分子栄養学の栄養素:ビタミンA を知る①「 視覚、成長、皮ふ、免疫に必須!」
ビタミンAは必ず摂る必要のある脂溶性ビタミン:視覚、成長、免疫、皮ふなどに必須
ビタミンAは正常な視覚、成長、免疫などに必須の生きるためのビタミンです。自分で作れないので必ず食品として摂る必要があります。ビタミンAは、あぶらに溶ける性質をもつ脂溶性ビタミン(fat-soluble vitamin)です。
ビタミンAの主な働き:視覚、成長、生殖、免疫、粘膜、皮ふを正常に保つ
ビタミンAの主な働きは、
・視覚を正常に保つ
・ヒトの成長と発達、生殖を正常に保つ
・感染予防、免疫機能、皮ふを健康に保つ
などがあります※1。適正なビタミンAは抗がん作用もいわれています※2、※3。
目の網膜に存在するロドプシン(光の明暗、色を感じる物質)が光に反応して刺激を脳に伝えることで物が見えるようになります。このロドプシンを作るのにビタミンAが必要です※4。ビタミンAは免疫細胞(マクロファージ、樹状細胞、T 細胞、制御性 T (Treg)細胞など)、粘膜・粘液(ムチン)、皮ふなどの上皮組織※5などが正常に働いてくれるように働きかけ、皮ふや粘膜を健康に保ちます※1。また、粘膜細胞の粘液(ムチン)の産生を促すということは、同時に腸を守る腸内細菌叢が棲む場所も提供してくれているということにもつながります※6。ビタミンAは人間にとって必要不可欠な栄養素です。
免疫細胞についての基礎知識は※免疫を司る白血球「白血球の仲間たちの基礎」、免疫・粘膜などの基礎知識については※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」をご覧ください。
ビタミンAが足りないとドライアイ、成長の遅れ、免疫の低下などが起こる
ビタミンA欠乏では、
・目の症状(ドライアイ、夜盲症、失明など)
・成長の遅れ、成長の停止
・皮ふの乾燥
・免疫機能の低下、下痢
などが起こることが報告されています※1。夜盲症とは、夜や暗いところで見えにくくなる病気です。
免疫ではビタミンAが足りないと、病原体と闘ってくれる免疫細胞や、物理的バリアとして働く消化管の粘膜が上手に発達できずに感染症にかかりやすくなります。腸で感染すると下痢が起こり、特に栄養失調の幼い子どもが感染症で亡くなるリスクが増加すると報告されています※1、※7。
ビタミンA欠乏症はどんなときに起こる?:身体が要求する量に足りないときに起こる
ビタミンA欠乏症は、身体が要求する量が摂取したビタミンA量よりも上回るときに起こるといわれます※7。授乳中のお母さんのビタミンAが少ないと、赤ちゃんにも欠乏のリスクが心配されます※7。
食事のコツ!ビタミンAやβ-カロテンはあぶらと一緒に食べることで吸収率が上がる
ビタミンAやカロテノイド(β-カロテンなど)はあぶらと一緒に食べることで吸収率が上がります。ぜひ脂質のオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸比の良いバランスをとりながら、良いあぶらを一緒に食べましょう※7、※8。(※食べる脂質が大切「日本人に関する研究」オメガ3:オメガ6)慢性的に繰り返す胃腸炎などでは、脂質の消化・吸収ができなくなり、それによってビタミンAの吸収が妨げられる可能性もあります※9、※10。
ビタミンAの至適量の補給を、医師の問診・モニタリングとともに
ビタミンA欠乏は人間の成長、生死に関わる重大な問題です。ビタミンAはユニセフやWHOが中心となり、世界の発展途上国の子どもたちのいのちの栄養素として活躍しています。まだまだ寒い冬、ぜひ至適量のビタミンA補給で適切な免疫に働いてもらい、風邪を予防していきましょう。分子栄養学では、医師の細やかな問診やモニタリングとともに至適量のビタミンAを補給することをお勧めしています。
ビタミンAがしっかりと吸収されるよう、胃や腸(消化管)が適切な消化酵素とともに消化吸収してくれるような身体づくりを普段から心掛けていきましょう(※栄養アプローチに欠かせない!最初のステップ「消化と吸収」)。
ビタミンAを多く含む食品
ビタミンAを多く含む食品は以下です。バランスの取れた分子栄養学の食事の一環として参考にしてください。(※食事の基本)
食品 | 1食分 | ㎍(レチノール活性当量) | IU |
---|---|---|---|
うなぎかば焼き | 1/2尾(80g) | 1920 | 6336 |
たらのあぶら | 小さじ1(4g) | 1480 | 4884 |
ぎんだら | 1切(70g) | 1050 | 3465 |
ほたるいか(茹で) | 刺身1食分(30g) | 570 | 1181 |
あなご(蒸し) | 1尾(40g) | 356 | 1175 |
鶏卵(全卵、生) | M1個(55g) | 116 | 383 |
バター | 大さじ1(12g) | 62 | 205 |
鶏もも肉(皮つき、生) | 120g | 48 | 158 |
※ 日本食品標準成分表2020年版(八訂)準拠.食品成分表2022(女子栄養大学出版部)より、ビタミンA(㎍)については小数第一位を四捨五入、ビタミンA(IU)については『ビタミンA(㎍)』に3.3を乗じ、小数第一位を四捨五入して算出しています。
※1 Huang, Z.,et al. Role of Vitamin A in the Immune System. Journal of Clinical Medicine, 7(9): 258.(2018)
※2 Fritz, H.,et al. Vitamin A and Retinoid Derivatives for Lung Cancer: A Systematic Review and Meta Analysis. PLoS One, 6(6): e21107.(2011)
※3 Takahashi, N.,et al. Vitamin A in health care: Suppression of growth and induction of differentiation in cancer cells by vitamin A and its derivatives and their mechanisms of action. Pharmacology & Therapeutics,230: 107942.(2022)
※4 Dewett,D.,et al. Mechanisms of vitamin A metabolism and deficiency in the mammalian and fly visual system. Developmental Biology, 476: 68-78.(2021)
※5 形や機能が似た細胞が集まったものを組織と呼びます。上皮組織とは、体の表面(主に皮ふ)、臓器(器官)の表面や内腔(※内腔とは内側の空洞のことを意味します。消化管や血管のこと)をおおう組織のことです。上皮組織は、基底膜の上に細胞が密に並んで存在しています。)
※6 Yan, J.,et al. Vitamin A deficiency suppresses CEACAM1 to impair colonic epithelial barrier function via downregulating microbial-derived short-chain fatty acids. Genes and Diseases, 11(2): 1066-1081.(2024)
※7 Tanumihardjo SA.,et al. Biomarkers of Nutrition for Development (BOND)-Vitamin A Review. Journal of Nutrition,146(9):1816S-1848S.(2016)
※8 Lietz, G.,et al. Molecular and dietary regulation of β, β-carotene 15, 15′-monooxygenase 1 (BCMO1). Archives of Biochemistry and Biophysics, 502(1):8-16.(2010)
※9 WHO; FAO. Vitamin and mineral requirements in human nutrition. World Health Organization, Food and Agricultural Organization of the United Nations: Geneva, Switzerland.(2004)
※10 Maia, SB.,et al. Vitamin A and Pregnancy: A Narrative Review. Nutrients, 11(3):681.(2019)