The Orthomolecular Times

2024.12.16 分子栄養学と免疫の栄養素「自然免疫:好中球の働きとビタミンC」

各種検査について

血液・尿検査の意義③「 基本検査K-01 Ⓒ糖・脂質代謝、Ⓓ腎機能・電解質」

分子栄養学(※分子栄養学とは①分子栄養学の歴史①)の基本ツールとして利用されるのが血液と尿の検査セットです(※血液検査の意義①)。69項目の詳細な血液・尿検査項目を、関連する項目ごとに簡単に記述しています。(※血液・尿検査の意義① 血液・尿検査の意義②

今回は第3回、「Ⓒ糖・脂質代謝」、「Ⓓ腎機能・電解質」の2つの関連項目についてです。

Ⓒ 糖・脂質代謝

糖尿病、生活習慣病のスクリーニングのための項目です。

血糖値とは、血液100ml(1dL)に、ブドウ糖(グルコース)がどのくらい含まれているかの値です。ブドウ糖(※食事の基本)は全身の細胞のエネルギー源となるため、値が高すぎず低すぎず、いつも適度に血液中にあることが理想です。しかし、ホルモンの乱れやインスリン抵抗性※1などで血糖値のコントロールが悪くなると、その値が変動しやすくなります。空腹時血糖値126㎎/dL以上は糖尿病を疑います。血糖値が低すぎる場合、低血糖症を疑います。血液中に糖があふれると、老化の原因ともいわれる最終糖化産物(AGEs)というコゲをうみ出す原因にもなってしまいます。

糖尿病になると血糖値のコントロールに必要なインスリンというホルモンが十分に働かず、血糖をうまく細胞に取り込めなくなります。そのため、血液中に糖があふれ、それを何年も放っておくと失明したり、尿(※尿検査からわかること)が出なくなったり、足の切断をしたり、心筋梗塞やがんなどでお亡くなりになる可能性が出る病気です。過去1~2か月の血糖コントロール状況を反映するHbA1cも一緒に計測します。

血液中のコレステロールと中性脂肪は、リポタンパク質というタンパク質に結合して存在します。コレステロールは細胞膜をがっちり支えたり、さまざまなホルモンの材料にもなる重要な脂質です。動脈硬化の起こりやすさを表す動脈硬化指数もともに計算します。

<糖・脂質代謝に関する検査項目>

BS(血糖値)、HbA1c、T-C(総コレステロール)、HDL-C(HDLコレステロール)、TG(中性脂肪)、LDL-C(LDLコレステロール)、AI(動脈硬化指数)、FFA(遊離脂肪酸)、遊離コレステロール、コレステロールエステル比

Ⓓ 腎機能・電解質

代謝状態(※分子栄養学とは⑤ 分子栄養学とは⑦-1)や腎臓の機能を確認する項目です。

生体内では、細胞の種類によってスピードは違いますが、DNA(遺伝情報が書き込まれている設計図のようなもの)やタンパク質など細胞の材料が、分子レベルで常に新しく入れ替わっています。必要なものは合成され、要らないものは分解されて捨てられます。

尿酸は、DNAやRNA、ATP(生体内のエネルギーを貯める乾電池のようなもの)などを作る部分(詳しくは “プリン塩基” という部分)の分解産物です。尿酸は、インスリン抵抗性、大量飲酒、ショ糖・果糖の過剰摂取、腎臓からの排泄抑制などで高値となり、尿や胆汁への排泄亢進、低栄養で低下するとされています。

高尿酸血症の方は、尿酸塩が結晶として関節などに溜まり、痛風発作や動脈硬化などのリスクとなることが考えられています。また、尿酸は低すぎても運動後急性腎障害などのリスクが考えられています。一方、尿酸は活性酸素などの酸化ストレスから守ってくれる抗酸化作用があることもわかっています。

尿素はタンパク質(※5大栄養素(概論)※食事の基本)を燃焼させた後の燃えカス、クレアチニンは筋肉を動かすエネルギー源(クレアチンリン酸)が代謝されてできる老廃物です。尿素窒素とは、尿素に含まれる窒素分のことです。

尿素もクレアチニンも身体にとって不要なものなので、通常は尿から捨てられます。尿を作り、血液中の要らないものを捨ててくれる場所は腎臓です(※尿検査からわかること)。その腎臓の働きが悪くなっていると不要なものを尿に捨てることができず、尿素窒素やクレアチニンの血中の値が高くなります。 eGFRとともに腎臓がうまく働けているかの指標とされています。

逆に検査数値が低い場合は、尿素窒素はタンパク質の摂取が少ないか、尿素をつくっている肝臓の働きが悪くなっていることなどが、クレアチニンは筋肉量の低下などが考えられます。

Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Cl(クロール)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)はいずれも命に係わる重要ミネラルであり、これらも腎機能の指標となります。

<腎機能・電解質に関する検査項目>

UA(尿酸)、UN(BUN)(尿素窒素)、CRE(クレアチニン)、eGFR(推算GFR)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Cl(クロール)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)

※1 インスリン抵抗性とは
血糖値のコントロールに必要なインスリンはあっても、それが十分に働けない状態を指します。

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