについて具体的に見ていきます。
ビタミンB群は、私たちが生きるうえで必要不可欠なATPを生み出すために必要になります。
ATP(アデノシン三リン酸、adenosine triphosphate)とは、エネルギーを利用・貯蔵するための乾電池のようなものの代表です。
私たちは食事をしたり、考えたりといった活動をするためにATPを消費するため、常に産生し続けなければなりません。
ATPを産生するためには、エネルギー生成をおこなう代表的な3つの経路である解糖系・クエン酸回路・電子伝達系を機能させる必要があります。
3つの経路を機能させるために最も必要な栄養素のひとつがビタミンB群です。つまり、ビタミンB群を摂取することでATPの産生につながり、そのエネルギーを使って健康なココロの基礎がつくられていくのです。
健康なココロを維持するためには毎日ビタミンB群を摂取する必要がある
ココロと深いつながりがあるとされる脳の重さは体重のわずか約2%ですが、使うエネルギーの量はその10倍、全体の約20%と常に多くのエネルギーを必要とします※1、※4、※5、※6、※7。
それにもかかわらず脳自体にエネルギーそのものを乾電池のように貯めておくことはほとんどできないことが示されています※3、※8。
また、脳が常にエネルギーを使えるかどうかは、直接脳の働きを左右するほど大切だ、と報告されています※1、※9。
そこで重要になるのがビタミンB群です。エネルギー代謝に深く関わるビタミンB群は、ココロと深い関係にある脳にとって、とても重要だと考えられています※1、※3。
しかしビタミンB群は水に溶けやすいビタミンであり、たくさん摂取しても尿中に排出されるため、毎日補給する必要があります※1。
脳の活動を維持し、健康なココロを保つためにも、日々適切な量のビタミンB群を補給していきましょう。
8種類のビタミンB群を摂取してココロの健康をつくっていこう
ビタミンB群以外にも、さまざまな栄養素がココロに関わる可能性が研究されていますが※9、※10、※11、※12、※13、※14、※15、健康な脳と身体を維持するために、8種類のビタミンB群(ビタミンB1・B2・B6・B12・ナイアシン・パントテン酸・葉酸・ビオチン)すべてを一緒に摂ることを推奨する論文があります※1。
また、分子栄養学においても健康な脳と身体の最適な機能を引き出す基礎栄養素として、8種類のビタミンB群を一緒に摂ることを重要視しています。(※「ビタミンB群は8種類一緒に摂ることが合理的!」)
ココロと関係の深い脳が十分に活動するために、必要なエネルギーを補給していくことが求められます。そのエネルギーは、例えばセロトニンをつくる神経細胞の活動を支え、間接的に健康なココロをサポートする可能性があります※3。
8種類のビタミンB群を日々摂取し、健やかなココロの基礎を育てていきましょう。
※1 Kennedy, DO. B Vitamins and the Brain: Mechanisms, Dose and Efficacy—A Review. Nutrients, 8(2): 68. (2016)
※2 神経細胞とは、脳などの神経系を構成する細胞のことです。
※3 Calderón-Ospina,CA.,et al. B Vitamins in the nervous system: Current knowledge of the biochemical modes of action and synergies of thiamine, pyridoxine, and cobalamin. CNS Neuroscience & Therapeutics, 26(1): 5-13. (2020)
※4 脳は、安静時代謝量を100%として考えたときに、そのうちの約20%を使うとの報告があります。
※5 厚生労働省eヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-004.html
「表2: ヒトの臓器・組織における安静時代謝量」参照(大河原 一憲)
※6 Raichle, ME. Two views of brain function. Trends in Cognitive Sciences, 14(4):180-190. (2010)
※7 Clarke, DD., et al. Circulation and energy metabolism of the brain. Basic Neurochemistry. Molecular, Cellular and Medical Aspects. 6th edn. Lippincott-Raven, 637-670. (1999)
※10 Grosso, G.,et al. Dietary n-3 PUFA, fish consumption and depression: A systematic review and meta-analysis of observational studies. Journal of Affective Disorders, 205:269-281. (2016)
※11 Patrick, RP.,et al. Vitamin D and the omega-3 fatty acids control serotonin synthesis and action, part 2: relevance for ADHD, bipolar disorder, schizophrenia, and impulsive behavior. FASEB Journal, 29(6):2207-2222. (2015)
※12 Lassale, C.,et al. Healthy dietary indices and risk of depressive outcomes: a systematic review and meta-analysis of observational studies. Molecular Psychiatry, 24(7): 965-986. (2019)
※13 Marx, W.,et al. Nutritional psychiatry: the present state of the evidence. Proceedings of the Nutrition Society, 76(4):427-436. (2017)
※14 Bourre, JM. Effects of nutrients (in food) on the structure and function of the nervous system: update on dietary requirements for brain. Part 1: micronutrients. Journal of Nutrition, Health and Aging, 10(5):377-385. (2006)
※15 Bourre, JM. Effects of nutrients (in food) on the structure and function of the nervous system: update on dietary requirements for brain. Part 2 : macronutrients. Journal of Nutrition, Health and Aging, 10(5):386-399.(2006)