5大栄養素(概論)

栄養素とは、食物の中に含まれているさまざまな物質のうち、
・生命活動を営むために人間の脳と身体に必要な成分
のことです。食物の中で栄養素として働ける成分を、通常、
・タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラル
の5つに分けて分類し、これらを5大栄養素と呼んでいます。

5大栄養素の大きな役割は以下のとおりです。どのように栄養素が関わっているのか、下記1~3について順番に見ていきましょう。
- 筋肉や骨、歯、血液などの身体を作る
- エネルギー(力や熱)になる
- 身体の調子を整える(生体内の代謝を調節する)
1.筋肉や骨、歯、血液などの身体をつくる
人の身体は筋肉や骨、歯、血液などで構成されています。そしてこれらは栄養素によって構成されています。
例えば、私たちのいちばん小さな単位である細胞の細胞膜は
・「脂質」や「タンパク質」
で構成されています。筋肉や髪の毛や爪、皮膚の主成分はタンパク質です。
骨や歯は、コラーゲンを中心としたタンパク質でできており、その硬さを維持するのにカルシウム、マグネシウム、リンなどのミネラルが活躍しています。
また血液は、
・血清タンパク質
・血球成分などの細胞膜を作る脂質・タンパク質
・酸素を運ぶヘモグロビンを構成する鉄(ミネラル)
などでできています。
筋肉や骨、歯など身体の土台が弱ければ、QOL(生活の質)が下がってしまうことも十分に考えられます。健康な身体を作るために毎日良質な栄養素を摂るということは、人生を楽しく生きるための礎を作るということそのものです。

2.エネルギー(力や熱)になる
自動車を動かすのに電気などのエネルギーが必要なように、人が生きるためにもエネルギーが必要です。そのエネルギー (力や熱) の源となる栄養素(タンパク質、糖質、脂質)を
・エネルギー産生栄養素(3大栄養素。以下、3大栄養素と表記)
といいます。この3大栄養素を分解して、ATPという電池のような分子にエネルギーを蓄えます。このときサポート役として大活躍するのが、ビタミン・ミネラルです。
タンパク質、脂質、糖質、ビタミン、ミネラルの5大栄養素のすべてがそろってこそ、エネルギーをしっかりと作れるようになります。生体内でエネルギーをしっかりと得られることで、エネルギーを使った代謝が可能となり、生体をつくる分子は日々新しく入れ替わることが可能になります。
3大栄養素(タンパク質、糖質、脂質)それぞれのエネルギー源としての役割と、そのほかの主な働きは以下のようになります。
●タンパク質:1gあたり4kcalのエネルギー源となる。あらゆる細胞の材料となる。
●糖質:1gあたり4kcalのエネルギー源となる。脳を含む全身のエネルギー源となる。
●脂質:1gあたり9kcalのエネルギー源となる。細胞膜やホルモンの構成成分となる。
楽しい、嬉しいなどの気持ちも、エネルギーが十分にあってこそ感じることができるものです。
私たちの身体は、3大栄養素が足りなければ、自分の筋肉を分解してでもエネルギーを作り、生きようとします。そのくらい、エネルギー産生のための栄養素を適量摂るということは、身体を支えるために大事なことです。
しかし、流行りのダイエットなどの影響でタンパク質などをやみくもに大量摂取した場合、人によっては消化不良を起こしたり、身体にとって逆に悪影響になる場合もあります。
そういったことを避けるためにも、今の自分の状態をしっかりと調べてから栄養補給をすることをお勧めします。身体の中でエネルギーが満ちるということは、日々の活力源となり、心も身体も健康で楽しい人生を創っていくことにダイナミックにつながります。

3.身体の調子を整える(生体内の代謝を調節する)
3大栄養素からエネルギーを産生したり、新しい細胞をつくったり、全身で行われている代謝のほとんどに
・酵素
が活躍します。
そして、そのほとんどの酵素が働くのに、5大栄養素のうち、
・ビタミン・ミネラル
が必要です。一部例外もありますが、酵素そのものはタンパク質でできていて、そこにビタミンやミネラルがくっつくことで代謝を進めることができます。
ビタミン・ミネラルはエネルギー源にはなりませんが、3大栄養素の代謝を促す、健康維持に欠かせない栄養素です。
代謝がスムーズに進むことは、身体の調子を整え、健やかな生活につながります。例えば、美肌や歯や骨で有名なコラーゲン。しっかりした3重らせんのコラーゲンを作るためにはビタミンC・鉄といったビタミン・ミネラルのサポートが必須です。
生きること自体が代謝であるとすると、3大栄養素とあわせてビタミン・ミネラルを最適な量(至適量)摂ることは、健やかな代謝、つまり健やかに生きることそのものであるということが言えると考えます。(※分子栄養学とは⑤ )
ビタミン・ミネラルは、脳や筋肉などの神経細胞の働きにも関わり、身体の調子を整えるのに大活躍します。

以上、大まかな5大栄養素についてのお話です。いかがでしたか?こう考えると、普段食べているものには、何の栄養素がどのくらい入っていて、それが自分にとって足りているのか足りていないのか、知りたくなってきませんか。
5大栄養素には、身体を動かすためのエネルギーになるものだけでなく、成長や発達に関わるもの、生命を保つのに必要なもの、不足すると体調の変化に表れてしまうものなどがあります。
世の中には、さまざまな健康不安で悩まれている方がおられます。そういった方々の中には、もしかしたら5大栄養素の何らかの不足、栄養素のバランスが取れていない可能性があるかもしれません。
そういった場合に、分子栄養学では自分の身体を知るための適切な検査を通して、医師と一緒に自分に合った栄養素を見つけ出し、健康維持を目指すために科学的にアプローチします。(※血液検査の意義①)
5大栄養素(タンパク質・脂質・糖質・ビタミン・ミネラル)は、毎日を健やかに過ごしていくために必要不可欠な栄養素です。
適切な栄養素の摂取でいつまでも健康を維持し、更なるQOL(生活の質)向上を図っていきましょう。
