The Orthomolecular Times

2024.12.16 分子栄養学と免疫の栄養素「自然免疫:好中球の働きとビタミンC」

身体の仕組み

免疫を司る白血球「白血球の仲間たちの基礎」

私たちの身体を守ってくれる免疫(※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」)。ヒトの免疫を司るのは、白血球と呼ばれる細胞です。

分子栄養学(※分子栄養学とは① )は、1つひとつの細胞に最適な量(至適量)(※ビタミン(総論) )の栄養素の量とバランスを整えることで細胞にしっかり働いてもらい、その結果として全体としての生体機能が向上し、自然治癒力が高まり、病態改善が得られることを目指す理論です。毎日を健康に過ごすために免疫は欠かせない存在です。今回は、免疫の主体である細胞、白血球の基本的な分類や働きについて一緒に学んでいきましょう。

白血球

白血球は、免疫の主体となる細胞です。血液1μL(1mm3)あたり3,500~9,000個くらい存在しています。白血球にはいろいろな種類がいて、さまざまな細胞が役割分担をして自分を守ること(生体防御)に向かってお互いに協力しながら働いています。

白血球の分類

白血球は、特徴的な核※1の形によって、大きく顆粒球、リンパ球、単球の3種類に分けられます。顆粒球は、顆粒(殺菌作用のある物質をたくさん含んでいる。リソソーム※2のこと。)をもっている白血球の総称です。顆粒の染色性※3の違いによって、顆粒球はさらに好中球、好酸球、好塩基球の3種類に分類されています。血液検査では、この「好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球」が白血球分画として測定されます。通常、いちばん多いのが好中球で、次いでリンパ球が多く、そのほかは少数です。リンパ球の仲間には、NK細胞、B細胞、ヘルパーT細胞、制御性T細胞、キラーT細胞などが存在します。ヘルパーT細胞はさらに、1型ヘルパーT細胞、2型ヘルパーT細胞、17型ヘルパーT細胞などに分類されます。

白血球はどこで生まれる?

白血球は、骨髄で生まれます。骨髄とは、骨の内側、中心部にある柔らかい部分のことです。骨髄の中には、造血幹細胞というおおもとになる細胞がいて、それが盛んに細胞分裂を繰り返して常に新しい血液細胞(赤血球、白血球、血小板)を作っています。この赤血球、白血球、血小板のうち、白血球だけが免疫細胞として働きます。例えば、細菌感染したところの微生物を殺すために多数の好中球(白血球の仲間)が必要になったら、血液中の好中球は素早く感染部位に移動して闘います。それとともに、その好中球の消費を補うために、骨髄は好中球の産生を増やします。

自然免疫と獲得免疫:生体内の免疫は大きく分けて2段階

免疫の主体は白血球です。その免疫は機能の面からみた時に、大きく自然免疫と獲得免疫という2つのグループに分けられます。病原体に身体の第一のバリアである粘膜や皮ふを突破されてしまった後(※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」)、第二のバリア(自然免疫)と第三のバリア(獲得免疫)が連携して二重のバリアで身体を守ってくれます。この自然免疫と獲得免疫が、白血球が主体となる仕組みです。その基本的な流れは以下のようになります。

まず最初に身体を守ってくれるのが、生まれつき身体に備わっている第二のバリア、自然免疫です。病原体をいち早く発見して、すぐに敵をばくばく食べたり攻撃してくれます。それと同時に、食べた病原体の情報を、第三のバリアである獲得免疫に「こんな感じの敵が入ってきましたよ」とお知らせします。情報を受け取った獲得免疫は、それぞれの強いピンポイントの力で特定の病原体を攻撃します。また、次に侵入された時に備えてその病原体を記憶して、次に同じ敵が入ってきたときに素早く攻撃できるように待機します。一度かかった病気にかかりにくいのは、獲得免疫のおかげです。私たちがさまざまな病原体と触れる過程で獲得していく獲得免疫は、後天的に備わった免疫の仕組みということになります。

以下に、自然免疫、獲得免疫、それぞれの白血球の仲間とその働きについて、基礎的な名前と役割をもう少し詳しくみてみます。いろんな細胞たちがお互いに協力して自分を守るために働いていてくれることがわかります。

自然免疫の仲間と主な働き

自然免疫は、身体中をパトロールして病原体の侵入を素早く見つけて攻撃するという役割をしています。細菌やウイルスなどの病原体が侵入してくると、まず自然免疫を担当する白血球がそれに気づき、すぐに攻撃を始めます。自然免疫を担当する細胞は、病原体を食べて飲み込むことで退治したりして、免疫細胞自身が病原体と闘います。これを担う主な細胞は、好中球、マクロファージ、樹状細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞などが挙げられます。自然免疫の主な細胞とその主な働きは以下のようになります。

●好中球

病原体、特に細菌を好んで食べて退治します。この病原体を食べて退治することを食作用といい、食作用をもつ細胞のことを貪食(どんしょく)細胞(食細胞)といいます。好中球はもともと寿命の短い細胞で、病原体を食べたときには、自分の中にもっている顆粒を武器にその病原体を退治し、それが終わると自分も一緒に死んでしまいます。

●マクロファージ

異物と認識したものは何でも食べて退治する貪食細胞です。役目を終えて死んでしまった好中球も食べて処理します。そしてそれと同時にヘルパーT細胞に抗原提示も行います。

●樹状細胞

マクロファージの仲間で、たくさんの突起(樹状突起)をもつことが名前の由来となっています。貪食もしますが、樹状細胞の主な役割は、「どんな病原体が侵入してきたか」という情報をT細胞に伝えることです。これを抗原提示といいます。この抗原提示により、獲得免疫が発動します。

●NK細胞

病原体に感染された細胞やがん細胞を強い攻撃力で破壊することで病気の拡がりを抑え、活躍します。

獲得免疫の仲間と主な働き

獲得免疫を担う免疫細胞は、主にリンパ球です。T細胞、B細胞などが働いています。獲得免疫の効果が現れるまでには数日間以上かかりますが、いったん活性化されるとそれぞれの病原体に特異的※4なT細胞、B細胞が爆発的に増え、ピンポイントの強い力で攻撃するため、その効果は絶大です。T細胞の仲間には、それぞれ働きが異なるヘルパーT細胞、制御性T細胞、キラーT細胞などがいます。獲得免疫の主な細胞と働きは以下のようになります。

●T細胞

樹状細胞(自然免疫)から敵の情報を受け取ったT細胞(ナイーブCD4+ T細胞※5)は、エフェクターCD4T細胞へと分化※6します。エフェクターCD4T細胞の仲間には1型ヘルパーT細胞、2型ヘルパーT細胞、制御性T細胞、17型ヘルパーT細胞(Th17細胞)などがあり、それぞれに特有の免疫活動を行います。また、同じく樹状細胞から敵の情報を受け取ったT細胞(ナイーブCD8+ T細胞※5)はエフェクターCD8T細胞(キラーT細胞(Tc細胞))となります。獲得免疫として働くのは、活性化されて各エフェクターT細胞に分化してからです。

●1型ヘルパーT細胞(Th1細胞)

自然免疫(マクロファージ)の働きを強化して、病原体の貪食をさらに促進させます。また、キラーT細胞をパワーアップさせて、攻撃を強めます。

●B細胞と形質細胞

抗原を貪食したB細胞(ナイーブB細胞※5)はエフェクターB細胞となり、エフェクターB細胞は2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)の助けを借りて形質細胞となります。この形質細胞が抗体を専門で作る細胞です。1つの形質細胞は1つの特定の病原体に対する抗体※7だけを作ります。その抗体が病原体にくっつくことで、病原体の毒性を失わせたり、味付けの役割をして自然免疫(好中球やマクロファージ)が病原体を食べやすくしたりします。

●制御性T細胞(Treg細胞)

免疫細胞が病原体を攻撃するとき、活性酸素を発生して敵をやっつけます。そのときの活性酸素は、私たちの身体の正常な組織にもダメージを負わせる危険性をはらんでいます(※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」)。そこで、病原体が排除されたら速やかに攻撃を止めて修復に向かわせるため、免疫が過剰に働かないようにコントロールしているのがTreg細胞です。

●キラーT細胞(細胞障害性T細胞、Tc細胞)

キラーT細胞(細胞障害性T細胞、Tc細胞)は、病原体に感染された細胞やがん細胞を死滅させます。Th1細胞は、Tc細胞をパワーアップしてくれます。

●メモリーB細胞、メモリーTc細胞、メモリーTh細胞

T細胞やB細胞の一部は、メモリーB細胞やメモリーTc細胞、メモリーTh細胞となって生き残り、長期間、病原体の情報を記憶します。このおかげで、将来また同じ病原体が侵入してきたときに、より素早く抗体を作って身体を守れるようになります。

まとめ

免疫は、ちょっとややこしい名前の細胞がたくさん出てきて覚えきれない、という方もいらっしゃるかもしれません。しかし、こんなに多くの細胞たちが、私たちの見えないところでコミュニケーションをとりながら今この瞬間も働いてくれている、と思うと、なんだか愛おしくなってきませんか。私たちは、毎日の呼吸だけでもウイルスや細菌、カビなどを吸っています。それでも感染症を発症しないのは、免疫のおかげです。ここに書いたほかにも、新しい知見が次々と発表がされ続けているのが自然免疫と獲得免疫の分野です。たくさんの免疫細胞がそれぞれの役割を持ち、連携して病原体と闘ってくれています。

ぜひ、日ごろからの規則正しい生活やストレスケア、笑いで免疫機能を高め、一つひとつの細胞に十分な栄養素で元気にそのネットワークにしっかりと働いてもらいましょう。そしてその上で栄養状態を高めることで(※血液検査の意義① 血液検査の意義② 血液検査の意義③ 血液検査の意義④)Post / Withコロナ時代を元気に過ごしていきましょう。

※1 核
細胞の真ん中あたりにある、核膜という膜で囲まれたもので、中には染色体(遺伝情報をもったDNAが折りたたまれているもの)が入っています。

※2 リソソーム
細胞の中にある、細胞小器官のひとつです。細胞内外のものを分解する働きをもっています。

※3 染色性
動物細胞は基本的に無色透明であるため、細胞や組織を顕微鏡で観察するためにさまざまな色素を用いて色をつけます。これを染色といいます。染める対象や使う顕微鏡の種類などによって、水溶性、脂溶性、酸性、塩基性、分子量の大きさなど、さまざまな技術を駆使して染色します。

※4 特異的
特異性とは、特定の物質にだけ特定の反応を起こす性質のことです。

※5 ナイーブCD4+ T細胞、ナイーブCD8+細胞、ナイーブB細胞
まだ抗原に出会ったことのない、活性化される前のT細胞をナイーブT細胞といいます。ナイーブT細胞には、ヘルパーT細胞になる前のナイーブCD4+ T細胞と、キラーT細胞になる前のナイーブCD8+細胞があります。また、同じくまだ抗原に出会っていない活性化される前のB細胞を、ナイーブB細胞といいます。

※6 分化(ぶんか)
生物学では、細胞の機能や形態などが特殊化して発達していくことを分化といいます。

※7 抗体
形質細胞が作るタンパク質で、免疫グロブリン(Ig、Immunoglobulin)とも呼ばれます。抗体には、IgM、IgG、IgA、IgD、IgEの5種類(クラス)があります。

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