The Orthomolecular Times

2024.12.23 分子栄養学と免疫の栄養素「ビタミン・ミネラル補給と冬の感染症・免疫対策」

栄養素のお話(基本編)

分子栄養学の栄養素:ビタミンAを知る③「摂ったビタミンAを活用するにはタンパク質が必須!」

摂ったビタミンAの多くは肝臓にまず貯められ、その後全身に配られる

私たちが摂取したビタミンAは、大部分が肝臓に貯蔵されます※1。肝臓に貯えられたビタミンAはその後、ビタミンAを必要とする細胞まで運ばれてから使われていきます。

ビタミンAはビタミンA専用のタンパク質(RBP)に厳重にくるまれて丁寧に運ばれる

その際、ビタミンAは必ず肝臓で作られるビタミンA専用のタンパク質(RBP(retinol-binding protein):レチノール結合タンパク質。以下、RBP)に丁寧にくるまれて、必要とされる場所まで運ばれていきます※1、※2。RBP1つ(1分子)は、ビタミンA1つ(1分子)だけを運びます※3、※4、※5、※6。ビタミンAは、タンパク質と結合することで化学的に安定して存在しています。

このとき、RBPとビタミンAはさらに別のタンパク質(TTR:トランスチレシン。以下、TTR)にくっついて運ばれます。TTRにくっついて大きなタンパク質のかたまりとなることで、腎臓で濾されて尿に捨てられてしまわないようになっていると考えられています※1、※3、※7

タンパク質不足ではビタミンAを運べない

多くのビタミンAが貯められている肝臓。RBPは肝臓からビタミンAを運ぶ唯一のビタミンA輸送タンパク質であるため、ビタミンAのおかげで成り立つ健康にとってとても重要な存在です。

RBPが欠乏するということは、肝臓に貯まったビタミンAを的確に目的地まで運ぶ、ということができなくなることを意味し、欠乏した組織ではビタミンA欠乏の症状を呈することになります。その症状とは、視覚、妊娠時の胎児の発育、さまざまな代謝、心血管疾患までおよぶといわれます※8

ビタミンAを摂っても、タンパク質が足りないことが原因でビタミンAが欠乏する⁉

タンパク質の重度な栄養欠乏状態(クワシオルコル)などではRBPが不足し、それによってビタミンA欠乏になることが報告されています※5、※6

ビタミンAを運ぶタンパク質(RBP)合成に亜鉛が必要

しっかりしたRBP合成に亜鉛が必要であるという報告があります※9、※10、※11。タンパク質は分子栄養学における、生命活動の基本栄養素です。せっかく摂ったビタミンAをしっかりと使っていくために、亜鉛を含む食品、タンパク質をしっかりよく噛んで、分子栄養学の食事とともに一緒に摂取しましょう。

お母さんが母乳で赤ちゃんにビタミンAを受け渡すときにもタンパク質(RBP)が活躍

お母さんの母乳を通して赤ちゃんにビタミンAを渡すときにも、ビタミンAの大部分はレチノール結合タンパク質 (RBP) というタンパク質にくっついて運ばれていきます。そうしてお母さんから赤ちゃんに渡されたビタミンAは、赤ちゃんを守る免疫に使われたり、日々大きくなる赤ちゃんの細胞が正常に分化する手助けをしてくれます(※ビタミンAを知る②)。妊娠時には胎盤を通してビタミンAが赤ちゃんに渡されます※6、※12、※13

母乳を通して赤ちゃんに生きるための栄養素を受け渡すお母さん。ぜひ医師と一緒に確認しながら、至適量のタンパク質とビタミンA、亜鉛を一緒に補給しましょう※6

ビタミンAの補給は医師のモニタリングとともに

分子栄養学ではビタミンA過剰を心配せずに済むように、まずはバランスの良い食事をお勧めします。(※ビタミンAを知る①※食事の基本)そして医師の詳しい問診と血液検査などのモニタリングを通し、必要に応じて天然由来のダイエタリーサプリメント(分子栄養学実践に求められる品質を兼ね備えたもの)を用いるなど、賢いビタミンAの摂取をお勧めしています。

分子栄養学実践に求められる品質を兼ね備えたサプリメントとはどのようなサプリメントなのか、詳しくは ※分子栄養学の歴史④※分子栄養学の歴史⑤ に説明があります。ぜひご一読ください。

※1 O'Byrne SM.,et al. Retinol and retinyl esters: biochemistry and physiology. Journal of Lipid Research, 54(7): 1731-1743.(2013)

※2 RBPがビタミンAを丁寧にくるむ様子は「RBP に結合したレチノールはシクロヘキセン環をタンパク質分子内部に深く潜り込ませ,ヒドロキシ基をタンパク質表面に近いところに配置している」ことが、『目崎 喜弘.「レチノール結合タンパク質群によるビタミンAの輸送、貯蔵代謝の調節とその意義」.Vitamins(Japan),ビタミン 89 (5/6) :271-274.(2015) 』の中で説明されています。

※3 Blaner, WS. Retinol-Binding Protein: The Serum Transport Protein for Vitamin A Get access Arrow. Endocrine Reviews, 10(3) : 308-316.(1989)

※4 Lidén, M.,et al. Understanding Retinol Metabolism: Structure and Function of Retinol Dehydrogenases. Journal of Biological Chemistry ,281(19):13001-13004.(2006) 

※5 McCauley, ME.,et al. Vitamin A supplementation during pregnancy for maternal and newborn outcomes. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2015(10): CD008666.(2015)

※6 Maia, SB.,et al. Vitamin A and Pregnancy: A Narrative Review. Nutrients, 11(3):681.(2019)

※7 van Bennekum, AM.,et al. Biochemical basis for depressed serum retinol levels in transthyretin-deficient mice. Journal of Biological Chemistry, 276(2):1107-1113.(2001) 

※8 Steinhoff, JS.,et al. Retinoid Homeostasis and Beyond: How Retinol Binding Protein 4 Contributes to Health and Disease. Nutrients. 14(6): 1236.(2022)

※9 Satre, MA.,et al. Retinol binding protein expression is induced in HepG2 cells by zinc deficiency. FEBS Letters, 491(3):266-271.(2001) 

※10 Dieck,HT.,et al. Changes in rat hepatic gene expression in response to zinc deficiency as assessed by DNA arrays. Journal of Nutrition, 133: 1004-1010.(2003) 

※11 Grüngreiff, K.,et al. The role of zinc in liver cirrhosis. Annals of Hepatology,15(1):7-16.(2016)

※12 Green, MH.,et al. Vitamin A intake affects the contribution of chylomicrons vs. retinol-binding protein to milk vitamin A in lactating rats. Journal of Nutrition, 131:1279-1282.(2001)

※13 Stoltzfus, R.J.; Underwood, B.A. Breast milk vitamin A as an indicator of the vitamin A status of women and infants. Bulletin of the World Health Organization, 73:703-711.(1995)

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