The Orthomolecular Times

2024.12.23 分子栄養学と免疫の栄養素「ビタミン・ミネラル補給と冬の感染症・免疫対策」

身体の仕組み

感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」

インフルエンザが流行る冬。それと同時に私たちはWith/Postコロナ時代を生きています。コロナ対策への規制緩和が検討される一方、自分の免疫を適切な状態に高めておくことがより重要になってきます。寒い冬は空気が乾燥しているため、ますます感染症に気をつけたい季節です。感染症は、自分自身が重症化しないよう、また、自分が宿主※1として他の人にうつさないように気をつける必要があります。

今回は、感染症と免疫についての基礎的な言葉の意味、身体の仕組みについてお届けします。適切な免疫とは何か、その基本を知るところから一緒にスタートしましょう。

感染症とは

ウイルスや細菌などの病原体が体内に入り込んで起きる病気のことです。感染が引き起こすさまざまな病気の総称をいいます。

病原体とは

人が住む環境には微生物がたくさんいます。例えば口の中、皮膚の表面、腸の中など、身体に良い影響を与える腸内細菌として乳酸菌、酪酸菌、ビフィズス菌などが有名です(※子供の栄養「腸は全身をコントロールする第2の脳」 )。外の世界にもさまざまな微生物が存在します。しかしそれらの中にはヒトに害をもたらすものもいて、私たちを病気にしてしまう微生物のことを病原体と呼んでいます。病原体には、ウイルス※2、細菌、カビ、原虫などがあります。風邪※3の場合は多くがウイルスが原因となります。

感染するとはどういうことか

感染とは、病原体が身体の中に入ってきて、それが定着して増えることです。病原体の感染力が私たちの抵抗力(免疫)を上回る場合に成立します。感染力より免疫が上回る場合は、保菌者でも無症状である場合もあります。病原体が細胞や組織に入り込んで感染は成立しているけれども、ある程度まで免疫が抑え込むことができていているということです。病原体が増えてしまうと、ものによって毒素を出したり、私たちの細胞や細胞が集まった組織や器官などを壊したりして、身体を正常に機能することができなくなってしまいます。

感染経路

飛沫感染(くしゃみや咳で飛び散ったウイルスなどを含む飛沫(5ミクロン以下の大きさ)が、目、鼻、口などの粘膜にくっつくことで感染する。飛ぶ距離は1~2メートル以内で、空気中を漂わず、すぐに落ちる※4。)、接触感染(例えば、ウイルスなどが付いた飛沫や排泄物などを触った手にウイルスがつき、その手で目や鼻、口などの粘膜を直接触ることで感染する)、空気感染などがあります。その他、汚染された水や蚊などを介して感染する経路などもあります。

実際に感染が起こりやすい条件

実際に感染が起こるには、いくつかの条件があります。1つめは、体内に入ってきた微生物の量が多いこと。2つめは、免疫機能が低下している場合。そして3つめは侵入した病原体の病毒性が高いことです。病原性の高い例としてわかりやすいものに、エボラ出血熱があります。

免疫、炎症とは

免疫は、そもそも疫病(病気)を免(まぬが)れる、ということからきています。免疫とは、外から侵入してくる異物や病原体、体内で発生する人にとって有害ながん細胞のような変質したものと、そうでないもの(自己)を判別して、有害なものを排除し、自分を守ってくれる身体の防御システムのことです。免疫システムは、さまざまな細胞が役割分担して、自分を守ること(生体防御)に向かって、お互いに協力しながら働いています。

その免疫を担当する主体の細胞が、白血球です。白血球は侵入した病原体を見つけて攻撃したり、ばくばく食べたり、仲間を呼んだり、抗体というタンパク質を作ったりして闘います。そして免疫反応が起こった結果、炎症が起こります。その闘いの場は、①赤く、②熱をもち、③腫れて、④痛い、そして⑤機能が障害されます。これを炎症の五徴候と呼んでいます。炎症は免疫反応の過程、一部です。感染すると熱が出たり、喉が痛かったりするのは、免疫が働いて炎症が起きているサインです。風邪を引かない、感染症にかからない、ということは、白血球を中心とした免疫システムが整っているということが何より大切です。

粘膜・粘液:粘膜が第一のバリア

病原体が入って来れるのは、外と接した部分です。外とつながっているヒトの身体の部分は、敵が入って来れないようにすきまなく皮膚と粘膜で覆われています。この皮膚と粘膜が身体を守る第一のバリアになります。粘膜は目、鼻、口の中、胃腸、泌尿器、生殖器など、いつも粘液などで潤っている、とても広い組織※5です。粘膜は、一層の粘膜上皮細胞という細胞※6の層と、それを覆うぬるぬるした粘液、粘膜上皮細胞層の下に続く粘膜固有層とよばれる層などで構成されています。

例えば上気道(鼻やのど)の粘膜では、粘液のねばねばに覆われ、さらに線毛というブラシの毛のようなものが異物を上へ上へと押し上げて外に出そうとする働きがあります。そこでウイルスを洗い流すことができれば、感染はしないということになります。ただ、皮膚も粘膜も万能ではないので、さまざまな要因でバリアを破られることがあります。

多くの感染症の病原体は、基本的に外から来て、「粘膜」から入る

多くの感染症のもととなる病原体は、基本的に外から来て、呼吸器※7や消化管※8などの粘膜から入ってきます。例えば、インフルエンザはのどの奥、肺炎球菌は肺の組織、新型コロナウイルスは基本的に鼻やのどの奥や気管、肺など呼吸器に感染します。ごくごく一部のものは、皮膚の傷などから入ってくるものもいます。

自然免疫と獲得免疫:生体内の免疫は大きく分けて2段階

病原体に粘膜の第一のバリアを突破されてしまったら、その後に身体を守ってくれるのは、白血球の仲間が主体となる自然免疫(第二のバリア)と獲得免疫(第三のバリア)です。白血球は、血液の中を常にパトロールして、身体の中に侵入した病原体をいち早く察知して退治しようとします。生体内では、この2段階の防御システムで細菌やウイルスをやっつけます。

自然免疫と獲得免疫に関わる白血球は、以下のような種類が存在します。

・自然免疫系:マクロファージ、好中球、樹状細胞、NK細胞など
・獲得免疫系:T細胞(ヘルパーT細胞、キラーT細胞、制御性T細胞など)、B細胞など

加齢と免疫老化

そして、残念ながらその免疫機能は、年齢とともに落ちていきます。一般に免疫機能は20代がピークであるといわれ、個体差(※分子栄養学とは⑥)はありますが、そこから徐々に低下していきます。若い頃には自分の免疫が処理できていた病原体が、高齢になって処理できずに重症の感染症が発症し、入院して、それがきっかけで寝たきりになることも考えられます。お歳を重ねるにつれ、意識して免疫対策を心掛けることが必要です。逆に小さなお子さんは免疫システムがまだ十分に発達していないため、感染症に対して弱い立場にあることが知られています。

免疫に影響を与える要因

加齢のほか、免疫に影響を与える要因としては、遺伝素因によって免疫が誘導されづらい人がいることがわかっています。その他に、環境汚染物質、睡眠不足、偏った食生活、運動不足、喫煙・飲酒、仕事や対人関係などのストレスフルな生活などが免疫に影響します。

免疫は調整力も必須

免疫細胞を作ることができても、何らかの理由によって、それをコントロールできずに身体の中で暴走してしまうと大変です。免疫を調整する力の低下・乱れによって、免疫が過剰に反応しやすくなって炎症を起こしやすくなり、アレルギー性疾患、自己免疫疾患※9などにつながるのではといわれています。春に話題となる花粉症もそのひとつと考えられています。

まとめ

免疫の力はストレスなどその時々の状況で変化します。分子栄養学では、その免疫システムに適度にしっかりと働いてもらうために、常日頃から細胞レベルで免疫に十分働いてもらえるような腸内環境を含めた生体内の最適な環境を用意しておくこと、エネルギー代謝経路に関わる栄養素を十分に補充すること、エネルギー代謝やストレスで産生される活性酸素などに抗酸化栄養素などで対抗すること、炎症が起こりにくいと考えられる身体作りなどを考えます。その際、分子栄養学(※分子栄養学とは①)では、ダイエタリーサプリメントとしての栄養素の役割や摂取のみに注目が集まりがちですが、質の良い睡眠、適正な食事、適度な運動、ストレス対策など規則正しい適切な生活習慣(※年末年始に向けた正しい身体づくり「脂肪肝対策①」年末年始に向けた正しい身体づくり「脂肪肝対策②」、食事の基本)が最も重要であると考えています。

最近、風邪を引きやすいな、と感じる時は、きちんと食事をしているか、適度な運動をしているか、腸内環境は整っているか、夜更かしはしていないか、睡眠時間はとれているか、ストレス解消はできているかなど、まずはご自分の生活習慣を見直してみましょう。それが、分子栄養学的免疫対策としてお勧めされるタンパク質(※子供の栄養「子供の成長にはまずタンパク質を!」)、グルタミン、鉄(※子供の栄養「集中できないのは、やる気の問題ではなく鉄欠乏性貧血!?」)、亜鉛、ビタミンC(※エンジオール基が世界を救う「ビタミンCの底力」 子供の栄養「ビタミンCで、ストレスから子供を守ろう!」)、ビタミンD(※子供の栄養「丈夫で健康になるためにも、 脂溶性ビタミンをしっかり摂りましょう!」)などの栄養素の働きを十分に高めてくれることにつながっていくと考えています。

※1 宿主
感染を受ける側の動物や植物を宿主(しゅくしゅ)といいます。

※2 ウイルス
ウイルスは自己増殖・代謝を自分で行えず、生物と非生物の間であると議論されていますが、微生物の仲間に分類されており、こちらの記事では微生物として扱います。

※3 風邪
風邪とは、正しくはかぜ(風邪)症候群のことです。急性上気道炎とも呼ばれます。ウイルスや細菌が上気道(鼻やのど)に感染して起こる急性炎症をまとめてそう呼びます。症状としては、咳、くしゃみ、鼻水、のどの痛み、発熱、全身倦怠感などがあります。

※4
飛沫の大きさや飛距離は目安です。湿度、温度、空気の流れによってこれらの値は変化します。

※5 組織
生物の身体を構成する単位のひとつです。同じような形や働きをもった細胞が集まって、一定の働きをしているものを組織といいます。

※6 細胞
私たちを小さくしていったときに、“生きていると認められるいちばん小さな単位” が細胞になります。(※分子栄養学とは①)

※7 呼吸器
呼吸器とは、外から酸素を取り入れ、二酸化炭素を外に出すという呼吸(外呼吸)に関わる器官のことです。鼻、のど、気管、気管支、肺などが呼吸器系と呼ばれます。

※8 消化管
消化管とは、食べものを消化・吸収する管の全体を指します。口からのど、食道、胃、小腸、大腸、肛門までの1本の管のことです。

※9 自己免疫疾患
自己免疫疾患は、味方(自己)と敵(非自己)の区別がうまくつかなくなって、自分自身の細胞を攻撃してしまう疾患のことです。

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