The Orthomolecular Times

2024.12.16 分子栄養学と免疫の栄養素「自然免疫:好中球の働きとビタミンC」

子供(成長期)

子供の栄養「微量ミネラルは縁の下の力持ち!」

あなたのお子さんはミネラルが足りてますか? -もしかしたら「新型 (現代型) 栄養失調」かもしれません-

表1 お子さんにこのような症状・ 様子 食生活が見られたら要注意です

日本人のライフスタイルは、 高度経済成長期を境に大きく変化してきました。 核家族が主体となり、 共働きが増え、日本人はとても忙しい国民となってきました。 また、様々な技術が発展し、生活が便利になるにつれ、日本人の食卓も劇的に変化を遂げています。 24時間開いているコンビニやレストラン、 栄養価が著しく低下したファストフードなどが人々の生活に浸透しています。
本来、「食物」は身体を作り、家族で美味しく、楽しく「食事」をすることで豊かな心が育まれます。 しかし、栄養が不足した食事が続くと、身体の様々なところで不調が出てきてしまいます(図1)。 近年、 カロリー摂取は足りているのに、タンパク質やビタミン・ミネラルが不足して引き起こされる「新型(現代型)栄養失調」が成長期の子供で増加しています。 中でも表1に当てはまるものがある場合は、 ミネラルが不足している可能性があるので要注意です。

図1 成長期の子供にもたらす食事の影響

微量ミネラルって何者?

身体が健康な状態でいるためには、タンパク質、脂質、糖質、食物繊維、ビタミン、ミネラル、どれも欠かすことができません。 中でもミネラルは、 身体の構成成分になったり、体内の代謝の働きを活性化させるために必要不可欠な栄養素です。 必要量は少量あるいは微量ですが、体内で合成できず、不足すると身体のいたるところに異常をきたします。
微量ミネラルについてはまだ解明されていないことが多々ありますが、 中でも亜鉛(Zn)、 銅(Cu)、マンガン(Mn)、 ヨウ素(I)、セレン(Se)、 クロム(Cr) モリブデン (Mo) は成長期の子供に必要不可欠であることは間違いありません。 これらが不足すると、身体の発達や脳の発育に影響したり、体内の代謝がスムーズに行われなかったり、 骨や歯がもろくなったりしてしまいます。

微量ミネラルは食事摂取基準で足りてるの?

厚生労働省は、国民の健康保持・増進を図る上で望ましいエネルギー及び各種栄養素の摂取基準を発表しています。ビタミンの食事摂取基準は、体内に存在する量が足りているという考えから計算されたり、欠乏症を防ぐためのギリギリの必要量が計算されていますので、本来の必要量はもっと多いです。
下記に一般的な食事の例を挙げました。 実際、 食事摂取基準(2020年版)を基に、上記の微量ミネラルの摂取基準と献立1と2に含まれる微量ミネラルの充足率を、一例として10~11歳を参考に計算したところ、表2の結果となりました。 現在、 成長期の子供のクロムとモリブデンの食事摂取基準は定められておりませんが、 成長期の子供にとって不可欠であることは間違いありません。
栄養面を配慮していても、微量ミネラルは食事摂取基準を満たすことが難しいため、全身の成長が著しい成長期の子供たちにとって、これらの微量ミネラルを十分に摂ることはさらに困難です。

表2 微量ミネラルの摂取基準(10~11歳を一例として)
食品成分表を見ると、小麦粉(特に強力粉)にはセレンが多く含まれていますが、 実際には、その小麦が育った土壌の状態によってセレンの含有量が大幅に影響を受けるようです。 セレン含有量が乏しい土壌で育った小麦は、小麦中のセレン含有量も減少していると考えられます。
※ Steinnes, E. Soils and geomedicine. Environ Geochem Health 31, 523–535 (2009). https://doi.org/10.1007/s10653-009-9257-2

縁の下の力持ち! -微量ミネラル抜きでは、子供は成長できません!-

微量ミネラルは、 mgからg単位と体内分布は微量ですが、欠乏すると体内の種々の働きを妨げてしまいます。 身体が成長しきった大人とは異なり、成長期の子供の身体はめまぐるしく細胞が入れ替わり、絶え間なく代謝を繰り返しています。 細胞分裂や代謝がスムーズに行われるためには、微量ミネラルの存在が欠かせません。微量ミネラルは、正に「縁の下の力持ち」です(図2)。

亜鉛 (Zn)マンガン (Mn)
細胞分裂に関与し、発育に不可欠。
免疫機能や味覚形成にも必須。
様々な代謝酵素の補酵素となる。
骨・関節を丈夫にする。
エネルギー産生を行うミトコンドリアに多く分布し、活性酸素除去に関わる補酵素としても作用する。
セレン (Se)モリブデン (Mo)
「活性酸素除去と重金属の解毒に関与する酵素活性に必須。
甲状腺ホルモンの活性化に必要な酵素の補酵素としても作用する。
肝臓や腎臓にある酵素の補酵素として、解毒に関わる。
また、鉄の利用を体内で促す作用もある。
銅 (Cu)ヨウ素 (I)
脳の発達、 造血、骨形成に関与。
活性酸素除去に関わる補酵素としても作用する鉄の運搬にも不可欠。
エネルギー代謝に関与する甲状腺ホルモンの原料。
身体の発達と成長に大きく関わり、脳の成長にも不可欠。
クロム (Cr)ケイ素 (Si)
糖質と脂質の代謝を促進し、インスリン作用に関与。
血糖値のコントロールやコレステロール代謝にも必須。
結合組織の土台形成・機能維持に必須。
コラーゲン形成にも関与することから、骨、皮膚、関節に不可欠。
図2 微量ミネラルの主な働き

酵素と補酵素は、鍵と鍵穴

生命活動を司る脳・心臓・肺・消化器などの臓器の活動全ての代謝がスムーズに行われるためには、栄養素以外にも酵素の働きが必要不可欠です。 体内で生理活性をもつ酵素は3,000種類以上も存在し、 135もの代謝経路に関与するという報告があります※2
酵素の中には、酵素単独で活性化するものと、 単独では活性化せず、 補酵素というサポーターが必要なものがあり
ます。 酵素と補酵素は、「鍵と鍵穴」 のような関係にあり、 酵素一つひとつに特有なもので、 酵素に補酵素が結合して初めて体内で活性化されます(図3)。また、酵素はタンパク質が材料となりますが、 補酵素はビタミンやミネラル(亜鉛・銅・マンガン・セレン・モリブデン)が材料となります。 これらの材料が揃わないと酵素としての働きが活性化されないため、代謝がスムーズに行われるようにするにはビタミン・微量ミネラルをしっかり摂ることが大切です。

※2 出典:Schomburg I et. al., BRENDA in 2013: integrated reactions, kinetic data, enzyme function data, improved disease classification: new options and contents in BRENDA. Nucleic Acids Res. 2013 Jan;41(Database issue):D764-72. doi: 10.1093/nar/gks1049. Epub 2012 Nov 29. PMID: 23203881; PMCID: PMC3531171.

図3 酵素と補酵素の仕組み

成長期の子供は微量ミネラルが不足しやすい!

脳から足のつま先まで、 身体全体の成長が真っ只中な子供にとって、 微量ミネラルの需要は非常に高く、補給は必要不可欠です。現代っ子がなかなか避けて通れない加工食品は、精製された食品が主原料になっていることが多いです。 小麦や砂糖などは本来ビタミンやミネラルが豊富に含まれていますが、精製されることによってそれらは失われてしまいます。 さらに、発汗によってミネラルは排泄されるので、 運動後や暑い日などにはミネラルの補給がとても大切です。 ストレスもミネラルの排泄に加担することがわかっています。
ストレス社会に生きる現代っ子にとって、 ミネラル補給によるストレス対策も重要です。
また、最近ダイエットの若年化が進んでいますが、 これも微量ミネラルの不足につながります。 成長期の肥満も問題ですが、 ダイエットによって成長に必要な栄養素が不足することは、大人になってから様々な問題が生じる要因となり得ます(図4)。

図4 微量ミネラルが不足する要因

健康な大人に成長するためには子供の頃からしっかりと微量ミネラルを摂りましょう!

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