The Orthomolecular Times

2024.12.23 分子栄養学と免疫の栄養素「ビタミン・ミネラル補給と冬の感染症・免疫対策」

栄養素のお話(応用編)

厳しい残暑・肌と目の紫外線対策:ビタミン・ミネラルで身体メンテナンス

肌(皮ふ)や目の紫外線対策に、ビタミンC・ビタミンE・グルタチオン・ナイアシンなどの抗酸化栄養素ネットワークが酸化ストレスから身体を守るための強い味方。

バランスの良い食事、睡眠、休養とともに、至適量の栄養素摂取は酷暑から身体を守る基本としてお勧めです。

35℃を超える猛暑日の続いた今年の夏。メディアのニュースによれば、残暑厳しい季節がまだまだ続きそうです。皆さん、夏疲れしていませんか?

気象庁によれば、1910~2021 年における35℃以上(猛暑日)の年間日数、日最低気温が 25℃以上(熱帯夜)の日数は増加※1、環境省熱中症予防情報サイトによれば、1984年から2013年の30年間に気温が30℃以上になった時間数は2倍になり、朝夕の気温も暑くなっているとのことです※2

夏バテ、暑さのために食欲がなくなること自体が健康障害、熱中症への第一歩であるとされています※5。日ごろからバランスの良い食生活で、考え、動くためのエネルギーをしっかり作り、気力・体力を十分確保していきましょう。

今回は、厳しい残暑をのりきる身体づくりとして、汗と紫外線についての栄養素対策をお届けします。

真夏に引き続き、過ごしやすい気温・湿度の確保、日陰で過ごす、こまめな水分補給、十分な休養などの対策とともに、バランスの良い食事(※食事の基本)、至適量(※分子栄養学の歴史①)のビタミン・ミネラル(※ビタミン(総論))で残暑をのりきり、しっかり身体をメンテナンスしていきましょう。

汗の役割

身体が熱をもつと、体温を下げるために汗が出ます。これは、皮ふの表面で水分が蒸発することによって身体から熱を奪い(気化熱)、身体をクールダウンすることを指しています。つまり、汗は身体を守ってくれているということです。しかし汗は血液中の水分などでできているため、出た分の水分と汗の成分をしっかりと補充することが大切です。暑い日には、自分で気付かないうちにじわじわと汗をかいています。

暑いと多くなりがちな糖質の摂取:ビタミンB群を一緒に

暑いとついつい多くなりがちなアイス、ジュース、ゼリー、かき氷など。食事では、ついついさっぱりとそうめんやお蕎麦だけで済ます、なんてことはありませんか。

これらはすべて糖質の多い食品です。エネルギー産生栄養素である糖質(※5大栄養素(総論))をエネルギーに換えるためには、ビタミンB群が必須です(※分子栄養学とは⑦-3)。食べているのに疲れやすい。そんなときは、ビタミンB群が足りているか、食事を見直してみましょう(※食事の基本)。ビタミンB群が足りないだけで、エネルギーを作れずに疲れやすくなってしまいます。

ビタミンB群は、肉類、魚介類、豆類などのおかずに多く含まれます。大腸に存在する腸内細菌がビタミンB群を産生することが示されているため、野菜、海藻、きのこなど食物繊維で腸内環境を整えることも重要です(※ビタミン(総論)※分子栄養学的リーキーガット症候群対策①※分子栄養学的リーキーガット症候群対策②)。

汗とミネラル(ナトリウム・カリウム)

※6を大量にかいてナトリウムが足りなくなるだけで、食欲の低下、嘔吐、ひどいとけいれんや意識障害が起こります。

ナトリウムは塩分として摂取されることが多い栄養素です。日本人は日ごろから塩分の摂取量が多いため、通常の食事をしていれば不足することはなく、むしろ過剰摂取に気をつける栄養素です。ただ、運動や労働、アウトドア活動などで大量の汗をかいたときには、発汗量に見合った量を意識的に補給することが必要です。

カリウムは細胞の体液バランス、また、ナトリウムとともに神経細胞の情報伝達などに関わるなど、とても重要なミネラルです(※分子栄養学の得意分野における尿失禁対策③)。カリウムが慢性的に足りないだけで、脱力感、疲労感、筋力低下につながります。

カリウムは野菜や海藻、果物、豆類、肉類、魚介類などに多く含まれるため、糖質に偏った食事(※食事の基本)では不足する可能性があります。カリウムは水溶性で、茹でたり煮たりすると水に溶け出します。野菜や果物を生で食べたり、調理する場合にはスープも一緒に摂ると効率よく摂取できます※7

皮ふ(肌)と紫外線:ビタミンC、ビタミンE、抗酸化ネットワークが強い味方

暑い季節は紫外線(UV-A、UV-B)が強い季節でもあります※8。紫外線は皮ふで活性酸素、フリーラジカルを発生させてしまいます※9

紫外線の強い状態では酸化ストレス(※エンジオール基が世界を救う「ビタミンCの底力」)が亢進し、急激な日焼けは発赤、熱、腫れの状態のある炎症反応を引き起こします※10※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」)。

強い紫外線は皮ふを構成するコラーゲンやエラスチン※10などのタンパク質や脂質、DNAを傷つけ、それが長年にわたって蓄積することで皮ふの老化(しわ、たるみ、過剰な色素沈着など)、皮ふがんなどに関係すると考えられています※10

紫外線による皮ふへのダメージを軽減するため、ビタミンC※9、ビタミンE※9、グルタチオン※9、ナイアシンなどが、お互いをリサイクルし合いながら抗酸化能を発揮するために一緒に摂ることが有効であるとする論文があり※10、分子栄養学では至適量の抗酸化ネットワーク(※エンジオール基が世界を救う「ビタミンCの底力」)による総合的な栄養素対策をお勧めしています。

皮膚にはもともと高濃度のビタミンCが含まれていて、それがコラーゲン合成を促し、抗酸化の役割を担っていると考えられていますが、繰り返し紫外線にさらされることで消費されてしまい、それが抗酸化能に追いつかない可能性があることがいわれています※10。このことより、分子栄養学では至適量の栄養素(※分子栄養学の歴史①)でしっかり対策していくことを考えています。細胞の中では、ビタミンCとグルタチオンは水溶性の部分(細胞質)、ビタミンEは脂質の部分に存在し、抗酸化能を発揮します※10

目と紫外線:ビタミンC、ビタミンE、抗酸化ネットワークが強い味方

次に目についてです。目も皮ふと同様、常に紫外線にさらされているため、注意が必要です。紫外線の強い状態によって活性酸素やフリーラジカル(※エンジオール基が世界を救う「ビタミンCの底力」)が大量に発生し、それによって引き起こされるダメージが蓄積することが、加齢に伴って起こる目の変化を引き起こす可能性が指摘されています※11。長い期間紫外線にさらされることで心配されているのが、白内障、緑内障、加齢黄斑変性、がんなどです※11

目の健康を守るのに、ビタミンC、ビタミンE、グルタチオンなどの抗酸化ネットワークが水晶体を守り、白内障を防ぐ可能性が報告されています※12。もともと目の構造(房水、水晶体)にはビタミンCなどが含まれていて、抗酸化栄養素として働いていると考えられています※13、※14

分子栄養学では、目を紫外線から守る対策として、至適量のビタミンC、ビタミンE、グルタチオンなど総合的な抗酸化ネットワークによる抗酸化対策(※エンジオール基が世界を救う「ビタミンCの底力」)をご提案いたします。

子どものころからしっかり紫外線対策

WHOによれば、人間が生涯で受ける紫外線のうち、最大80%を18歳までに浴びることが指摘されています※11。子どもの目は瞳孔が大きく、目の組織が大人に比べて紫外線に対して弱い構造であるため、10代の若者にもしっかりした紫外線カット機能のついた眼鏡やサングラス、つばの広い帽子などを推奨する論文があります※11

ナイアシンと皮ふと紫外線(UV-B)

細胞を使った紫外線(UV-B)の実験において、ナイアシンアミドが皮ふの炎症反応を軽減することが報告されています※15。至適量のナイアシン摂取が紫外線から皮ふの外観と機能を守り、健全な皮ふの健康に貢献する可能性を示しています。

ビタミンD3と皮ふと紫外線(UV-B)

細胞の実験において、ビタミンD3がUV-Bによる皮ふのDNA損傷を防ぐという報告があります※16。至適量のビタミンD3が、紫外線対策としての可能性を秘めています。

至適量の栄養素と休息で残暑を乗り切る

環境省「熱中症環境保健マニュアル2022」によると、「地球温暖化が1℃を上回った現在、極端な暑熱が各地で記録されている状況ですが、「日本の気候変動2020」※3によれば、わが国においても将来、各地域の気温の上昇や猛暑日の日数の増加などが予測されており、暑熱環境についてもより悪化していくと考えられます。21世紀末には、地球温暖化2℃上昇シナリオでも各地域で猛暑日・熱帯夜はさらに増加し、4℃上昇シナリオに至っては東日本以南で猛暑日が21~54日、熱帯夜が45~91日、それぞれ増えるという、きわめて厳しい予測結果が示されています。」※4と報告されています。

暑さと紫外線で酷使してきた私たちの夏の身体。残暑をのりきるための栄養素をたっぷり含んだバランスの良い食事(※食事の基本)と至適量の栄養素(※分子栄養学の歴史①)で、毎日メンテナンスしてあげましょう。十分な休息、睡眠とともに、こまめな水分補給、そして栄養素たっぷりの食事をしっかり噛んで食べ、美味しい食欲の秋へと期待がふくらみます。

※1 出典:気象庁ホームページ 
(https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/monitor/2021/pdf/ccmr2021_sec2-3.pdf)

※2 出典:環境省熱中症予防情報サイト 
(https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/kogi03.pdf)

※3 「日本の気候変動2020-大気と陸・海洋に関する観測・予測評価報告書-」
文部科学省と気象庁より、日本とその周辺の状況や、気温、降水、海面水位・水温などの観測事実と将来予測について2020年に公表されたもの。

※4 環境省ホームページ
(https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf)

※5 出典:環境省熱中症予防情報サイトより一部編集
(https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/kogi03.pdf)

※6 汗について
ここでは、温熱性発汗(気温の高いとき、身体を動かす運動や労働で体温が上がったときに、熱を調節するために出る汗)について述べています。この他、精神的発汗、味覚性発汗(辛いものなどを食べたときに出る汗)があります。

※7 カリウムは、腎不全など腎臓病の病態によって過剰摂取に気をつける必要がある栄養素です。

※8 気象庁ホームページ「日積算UV-B量の月平均値の数値データ表」
(https://www.data.jma.go.jp/env/uvhp/uvb_monthave_tsu.html)

※9 Rinnerthaler M.,et al. Oxidative stress in aging human skin. Biomolecules. 5(2):545-589.(2015)

※10 Pullar JM.,et al. The Roles of Vitamin C in Skin Health. Nutrients. 9(8): 866.(2017)

※11 Ivanov IV.,et al. Ultraviolet radiation oxidative stress affects eye health. Journal of Biophotonics, 11(7):e201700377.(2018)

※12 Lim JC.,et al. Vitamin C and the Lens: New Insights into Delaying the Onset of Cataract. Nutrients, 12(10):3142.(2020)

※13 Reddy VN.,et al. The effect of aqueous humor ascorbate on ultraviolet-B-induced DNA damage in lens epithelium. Investigative Ophthalmology and Visual Science, 39(2):344-350.(1998)

※14 Blondin J.,et al. Delay of UV-induced eye lens protein damage in guinea pigs by dietary ascorbate. Free Radical Biology and Medicine, 2(4):275-281.(1986)

※15 Bierman JC.,et al. Niacinamide mitigates SASP-related inflammation induced by environmental stressors in human epidermal keratinocytes and skin.International Journal of Cosmetic Science,42(5):501-511.(2020)

※16 Chaiprasongsuk A.,et al. Protective effects of novel derivatives of vitamin D3 and lumisterol against UVB-induced damage in human keratinocytes involve activation of Nrf2 and p53 defense mechanisms. Redox Biology, 24:101206.(2019)

   

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