The Orthomolecular Times

2024.11.18 分子栄養学と運動「骨格筋が血糖値を下げる⁉ 運動効果と「GLUT4」の仕組みをわかりやすく解説」

子供(成長期)

子供の栄養「腸は全身をコントロールする第2の脳」

あなたのお子さんは大丈夫ですか? 

表1 お子さんにこのような症状・様子・食生活が見られたら要注意です

お子さんの体調不良をどこで判断していますか?熱が高かったり、 どこかが腫れていたりすれば、 感染症や炎症がある程度特定されます。しかし、なんとなく元気が無かったり、食欲が無かったりと、 万全ではないのがわかっていても、症状をうまく表現できない子供の体調不良は、原因を特定するのが難しいことが多いです。
表1の症状・ 様子は子供によくみられる体調不良ですが、これらの不調には、少なからず腸が関係しています (図1)。 子供の腸はまだ発達段階にあるため、大人以上に繊細です。 近年、アレルギーやうつ、なんとなく不調を訴える子供が増えているのはなぜでしょう?
原因の一つとして、食生活の変化、 具体的には伝統的な和食離れや食事の欧米化(高脂質・高糖質)があげられます。腸は、食べたものの消化・吸収を担う器官であると共に、 人の身体にとって有害となりえる生体外異物を排除する器官でもあります。 腸にとって良いものを食べ、腸の健康を保つことは、全身の健康のためにとても大切です。

腸はとっても働き者 -子供のやる気は腸次第!-

図1 腸の不調が原因となりうる症状など

腸の健康=全身の健康

食べたものは、胃酸や消化酵素によって小さく分解 (消化)され、小腸で吸収されます。
また、全身の免疫の約70%が腸に由来していることから、 消化・吸収以外にも、腸が全身の健康を担っていることは言うまでもありません(図2)。
さらに、 「解毒= 肝臓」 というイメージは強いと思いますが、身体にとって有害な物質は、 肝臓で解毒される前にまず腸で吸収しても大丈夫なものか識別されます。 本来、 体内に入り込んだ病原菌などは、ある程度胃酸などによって殺されます。 しかし、腸が不健康だと、元々の腸の働きが発揮できず、病原菌などによる影響を受けてしまいます。

図2 腸の主な働き
全身が健康であるためには、 まずは腸を良い状態に保つことが最優先です。

腸は全身をコントロールする第2の脳

身体にとって悪いものを食べた場合、 脳が悪いものと判断するよりも先に、腸が瞬時に良し悪しを判断します(例: 食中毒の時に下痢や嘔吐を起こす)。 これは、腸に 「脳とは独立した識別能力」 があるからです。
また、人に 「やる気」を起こさせたり、 「幸せな気持ち(幸福感)」 をもたらすセロトニンというホルモンがありますが、 約90%が腸でつくられることがわかっています。 しかし、腸の調子が悪いと、体内のホルモンバランスが崩れ、 「やる気」 も低下してしまうことが報告されています。
このように、腸と脳は非常に密接な関係にあり、セロトニンなどのホルモンの産生に大きく関わるがゆえ、 腸は 「第2の脳」と呼ばれています。
近年、子供のひきこもり・不登校ならびにうつなどの精神症状が増加しているのは、腸内環境が乱れ、 「第2の脳」が悲鳴をあげているからではないでしょうか(図3)。

図2 セロトニンと脳の関係

胎児期から大切にしたい腸活

子供の「食育」 は、 お母さんのおなかの中にいる頃から始まっています 。 赤ちゃんは、胎盤を通じてお母さんから栄養を受け取りながら成長していきます。 羊水の中は無菌状態ですが、 出産の際にお母さんの産道を通ることで初めて菌に触れます。お母さんは、日頃から「腸活」(腸の働きを良い状態にしておくために、腸にとって良いことをすること)をして腸内環境を整えておくことで、 出産時に赤ちゃんに良い菌を与えることができ、 成長する過程においても非常に有利になります。

赤ちゃんにも良い菌を!

おなかの中の良い菌を育てるには?

おなかの中にお花畑? キレイな腸内フローラを咲かせましょう

腸内には、約 1,000兆個もの腸内細菌が棲息していると言われています。 これらの細菌は、まるでお花畑のように腸の壁を覆っているため、腸内細菌叢(腸内フローラ)と呼ばれています。 腸内細菌には、善玉菌 ・ 悪玉菌・日和見菌の3種類があります(図4)。これらの細菌は共存し、バランスを保ちながら腸内環境をつくりあげています。 しかし、食生活や生活習慣が乱れたり、 ストレスが増えたりすると、繊細な腸内環境はバランスが乱れてしまいます。

善玉菌人の身体に有益な働きをもつ
日和見菌食べものや体調によって善玉菌または悪玉菌に傾く
悪玉菌腸内の内容物を腐らせたり、有害物質をつくる菌
図4 腸内細菌の種類
表2 1日の発酵食品の摂取状況

ユネスコ無形文化遺産にも登録された「和食」は、有用菌の増殖を助ける食物繊維(プレバイオティクス)がふんだんに使われています。また、醤油や味噌、納豆や漬物などの発酵食品には、プロバイオティクスが豊富に含まれています。

プロバイオティクス人の身体に良い影響を与える生菌(例:酪酸菌・ビフィズス菌・乳酸菌など)
プレバイオティクス有用菌を増殖させる働きをもつ食品(例:食物繊維・オリゴ糖など)
子供の健やかな成長のためにも、腸を健康に保つことがとても大切です!

「司令塔」 細菌?! -腸内環境を整える酪酸菌について-

古くから日本人に親しまれていたぬか漬けなどの発酵食品には、 酪酸菌というプロバイオティクスが豊富に含まれています。 酪酸菌は酪酸という短鎖脂肪酸を産生することで、 乳酸菌とは異なる身体にとってとても重要な働きをいくつか持っています。

酪酸菌の特徴

  • 偏性嫌気性菌 (酸素の無い環境で増殖する菌)
  • 芽胞と呼ばれる非常に強い殻(天然のバリア)をもっている
    ▷胃酸や胆汁酸に負けずに、 最も力を発揮する大腸まで届く
  • 食物繊維をエサとして、大腸のエネルギー源となる短鎖脂肪酸(酪酸など)を産生する
    ▷大腸粘膜の増殖を促し、バリア機能を強くする
  • 抗生物質に伴う腸内環境の乱れを軽減する
  • 乳酸菌の増殖を促進
  • 有害菌の増殖を阻害
  • ビタミン(ビタミンB1、B2、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビタミンK)の合成
  • 抗菌成分の産生

MIYARISAN PHARMACEUTICAL CO., LTD.,
Characteristics and medical application of Clostridium butyricum Miyari, a spore-forming bacillus

酪酸菌は、腸内環境を整えることで
その他のプロバイオティクスの働きを促す 「司令塔」の役割を果たします

どうやったらわかる?腸の状態?

内の状態を知るベストな方法は、便の状態を確認することです。 排泄された便の中には、腸の中に存在していた腸内細菌が残っています。 腸内環境が良いほど、 便は理想の形で出てきます(図5)。 まさに、便は身体の状態を教えてくれる大切な「お便り」 です。

図5 便の構成と理想の便

全身のケアは腸のケアから

お子さんが何かしらの不調で困っていたら、 まずは腸のケアから始めてみませんか? 腸をベストな状態にしておくことが全身の健康につながります。 便秘・下痢はもちろんのこと、精神的な不調にも胸が大きく関わっています。 お子さんが心身共に健やかに成長できるように、プレ・プロバイオティクスの力を借りて、日頃の体調の変化に注目しながら見守っていきましょう。

成長期の子供の身体(健康・体力)と脳(やる気・集中力・学力)は
プレ・プロバイオティクスの補給次第で変わります!

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