The Orthomolecular Times

2024.12.16 分子栄養学と免疫の栄養素「自然免疫:好中球の働きとビタミンC」

子供(成長期)

子供の栄養「子供の成長にはまずタンパク質を!」

子供の成長には大きな個人差があります -子供一人ひとりの個性を大切に-

親であれば誰しも、子供が順調に成長してほしいと願うものです。その思いとは裏腹に、子供の成長の過程には、様々な心配事がつきものです。順調な子供の成長とは、どの様な成長のことを言うのでしょう?
そして何故、成長には個人差があるのでしょう?

成長期とは?
医学的には骨に骨端線が残っている時期までを成長期と言います。一般的に、思春期を迎えた後の3~4年間、
女子で小学校高学年から中学生、男子で中学生から高校生頃までのことを言います。

成長の指標

子供の成長を確認する指標として主に下記の2種が用いられます。

  • 成長曲線:身長や体重の伸びをグラフ化したもので、時間の経過と共に身体がどのように大きくなっているのかがわかります(図1)
  • ローレル指数:子供の肥満とやせの指標(表1)。成人の体格は、身長と体重を基に計算したBMI(Body Mass Index;体格指数)が用いられますが、大人と子供の身体のバランスは異なる為、BMIは子供には用いられません。
図1 成長曲線
表1 ローレル指数
上記の指標を参考にすることによって、経時的に子供の成長を把握することができます。しかし、子供の成長には大きな個人差があります。あくまでも指標は目安と考え、個人差を大切にしつつ成長を見守ってあげましょう。体調が良いか?機嫌は良いか?楽しそうにしているか?食欲はあるか?このような日常の様子は、毎日手軽にチェックできる重要なポイントで、何よりも子供の成長の目安になります。

子供の成長にはまずタンパク質を!-人はタンパク質のかたまりです-

骨・筋肉等がタンパク質でできていることはよく知られています。しかし、それ以外においても、人の身体はタンパク質なしでは成り立ちません。24時間絶え間なく細胞が壊され、作り変えられます。生命維持するために脳・心臓・肺等種々の臓器は24時間動き続けています。これらの臓器はタンパク質からできています。また、これらの臓器がうまく動くために必要なホルモンや酵素もタンパク質からできています。そして、風邪や病気と闘うために必要不可欠な免疫の材料となる抗体もタンパク質からできています。糖質や脂質は、体内で使い切れなかった場合、脂肪として身体に蓄えられます。しかし、タンパク質は身体に蓄えることができないので、毎日摂る必要があります。

図2 身体は全てタンパク質
成長期の子供は、タンパク質を必要とする臓器・組織・ホルモン等全て(図2)が成長している段階です。だからこそ、毎日のタンパク質の摂取が何よりも大切なのです。

タンパク質はどれくらい摂れていますか?-食事からタンパク質はなかなか摂れません-

下記に一般的な食事の例を挙げました。朝食と夕食は家庭で、昼食は学校の給食で食べるとします。3食しっかり食べた場合、約62gのタンパク質が摂れます(献立1)。例えば、運動部に所属する成長期真っ盛りの男子中学生(15歳)にとって、下記の様な食事は十分と言えるでしょうか?

表2 1日のタンパク質摂取量

成長期の子供にとって、1食1食で質の良いタンパク質を摂ることがとても大切です!


タンパク質はどれくらい必要?-体格や活動等によって大きく異なります-

表3は、厚生労働省が発表しているタンパク質の食事摂取基準(2020年版)です。これは、日本人の平均的な体格を基に必要量が計算されています。しかし、成長期の子供は、同じ年齢でも体格が全然異なるため、あくまでも目安として参考にされるのがお勧めです。

表3 タンパク質の食事摂取基準

タンパク質の必要量が増加する状態

タンパク質は、生命維持の為に必要であることはもちろんのこと、下記のような様々な状態で必要量が増します。

特に、成長期の子供は、運動部に所属していたり、受験のストレスがあったり、集団生活で風邪を引きやすかったりと、タンパク質の必要量が増加する状況に置かれています。


現代っ子は足長?!-実はそうではありません-

最近の子供は、一昔に比べると足が真っ直ぐで長い印象がありませんか?
これには、欧米食への変化や正座から椅子に座る、和式トイレを使わなくなるといった生活様式の変化が影響していると考えられます。確かに、祖父母世代と比べると身長の伸び率が高く、足は長くなっているようですが、文部科学省の学校保健統計調査によると、中学2年生以上の子供の胴の長さが、親世代と比較すると長くなっている、言い換えると足が短くなっていることがわかりました。これには栄養と深い関係があるのです。


“寝る子は育つ”は本当?-成長ホルモンでしっかり骨を伸ばそう!-

身長は、身体の骨組みを形成する骨が成長することで伸びます。骨は、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモンによって成長します。特に成長ホルモンはゴールデンタイムと言われる午後10時~午前2時頃の睡眠時に最も分泌される為、成長期の子供は、その時間にしっかりと睡眠を取ることがとても大切です。また、骨は、コラーゲン(タンパク質が材料)とカルシウムが材料となり新しく形成されるため、タンパク質とカルシウムの摂取が非常に重要です。
子供の身長は、まず足から伸び、その次に胴体が伸びてきます。したがって、小学生には足長の子供が多く見られます。しかし、思春期になり、最も身長が伸びる時期にしっかりと栄養・睡眠・運動が揃わないと、足が縦に伸びず、胴長体型になってしまいます。

※ 宮崎総一郎ほか.耳鼻咽喉科としての認知症への対応 睡眠からアプローチする認知症予防.日耳鼻.2019.122:1475-1480.

図3 成長ホルモンの分泌時間と分泌量

タンパク質をしっかり摂って、丈夫な身体をつくろう!-風邪にもアレルギーにも負けるな!-

身体を覆う皮膚、口と鼻の粘膜・胃腸の粘膜、これらは身体にとっての異物が、体内に入り込まないようにしてくれるバリアの役割をしています。風邪やインフルエンザの原因となる細菌やウイルスは、皮膚と粘膜がしっかりしていれば、体内への侵入を防げます。しかし、皮膚・粘膜の材料となるタンパク質が不足していると、皮膚・粘膜が弱くなり、バリア機能も低下します。本来、タンパク質は、胃液と消化酵素(これもタンパク質が材料)の働きによってアミノ酸に分解されてから体内に吸収されます。胃腸が健康で粘膜もしっかりしていれば、口から摂った食物が消化・吸収され、体内で有効的に利用されます。しかし、胃腸の状態が悪いと、タンパク質のまま腸に運ばれてしまいます。この状態では、身体にとって非常に負担が大きく、消化不良、ひどい場合はアレルギーの原因になってしまいます。


脳にも栄養補給を!

身体の活動や思考を司る脳にもタンパク質はとても大切です。脳細胞・神経伝達物質・ホルモンの材料であるタンパク質が不足すると、集中力や学力が低下したり、ひどい場合は、うつやひきこもりといった精神的な影響まで及ぼします。

たくさん噛んで、健康になろう!
現代食は昔と比べて、噛む回数がかなり減ってきています。その結果、顎が未発達であったり、肥満になったり、様々な弊害をもたらしていま
す。しっかり噛むことは、脳・顎・味覚の発達、また胃酸の分泌促進、満腹中枢への刺激等を促すのに、とても重要です。

成長期には 栄養 睡眠 運動 を!
3つのバランスが子供の将来を左右します

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