The Orthomolecular Times

2024.12.23 分子栄養学と免疫の栄養素「ビタミン・ミネラル補給と冬の感染症・免疫対策」

分子栄養学とは

分子栄養学とは⑤ 「代謝=異化×同化」

「代謝が悪い」

「代謝が良くなった」

お医者さんからよく聞く言葉、代謝。

生体内で起こる代謝を考えていくと、「異化」と「同化」という言葉が出てきます。生体とは 生きているからだ の意味です。

「代謝という言葉はよく聞きますね・・」

「異化?同化?」

なんだか、聞いたことはあるけれど・・?

このウェブマガジンでは、分子栄養学に出てくる言葉を基礎から一緒に考えていきたいと思います。今回は、分子栄養学の考え方のうちでも、考え方の大前提となる「代謝」、「異化」と「同化」についてです。

代謝とは

代謝(metabolism)とは、生体内で起こる分子の変化、つまり生体内におけるさまざまな分子の合成・分解に関する化学反応のことです。

私たちヒトを含む地球上の生物は、その生命を維持するために栄養素を外の世界からとり込みます。そして、そのまま使えるものはそのままの形で、そのままで使えない栄養素はまず分解して、新しい分子を合成したり、生体内で利用できる形に変換します。また、要らない分子を分解して身体の外に排出するということも行っています。この生体内で起きている化学反応をまとめて代謝といいます。

代謝では連続的な化学反応が起こっており、これをスムーズに進める役割を酵素が担ってくれています。酵素がいてくれなければ代謝ができずに、私たちは生きていくことができません。それくらい、酵素は健やかな心と身体にとってとても大切な存在です。
分子栄養学とは⑦では、3回シリーズで酵素と代謝について考えています。ぜひご一読ください。(※分子栄養学とは⑦-1「化学反応は実験室で起きているんじゃない?」分子栄養学とは⑦-2「酵素の役割」分子栄養学とは⑦-3「酵素×ビタミン・ミネラル」

代謝回転と動的平衡

私たちの身体において、“生きていると認められるいちばん小さな単位”である細胞を構成する成分は、一見ほぼ変化がないように見えますが、実は多くの分子が合成と分解を繰り返して絶えず入れ替わるということをしています。これを代謝回転(metabolic turnover)といい、そのスピードは組織や器官によって異なります。繰り返す合成と分解の動きはあっても、両者の反応がつり合っているために見かけ上は変化が起こっていないように見える状態を、動的平衡といいます。

代謝経路とは

生体内では、いつも多くの代謝が同時に行われ、複雑な分子レベルでの物質の変化が起きていますが、一連の流れとして連鎖的に起こる化学反応はいくつかの代謝経路(metabolic pathway)としてまとめられています。例えば、エネルギー代謝経路、コレステロール代謝経路などです。

異化と同化

そして代謝は、大きな違いのある2つの反応、「異化」と「同化」に分けられます。

●異化(catabolism):複雑な分子や大きな分子から、より単純な分子や小さな分子に分解される反応。このとき、エネルギーを放出することが多い。
例:ブドウ糖がエネルギー代謝で使われ、最終的に水と二酸化炭素という小さな分子に分解される反応。
●同化(anabolism):単純な分子や小さな分子(低分子)から、より複雑な分子や大きな分子(高分子)が合成されていく反応。エネルギーを消費して行われる。
例:アミノ酸がたくさんつながってタンパク質ができる反応。

代謝は、ヒトを構成する何十兆個もの細胞内のあらゆるところで営まれています。生きるということそれ自体が、その生物を構成する分子が壊され(異化)、新しく作り変えられている(同化)という現象なのです。生きることそのものが、代謝という化学反応でできています。

分子栄養学は、さまざまな代謝のどこに栄養素が関わっているかを丁寧にみる学問です。代謝がうまくいかなくなるだけで、さまざまな不調が起きてしまう原因になる可能性があるからです。

分子栄養学と代謝

代謝、つまり異化と同化がスムーズにバランス良く行われるかどうかは、人の成長にも関わります。赤ちゃんが日々成長していくのは、異化<同化、つまり同化が異化を上回っている状態です。赤ちゃんは、分子が壊されるよりも、新しく作られる方が多い結果、すくすくと身体が大きくなっていきます。


赤ちゃんでもご高齢の方でも、地球上に存在する生物はすべて、いつも自分の中の環境を生きるのに最適な状態に保とうします。そして私たちの身体、脳を含めた器官や細胞の中身は、生きているうちは常に新しいものに作り替え、同じかたちを保とうとします。その新しいものに作り替えるという時に、良い栄養素を材料として充分に供給していけば、作り替えられる新しい細胞の中身もどんどん良いものになっていくでしょう、というのが分子栄養学の考え方です。


分子栄養学では、老化の原因のひとつとして、異化>同化、異化が同化を上回ってしまうことを考えます。そこで、異化=同化を保つこと、これがアンチエイジングや身体の萎縮・機能低下を防ぐひとつの基盤となるのでは、と考えます。


良い栄養素をしっかりと毎日摂り、まずはそれを吸収する。分子レベルで入れ替わる良い材料を十分な量得て、それを身体のすみずみまで供給することが、生体内での代謝(異化・同化反応)をバランス良く促進することの基礎となると考えています。そしてこのことが、ご自分の人生を心も身体も豊かに過ごすための最も重要な基礎のひとつであると考えています。

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