The Orthomolecular Times

2024.12.16 分子栄養学と免疫の栄養素「自然免疫:好中球の働きとビタミンC」

子供(成長期)

子供の栄養「丈夫で健康になるためにも、 脂溶性ビタミンをしっかり摂りましょう!」

あなたのお子さんは大丈夫ですか? -もしかしたら免疫が低下しているかもしれません-

あなたのお子さんや周りのお子さんは、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギーで困っていませんか?日本では、1978年からほぼ5年に1回のペースで日本体育大学体育研究所による実感調査(教育者が、日頃から子供を観察している中で気付いた子供の不調を表したもの)が行われてきました。1970年代の調査では、「むし歯」「背中ぐにゃ」「朝礼でバタン」などが目立っていましたが、2015年の調査では、小・中・高等学校のどの年代においても「アレルギー」が首位を占めています。
なぜ現代っ子にはアレルギーが目立つのでしょうか?身体には、細菌・ウイルス・ほこりなど身体にとっての異物を排除する免疫機能が備わっています。しかし、この免疫機能がしっかりしていないと、これらの異物に過剰に反応を示す「アレルギー」を引き起こしてしまいます。
アレルギー発症の要因はいくつかありますが、中でも食生活が大きく関わっていることがわかっています(図1)。

図1 アレルギー発症の要因

表1をチェックしてみましょう。チェックが多い程、該当するビタミンが不足していると考えられます。これらのビタミンは、免疫や骨などと大きく関係しているため、しっかりと摂ることが重要です。

表1(お子さんにこのような症状・様子・食生活が見られたら要注意です)

脂溶性ビタミンって何者?

身体が健康な状態にあるためには、タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル、どれも欠かすことができません。中でもビタミンは、身体の調子を整える潤滑油のような働きがあります。必要量は微量ですが、体内で合成できず、足りなくなると身体のいたるところに異常をきたします。
ビタミンには、油に溶ける脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)と、水に溶ける水溶性ビタミン(ビタミンB群・C)があります。脂溶性ビタミンは、食事で摂った油脂と一緒に小腸で吸収されます。ところが、現代っ子の食事は、簡単に摂れる菓子パンや加工食品といった炭水化物に偏りがちです。そうすると、どうしても脂溶性ビタミンの摂取が低下してしまいます。さらに、胃腸が健康でないと、栄養の吸収がしっかりとできません。

脂溶性ビタミンは食事摂取基準で足りてるの?

厚生労働省は、国民の健康保持・増進を図る上で望ましいエネルギー及び各種栄養素の摂取基準を発表しています。ビタミンの食事摂取基準は、体内に存在する量が足りているという考えから計算されたり、欠乏症を防ぐためのギリギリの必要量が計算されていますので、本来の必要量はもっと多いです。
下記に一般的な食事の例を挙げました。実際食事摂取基準(2020年版)を基に、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)の摂取基準と献立1と2に含まれる脂溶性ビタミンの充足率を一例として10~11歳を参考に計算したところ、献立1のビタミンEのみが摂取基準を満たしているという結果でした(表2)。
栄養面を配慮していても脂溶性ビタミンは食事摂取基準を満たすことが難しいため、個人差が著しい成長期の子供たちにとって脂溶性ビタミンを十分に摂ることはさらに困難です。

表2 脂溶性ビタミンの摂取基準状況(10~11歳を一例として)
インスタント食品やスナック菓子には、酸化防止剤として合成したビタミンEやトランス脂肪酸が多く含まれます。特にトランス脂肪酸は活性酸素の発生による皮膚トラブルなどの原因となります。脂溶性ビタミンは、オリーブオイルやDHA・EPAといった“良質”な油と一緒に摂ることが重要です。

ビタミンA -ビタミンAをしっかり摂って、細胞とバリア機能を強化しよう!-

ビタミンAは、一般的に動物性食品に含まれるレチノールのことを指します。また、野菜や果物に多く含まれるβ-カロチンなどのカロテノイド(色素成分)は、体内でビタミンAと似た働きをするため、プロビタミンAと呼ばれます。ビタミンAは、身体を細菌やウイルスなどの異物から守るための免疫の基となるIgA抗体の材料になったり、皮膚や粘膜を健康に保ったり、視力を正常に保つ働きがあります。体内に吸収されたビタミンAは、タンパク質に結合して移動するため、しっかりとタンパク質を摂ることが重要です。 表1からもわかる通り、ビタミンAが不足すると、皮膚や粘膜が弱ることでバリア機能が低下し、風邪やインフルエンザに罹りやすくなったり、アレルギー症状(アトピー性皮膚炎、花粉症など)を起こしやすくなってしまいます。

図2 ビタミンAが足りている状態と不足している状態
~ビタミンAにまつわる都市伝説?!~
脂溶性ビタミンであるビタミンAを過剰に摂ると、体内に蓄積し、過剰症を起こすと言われることがあります。しかし、ビタミンAは、生命維持に最も重要である細胞の増殖・分化に必要不可欠な栄養素であるため、一般的に知られている以上に身体が必要としています。ビタミンAは、肝臓にあるステレイトセルというビタミンA貯蔵細胞に貯蔵されていて、体内の必要な箇所に常に供給できるようになっています。通常、レバー・ウナギ・ニンジンなど、食品由来のビタミンAを豊富に含む食品を食べても健康な人が過剰症を起こすことは非常に稀です。

ビタミンE -子供にも必要な“アンチエイジング”-

若返りビタミンや妊娠ビタミンと呼ばれることが多いビタミンEですが、実は成長期の子供にとってとても大切なビタミンです。ビタミンEはナッツや野菜に多く含まれますが、野菜嫌いや偏食の子供では特に不足しやすい栄養素です。ビタミンEには構造の違いによって異なる形(α-、β-、γ-、δ-トコフェロール)が存在しますが(図3)、それぞれを同時(ミックストコフェロール)に摂ることが大切です。
近年、加工食品(インスタント食品やスナック菓子など)の摂取の増加と共に、それに使われているトランス脂肪酸などや添加物の摂取も急増しています。これによって体内の活性酸素の発生が増加することがわかっています。
さらに、急な成長や運動(部活動や習い事など)に伴う体温の上昇と相関して活性酸素の発生も増加します。細胞膜などの脂質が特に活性酸素の攻撃にあいやすく、ビタミンEはその酸化を防ぐ役割があります。また、ビタミンEはビタミンCと一緒に摂ることで、さらなる抗酸化作用が期待できます(図4)。
抗酸化作用の他にも、めまぐるしい細胞増殖・分化を繰り返している細胞の安定化を図るためにもビタミンEはとても重要な役割を担います。そして、表1に記載されている肩こり・頭痛・冷え症・低体温といった症状には、ビタミンEによる血流改善作用が重要であると考えられます。

図3(トコフェロールの種類)
図4(ビタミンEとビタミンCの相乗効果)

ビタミンD -丈夫な骨のためには適度な日光浴もしましょう-

近年、食糧事情の悪い時代に流行っていた、くる病の発症が増加傾向にあります。くる病は、O脚・X脚、背中の歪みなどが特徴ですが(図5)、原因として栄養不足、過度な紫外線予防、遺伝などがあります。
栄養不足としては、カルシウムやビタミンDの摂取不足が挙げられます。また本来、紫外線を浴びることで、皮膚に存在するビタミンD前駆体が活性型ビタミンDに変換されるため(図6)、ビタミンD不足になることは少ないです。しかし近年くる病の発症が増加しているのは、皮膚癌を心配して日光浴を避けたり、過剰に日焼け止めを塗布することで、皮膚でのビタミンD合成が阻害されていることが原因と考えられます。
さらに、ビタミンDには骨を丈夫にする働きがあるため、ビタミンDが不足すると骨がもろくなり、身長が伸び悩んでしまいます。丈夫な成長期の身体を作り上げるためには、タンパク質・カルシウム・ビタミンDをしっかり摂ることが重要です。
その他、ビタミンDは体内のカルシウム濃度の調節や、免疫活性に関係していることがわかっています。興味深いことに、日照時間の少ない北欧などの地域では、インフルエンザ※2や免疫異常※3が原因で発症する病気などが多いことが報告されています。

※2. JJ Cannell et al., On the epidemiology of influenza. Virology of Journal. 2008,5:29.
※3. MF. Holick. Biological effects of sunlight, ultraviolet radiation, visible light, infrared radiation and vitamin D for health. Anticancer Research.2016.36:1345-1356

図5 小児のくる病の特徴
図6 ビタミンDの活性メカニズム

ビタミンK -丈夫な骨のためには腸内環境も大切です-

ビタミンKは、元々出血を止める因子として発見されたビタミンです。現在日本では、生後間もなく、ビタミンKが入ったシロップを新生児に飲ませることが厚生労働省によって推奨されています。これは、新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症を予防するためです。本来、腸内細菌によってビタミンKは生合成されますが、新生児の腸内細菌叢は確立しておらず、母乳にビタミンKがあまり含まれないため、シロップでの補給が必要です。
なお、骨は、細胞の形成と破壊を繰り返すことで常に代謝を繰り返していますが、成長期の子供の骨代謝は特に活発です。20~30歳で最大骨密度に達しますが、それまでに丈夫な骨を形成しておくことが将来的にも重要となります。そこで重要となる栄養素がタンパク質・カルシウム・ビタミンDに並んでビタミンKです(図7)。ビタミンKにはいくつか種類がありますが、中でもビタミンK2(食品では、納豆や発酵食品に最も多く含まれる)が身体にとって重要な働きをします。前述の通り、ビタミンKは腸内細菌によって生合成されますが、最近、抗生物質の乱用や生活習慣の乱れなどが原因で腸内環境の悪い子供が急増しているため、ビタミンK不足が心配されています。

図7 丈夫な骨に必要な栄養素

身体が丈夫で健康な大人になるためにも、 脂溶性ビタミンをしっかり摂りましょう!

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